平行世界28日目その2にゃ~
「江戸城天守閣にゃの!? にゃっほ~~~!!」
皇居の地下に現れた江戸城天守閣を見たわしは、ゴンドラから飛び下りて走り出した。そりゃ、この世界の都市伝説で、皇居の地下には何か秘密があると聞いていた謎が解決したのだから、はしゃいでも仕方がない。
「にゃ? にゃんか小さくにゃい??」
しかし、近付いてから気付いたが、わしたちの世界にある江戸城天守閣よりおよそ半分ぐらいしかないのでは、わしの足はストップ。なのでいろいろな角度から見ていたら、玉藻と天皇陛下がやって来た。
「急にどうしたんじゃ。そちが飛び下りるから、籠がめちゃくちゃ揺れたんじゃぞ」
「あ……ちょっと興奮しちゃったにゃ。すまなかったにゃ。それよりこれはにゃに? この城は石造りにゃ~」
城といえば、日本では木造建築なので、玉藻の苦情は軽く謝って天皇陛下に話を振った。
「明治維新の後、百名の石工職人が作り上げたと聞いております」
天皇陛下
その当時の時代背景から、いずれ地上は火の海になることを見越して地面を掘り、天皇陛下がお籠もりになるには味気ないので、気を遣って石を削ってお城に加工したそうだ。
何故、江戸城天守閣と呼んでいるかは、なんとなく。元々江戸城の敷地に皇居があるので、雰囲気で呼んでいたら定着したとのこと。この施設を知るのは天皇家歴代でも二桁に届くぐらいなので、呼び名にこだわりはないみたいだ。
ちなみにこの城を作った石工職人は、全て秘密は墓まで持って行ったので、現在この地下施設を知るのは天皇陛下と皇太子殿下しかいないそうだ。
「へ~。明治時代から、空中戦の時代が来ると予知してたんにゃ~」
「予知というより恐怖でしょうね。海から現れた黒船が頭にこびりついていたので、次は空からだと夢に見たと、明治天皇は怯えていたそうです。本人はまさか正夢になるとは思っていなかったでしょう」
「にゃはは。これぞ
面白い話を聞けたわしは笑ってしまったが、もうひとつの都市伝説も聞いておきたい。
「ところで徳川埋蔵金ってのは実在するにゃ?」
「埋蔵金ですか……見てもらったほうが早いですね」
「あるにゃ!? にゃっほ~~~!!」
天皇陛下は一瞬鋭い目になったが、わしはまた「ひゃっほ~!」と浮かれているから気付けない。そうして江戸城天守閣の入口から中に入ると、そこには大きな
その中のひとつを、天皇陛下は開けてわしたちに見せてくれた。
「小判にゃ!? これ全部、小判が入っているにゃ!?」
「ええ。総額は確か……いくらでしたかな?」
「400万両じゃなかったかにゃ? やっぱり小栗
わしが矢継ぎ早に質問しまくると、天皇陛下はニヤリと笑った。
「どうもシラタマ王は他の人と違って落ち着いていると思っていましたが、やはりそういうことだったのですね」
「にゃ? にゃんのこと??」
「シラタマ王は、この世界からあちらの世界に異世界転生したのでしょう。ね? 玉藻様??」
天皇陛下はわしの秘密を言い当てているが、わしのとぼけた顔ではわかりづらいのか玉藻に振ると「あちゃ~」って顔をしていた。
「にゃにその顔!? そんにゃ顔してるからバレるんにゃよ!!」
「はぁ~……そちはどこまで阿呆なんじゃ。いまの発言で、さらに確信に変わると気付け」
「にゃ……てのは冗談でんがにゃ~」
本心では言い当てられてめちゃくちゃ焦っていたので、トドメを自分で刺しちゃった。もちろん取り繕ってもいまさら遅く、喋りすぎたから天皇陛下にバレたと玉藻は教えてくれた。だから、「あちゃ~」って顔をしてたらしい。
「いや、その……ネットで調べたからにゃ……」
「これだけ情報があふれているのに、都市伝説なんて詳しく調べますかね?」
「ですよにゃ~」
それでも諦めずに言い訳してみたが、一瞬で看破されるわしであったとさ。
「お互い秘密の共有ってことで、ここはにゃにとぞお願いしにゃす!」
バレてしまっちゃあ仕方がねぇ。わしはジャンピング土下座で頼み込むしかない。
「元々言うつもりはありませんでしたので、頭をお上げください。気になっていた謎が解けただけで、私は満足ですから」
「謎……にゃ??」
「タブレットを見ても1人だけ驚かないこともそうですが、靖国神社でのあの行動……テレビに映ったあの背中や横顔は、戦死者のご家族や友人に祈る人と同じように私には見えたのです。もしかしてシラタマ王は、戦争を経験しているのではありませんか?」
天皇陛下が膝を突いてわしと目線を合わせるので、わしは背筋を正して座り直す。
「……そうにゃ。わしは天皇陛下の命により、海を越えて戦ったにゃ」
「やはり……」
「正直言うと、天皇陛下のおじい様に対して恨みを持ったこともあるにゃ。わしの家族を、友を、仲間を返せとにゃ。でも、戦後の天皇家の有りようを見て許すことにしたんにゃ」
「そうでしたか……」
「ひとつだけ聞かせてくれないかにゃ? おじい様は、戦争中に散り行く若者のことをどう思いながら毎日を過ごしていたにゃ?」
「それはもう、毎日……」
天皇陛下から語られる先々代の御心を聞いたわしは、心から救われた気持ちになって大粒の涙を落とすのであった……
それからしばし戦時中の話をしていたわしたちであったが、当初の目的を思い出して天守閣の階段を上がっていた。
「ここってにゃん階ぐらいあるにゃ?」
「3階ですね」
「にゃるほど。五重塔みたいにゃ作りなんにゃ。てことは、一番上に三種の神器があるんだにゃ」
「いえ。2階です。まぁそちらにも三種の神器のレプリカは飾られておりますけどね」
「おお~。防犯対策だらけにゃ~」
2階に着くと、がらんとした部屋。机しかないなとキョロキョロしていたら、天皇陛下は一番奥まで進んで床の一部をずらそうと頑張っていたので、わしが手伝ってあげた。
そこには、みっつの木箱が収められており、近くにあったテーブルに全て乗せて御開帳となった。
「やっぱりだにゃ」
「うむ。間違いない」
三種の神器は、全て白銀。わしと玉藻は頷き合って、三種の神器をしげしげと見ている。
「間違いないとはどういうことでしょうか?」
天皇陛下だけはわしたちの行動がわからないので、調査は玉藻に任せてわしが説明してあげる。
「これって、初めて見た時からサビひとつない綺麗な白銀だったにゃろ?」
「ええ。鉄や銀だとしても、千年以上も歴史のある品がこの状態なのはおかしいとは思っていましたが……」
「その通りにゃ。これは神々が作りしまごう事無き神器にゃから、サビたりしないんにゃ」
「神々がこれを……」
「神様からどの世界にもあると聞いてるけど、使わないほうがいいにゃよ?」
「使い方もわからないのでは使えませんよ」
「にゃはは。そりゃそうだにゃ」
とりあえず玉藻から調査の結果を聞いたら、わしたちの世界の三種の神器と同じような文字が書かれているとのこと。ただし、文字数が天文学的数字なので、同一の物かまではわからない。
だがしかし、こんな小さな魔道具にこれだけの処置ができるということは、神の御業としか言いようがないので、わしと玉藻は同じ物として断定した。
「なるほど……その【魔力視】という道具を使えば、文字が浮かんで来るのですか。少し貸してもらえませんか?」
「いいんにゃけど、魔力がゼロでは使えないにゃよ?」
「物は試しです」
天皇陛下からわしたちがどうやって見ているか聞かれたので魔法と説明し、同じことのできる魔道具もあると言ったら使ってみたいとなったので貸してあげる。
「本当ですね。何も浮かびません」
「やっぱりにゃ~。ちにゃみにわしたちは、体の中にある水みたいにゃ物を操作して、魔道具や魔法を使ってるんにゃ」
「水ですか……それなら……お……おお! 見えますよ! これが神々の文字ですか!?」
「マジにゃ? 玉藻、三種の神器の研究資料を出してくれにゃ」
「あ、ああ……」
天皇陛下が見えるとか言うので、簡単なテスト。どんな文字が浮かんでいるか書かせたら、当たっていたので本当なのだろう。
なので、天皇陛下自身を【魔力視】を使ってよく見てみたら、子供並みに少ないけど魔力の反応があった。
「ということは、私も魔法が使えるようになるのですか?」
「理論的にはにゃ。訓練をすれば、数年後には火でも水でも出せるとは思うけど、ちょっとだけだろうにゃ。でも、マズイことを教えちゃったかもにゃ~」
「マズイ? あ~……世界を滅ぼせる兵器が使えるようになってしまったのですか……確かにそれは問題ですね」
「まぁ陛下は使わないと信じているけど、本当にやめておけにゃ? これは脅しじゃないからにゃ??」
わしが何度も念を押すので、天皇陛下は効果が気になり出した。
「やはり、世界を滅ぼす威力を出すのでしょうか?」
「わしも思いっきり使ってないからにゃんとも言えないけど、
「化け物染みたお二人を持ってしても使いこなせないとは……」
「もしも生き残っても、とある神様が毎日愚痴を言いに夢枕に立つからやめておけにゃ。わしたち、それでノイローゼになりかけたんにゃ~」
「神様? お化けの間違いでは??」
天皇陛下がいいツッコミをくれたので、名前は言わずにツクヨミ被害を教えてあげたけど、イニシャルに変えただけなので、誰のことを言っているかわかってしまったのだろう。
「三柱……」
「ぎゃっ!? つぅ~……だからもっと前に止められたにゃろ! ぎゃっ!?」
なので、タライがわしの頭に「ガィィィン」と直撃。文句を言ったら2個目が落ちて来たので、雪だるまみたいなタンコブができるわしであった。
「学習せんヤツじゃな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます