平行世界26と27日目にゃ~
フードコートで大量の食事をしていたら、ベティたちの顔を見てリータたちも化粧をしたいと言い出したので、ララのメイク講座が始まった。
ちなみにミニ玉藻は分身から戻ったら化粧が落ちるらしく、ノルンとなんか喋ってる。おそらくテレビクルーがそのツーショットをめっちゃ撮ってくれるし、アダルトバージョンも化粧ができるから二度美味しいので、やめられないのだろう。
「どうですか!」
「美人になったニャー?」
「シラタマちゃん。凄くない??」
「綺麗にゃ。綺麗にゃけど、もうちょっとナチュラルにできないかにゃ?」
「「「ララちゃ~ん!」」」
「まったくあなたは、いつになったら化粧のよさがわかるのよ。あの時も……」
バッチリメイクのリータ、メイバイ、さっちゃんが詰め寄って来たから好みを言ったのに、ララはグチグチ。確かに昔、ララのバッチリメイクをスルーしたことがあるけど、まだ根に持っていたのか……
皆は化粧に夢中になっているので、わしは子供のお世話。今日買ってもらったオモチャの話を聞いてあげて、ナチュラルメイクになったリータたちも褒めてから、商業施設をあとにするので……
「魔法……」
「あ、覚えてにゃす。覚えてにゃす。駐車場で見せるにゃ~」
フードコートでこき使ったテレビクルーに、適当な魔法を見せてからバスに乗り込むのでった。
本日の宿、お高いホテルに着いたけど、ララは今日も帰る素振りを見せない。最上階のスウィートルームは映えるらしい……
「明日、東京に戻るんにゃけど……」
「もちろんついて行くわよ?」
「ジュマル君の勉強を見てやれにゃ~」
ララのストーキングは継続。今日もララはわしたちの団欒を邪魔して、動画撮影に励むのであったとさ。
平行世界26日目は……
「「「「「うわ~。おっきいにゃ~」」」」」
東京に戻るべく、飛行場にやって来た。皆は大きな窓に張り付いて、飛び立つ飛行機を夢中で見ている。
ちなみに、搭乗口ではわしたちが手ぶらだったので、何度も金属探知機を潜らされた。皆は何をされていたか気付いていないから、指輪やネックレスの金属が反応する度にピンポンと鳴るから楽しそうにしていたが、わしは文句を言いまくった。
「だから~。わしがみんにゃの荷物持ってるんにゃ~。刀も鉄砲も持ってるけど、機内で出さないから通してにゃ~」
「通せるわけないでしょ!」
揉めたのは完全にわしのせいだが、外務省の七三メガネがゴニョゴニョ言ってくれたから、なんとか搭乗口はクリアしたのだ。
「それにしても、シラタマちゃんの飛行機よりずいぶん大きいのね。あんなの、どうやって飛ばしているの?」
わしが先程のやり取りをイライラしていたら、さっちゃんの質問が来たので相手してあげる。
「ジェットエンジンって言ってにゃ。めちゃくちゃ火力のある機械を積んでるから、空を飛ぶことができるんにゃ」
「言ってる意味はわからないけど……これは買ってくれるのよね?」
「無理に決まってるにゃろ~」
「これも高いの?」
「高い
さっちゃんはやっぱり飛行機を御所望なので、危険性の説明。
わしが飛行機を飛ばせられるのは、強いから。もしも一般人が操縦していたら魔法が使える鳥、たった一羽に墜落させられて搭乗員が全員死んでしまうから、あの強欲な女王でも諦めるしかなかったのだ。
「玉藻も撃ち落されたって言ってたよにゃ?」
「うむ。
「にゃ~? わしたちしか乗れないんにゃ~」
「むう……」
女王や玉藻を使っても、さっちゃんは飛行機を諦め切れない模様。その話を聞いていたテレビクルーが質問して来たので、そっちにも怖い逸話。
わしなんて、10回以上も鳥に飛行機を落とされているし、その場合の搭乗員は体が頑丈な猫パーティだから生き残れたと聞かせてあげた。テレビクルーは回数の時点でわしを化け物みたいに見て来たけど、化け物で合ってるよ?
わしがテレビクルーのインタビューを受けていたら、やっとこさ飛行機の搭乗。皆はさほど気になっていなかったが、この待ち時間が嫌いなのでわしは新幹線派だ。
そうして乗り込んだ飛行機の座席はファーストクラス。皆は席に座ったら、イスに付いたボタンを押しまくっている。
「なにコレ? ベッドになったよ!?」
当然さっちゃんも興味津々なので、セレブなのに大声を出しているから注意しに行く。
「これはお金持ち用の席にゃ。静かにしないとマナーがなってないと思われるにゃよ?」
「貸し切りなんだらいいじゃない。それよりこの飛行機も買ってよ~」
「だから手持ちがないんにゃ~」
さっちゃんはまだ諦めていなかったので、値段を調べて見せてあげたら、また目眩。それから備え付けのテレビをつけてイヤホンを耳に入れてポチポチしたら、さっちゃんの目をそっと瞑らせて席を離れるわしであった。
飛行機の移動は、わしたちの世界でもやったことがあるので、皆は外も見ずにセレブなイスで遊び、飽きたら映画鑑賞。ジュマルはイスに座った瞬間に寝てた。長距離移動する時は、いつもこうらしい。
わしはファーストクラスなんて初めて乗ったので、キャビンアテンダントを何度も呼んでシャンパンやキャビアなんかも頼んでいたから、ララに貧乏性とか言われてしまった。
ベティもわしの派閥。わしなんかよりもっと色々頼んでるんだから、ララはあっち行ってくれ。「イエーイ!」って動画も撮るな。
ファーストクラスでテレビクルーかってくらい写真や動画を撮りまくるララを無視して寝ていたら、東京の空港に到着。
この世界の滞在期間は残り少ないが、今日は早くにホテルに入って、わしはノルンにも手伝ってもらいながら外務省に集めさせていた資料に目を通す。皆はゲームやアニメだ。
「なになに~?」
「読めるけど、なにする物かサッパリわからんな」
「あ、このメーカーは、あたしは押さえて欲しいわね」
さっちゃんと玉藻とベティは興味があるので、わしが読んでいる資料を覗き込んで邪魔だ。
「みんにゃ見てわからないにゃら、邪魔するにゃ~」
この資料は、各企業が平行世界の物と交換にくれる技術のリスト。企業名と技術の数と品名、あと欲しい物しか載っていないのではノルン以外役に立ちそうにない。
「あたしは力になれるわよ?」
「調理器具ばっかり選ぶつもりにゃろ?」
「そりゃそうよ。コンピューターとか言われてもわからないもん」
「もういいにゃ。欲しい物にマーカー引いてくれにゃ」
「やったにゃ~!」
ベティはこっちの世界出身だから役に立つと言い張るので、いちおう仕事を与える。だからって、ベティが欲しい物を全て買うつもりはない。
「私は新幹線と車と飛行機の設計図が欲しいな~?」
「妾は電気に関わる物は全て欲しいぞ」
「いま見てるんにゃから黙ってろにゃ~。あと、さっちゃんのは難しいって言ってるにゃろ~」
「にゃんでにゃ~!」
「玉藻、さっちゃんを黙らせてくれにゃ」
うるさいさっちゃんは、玉藻の九尾の尻尾ロック。でも、さっちゃんはモフモフ言って嬉しそうだな。
静かになったら、わしはノルンの意見を聞きながら真剣に選び、さっちゃんも落ち着いたら玉藻と一緒に、わしが丸を付けた資料を読んで丸を付け足す。
「マジで邪魔だからやめてくんにゃい?」
「「ごめんにゃさい……」」
わしだって、怒る時は怒る。とぼけた顔をしていてわかりづらいだろうが、声質で気付いた2人は謝るのであった。
ひとまず2人がいらんことしなくなったので仕事は捗るが、お腹がすいたらみんなとモグモグ。たまにララが茶々を入れに来たが、わしが真面目なことをしているので、お茶の差し入れだけで去って行った。
さすがは元女房。わしはとぼけた顔をしているのに、纏っている空気から察してくれた。リータとメイバイは、しばらく撫でてからどっか行った。まだララの域には達していないようだ。
この日は、深夜までわしとノルンは資料に目を通し、疲れて眠るのであった。ベティは……途中で飽きてどっか行っていたけど……
平行世界27日目は、わしとノルンだけ別行動。リータたちは、ララに東京観光に連れ出してもらった。
わしとノルンがリムジンに揺られてやって来た場所は、とある大学の講堂。そこには千人を超える企業人や大学関係者が集まっていた。
「え~。まずは、わしたちの世界のために、これほどの技術を提供してくれることを感謝するにゃ。ありがとにゃ~」
壇上に登ったわしとノルンは、開始の前にペコリとお辞儀。企業人も大学関係者も拍手で迎え入れてくれた。
「それじゃあ、さっそく発表しにゃす。名前を呼ばれた会社から、壇上に来てくれにゃ」
まずは、多くの技術をくれた企業から。ハードディスクやUSBメモリを受け取りながら、欲しい平行世界の物を渡せる物は渡して行く。大きすぎる生き物なんかは、あとからわし直々に届ける予定だ。
わしから物を直接受け取った人は、ガッツポーズ。使えるかどうかわからない物を受け取ってよくそんなに喜べるなとわしは思っていたが、絶対に口には出さない。
使えるとしたら、大学関係者に渡したマチュピチュやイースター島、ナスカの地上絵、各地の先住民や絶滅した生き物等の、第三世界で不確かな遺跡の資料や生き物のDNAぐらいだろう。
そもそも渡した物と貰った技術との釣り合いが取れていないから、わしは笑いを堪えるのに必死だ。
いちおう貰った技術は、全てノートパソコンに繋いでチェック。ノルンでは難しいと思っていたが、素早く飛んで複数のパソコンを使いこなしている。
でも、エネルギーの消費が激しいのか、度々わしの魔力を奪いに来て、食事のシーンをスマホで撮られていた。わしの人差し指をベロンベロン舐めるんだもの。
技術の受け取りを続けていたら、もうお昼。今日のランチメニューは、全てわしのおごりだ。
出席者には、高級肉をふんだんに使ったお弁当と、白メガロドンの串焼きを振る舞ったので、阿鼻叫喚が凄い。「これだけでも来たかいがあった」とか泣いてる人もいる。
そうこうしていたら技術の数量の多かった会社との交換は終わったが、これだけではわしは終われない。
「みんにゃ。こんなにありがとにゃ。続きましては、ちょっと欲しい技術の会社と交渉したいにゃ。渡せる物のランクは下がるけど、よかったら交換したいにゃ~」
せっかくこれだけ集まっているのだ。提出された技術を根刮ぎ奪いたい。かといって、わしから渡せる物がたいした物はないのであまり欲しいアピールはせずにお願いしてみたら、残りの全員オッケー。
先に配ったエサが効いたのだろう。串焼きを欲する人が多いもん。先に技術を交換した人も、「どうして食べ物にしなかったんだ」とか後悔してるし……
「じゃあ、調理済みの物は残り少ないから、白メガロドンの肉を1キロ進呈するにゃ~」
「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」
というわけで、王族だけで食べていたので余りに余っている全長500メートルもあった白いサメを切り分け、氷魔法と土魔法で包んだ物を渡して、技術を全て奪い取ったわしであったとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます