平行世界9日目と10日目にゃ~


 2日間の質疑応答を乗り越えた次の日。平行世界9日目にやって来た場所は……


「「「「「ねこだ~~~!」」」」」

「「「「「リスさんだ~~~!」」」」」


 笑顔の悪魔がうごめく小学校。どういった教育をしてるのか見ようと視察に来たのだが、教室の後ろから入ったら、あっという間に学級崩壊。わしがおとりになって、その他モフモフは校長先生に図書館に逃がしてもらった。

 それからわしを含めたモフモフ組は、図書館に隔離。獣耳と尻尾を変身魔法で隠した玉藻たちで授業を視察してもらい、モフモフ組は図書館で本を読んだりダラダラしたり。

 ただし、わしたちが来ていると全校生徒にバレたようで、休憩時間になると必ず子供たちが走り回るおどろおどろしい声が聞こえていた。


 給食までゴチになる予定であったが、子供たちがまったく授業に集中できないので、四時間目が終わる前に撤退。図書館で撮った写真を校長先生のスマホに転送してあげたので、子供たちに恨まれていないことを祈る。



 今日の予定はこれで終わりではないので、途中で寄ったファミレスでバクバク食べながら皆に小学校の感想を聞いてみた。


「6年生って12歳ですよね? まったくついて行けませんでした~」

「4年生から難し過ぎニャー」


 リータとメイバイは、高学年でギブアップ。イサベレとエミリも同感らしい。


「私は理科以外はなんとかついて行けたけど、これ以上は辛いかも? 日本語が難しいし……」

わらわはまだ行けそうじゃ。理科と算数は怪しいがな」


 日本語の授業では、さっちゃんでは難しいのは当たり前だが、玉藻も厳しいとは意外だ。


「あたしは余裕よ~。オホホホホ」

「じゃあ、ベティには理科の問題を出しにゃす」

「え!? 理科は苦手なの~」


 ベティが勝ち誇って笑っていたので、売ってもらった全学年の教科書で追試。3年生の問題も答えられないのに、よくそんな顔できたな……


「ノルンちゃんは答えられるんだよ。ミトコンドリアだよ~」

「正解にゃ~」

「もっと難しい問題出すんだよ」

「じゃあ、6年生から……」


 残念なことに、小学校の時点でノルンが一人勝ち。皆は幼女に見える妖精ノルンに負けたので、めっちゃ落ち込んでいた。


「シラタマにも問題出してやるんだよ」

「わしはいいにゃ~」


 ついでにノルンはわしにも恥を掻かすので、皆からノルン先生と呼ばれるようになった……


「ノルンちゃんだよ」


 いや、先生付けは拒否されたので、いつも通り呼ばれるのであったとさ。



 寄り道でお腹いっぱいになったら、次に移動。建物に入って皆で練り歩く。


「どうかにゃ? よくないかにゃ??」

「「「「「う~ん……」」」」」


 ここは美術館。有名な抽象画の前で皆は首を捻っている。わしも本当はそっち側だ。


「さっちゃんはどうかにゃ?」

「うん。面白いと思うわ。こんな描き方を思い付くなんて天才ね。作者の意図がよくわかるわ。ここなんて……」

「館長さ~~~ん!」


 芸術なんて、わしにはサッパリわからないので、早々に館長に丸投げ。さっちゃんは楽しそうに館長と喋っている。玉藻も興味があるのかアドバイザーに質問して歩き、リータとメイバイも王妃なので頑張って聞いている。

 興味のないわしたちは一塊に動いて、適当に絵を見ては変な感想を言い合い、すぐに見学は終わったので、皆が出て来るまで庭園でおやつタイム。いちおう売ってる芸術本や絵葉書は大量購入しておいた。


 皆でダラダラして待っていたら、芸術にちょっと詳しくなったリータとメイバイがさっき習った言葉で感想を言っていたが、わしは聞いている振りだけ。次に移動する。


 今日の観光ラストは……


「ストラ~イク!」


 野球観戦だ。


「この建物ってやっぱりいいね。サッカーも雨とか気にしなくていいから、うちも欲しい! シラタマちゃん。作って~」

「野球見に来たんにゃから、サッカーの話はやめてくんにゃい?」


 サッカー協会会長のさっちゃんは、野球よりサッカーのほうが面白いらしい。その他も、ルールが多いしいちいち待ち時間があるので、あまり面白くなさそうだ。


「ほら? リータとメイバイはアメリヤ王国で見たにゃろ? そこと比べて、レベルが段違いにゃ~」

「そうですか?」

「あんまり変わらないニャー」

「2人と比べるにゃ~」


 残念ながら超人に取って、プロ野球選手も草野球選手もさほど違いがないらしい。ちゃんと見ているのもわししかいないので、他に移動することとなった。ゲームしたいとうるさいからってのもある。



 とりあえずディナーしてから、テレビクルーに急遽取ってもらった複合娯楽施設にやって来た。


「さっちゃんたちはいいけど、リータたちは軽くだからにゃ? 力を込めたらダメだからにゃ?」


 まずはボーリング。ピンが爆発する光景が容易に想像できるので、超人には不向きだから注意事項は怠らない。

 その結果、ほとんど投げ方が下からの両手投げ。かなりブサイクだが、遠くのピンを倒すのは難しいので、そこそこ楽しめたようだ。

 

「フッフ~ン♪ 私がいっちば~ん」

「「「「「もう一回!!」」」」」

「さっちゃんは挑発するにゃよ~」


 一番普通のフォームで投げられたさっちゃんが勝ち誇っているが、このテンションでやったら確実にボーリング場が崩壊するので、違う遊びに連れて行くわしであった。


「シラタマちゃん……絶対に手を離しちゃダメだよ?」

「わかってるにゃ~」

「キャッ!?」


 次は、ローラースケート。初めてのことなので、生まれたての子鹿状態や、すってんころりん続出だ。


「フフン♪ 妾が一番上手いようじゃな」

「玉藻は尻尾で支えてるだけにゃろ~」

「「「「「ズルイにゃ~」」」」」


 九本の尻尾で床を掴んでいたら、こけるわけがない。皆から尻尾を消せと言われた玉藻は、すってんころりんするのであったとさ。



 ローラースケートはなかなか好評だったけど、ちょっと滑れるようになったら次に移動。


「これにゃら歌えるかにゃ? 歌詞を見ながら歌うんにゃよ~??」


 カラオケにやって来た。ひとまず、わしが広めて猫の国で売っているレコードの曲を何曲か入れてみたら、皆は大合唱。少し歌詞が違っていたから時々バラけていたけど、楽しそうに歌っている。


「「「「「あんなこといいな~♪」」」」」

「誰にゃ! 勝手に入れたヤツにゃ~~~!!」


 あと、初めてのカラオケだと言うのに、猫娘がアニメの曲を入れていたので、わしは焦って消すのであった。


「「「「「あんあんあん♪」」」」」


 でも、アンコールで入れられたのであったとさ。



 それからも、バドミントンやスリーオンスリーを手加減して遊んだり、ビリヤードやコインゲームで遊んだりしていたら、子供たちがフラフラし始めたので、今日はここでお開き。

 バスに揺られてホテルに帰るわしたちであった。



 平行世界10日目も、学校の視察。


「「「「「きゃああぁぁ~!!」」」」」

「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」


 中学校にやって来た。小学校よりは自制があるけど、女子にはモフモフが大人気。握手だけとか言ったのにモフられたので、大事を取って子供たちとは触れ合い禁止だ。

 男子は「魔法を見せろ」とか「異世界転生どうやるの?」とか「ドラゴンと戦ったことがあるのか?」とか言って、リータたちを困らせていた。


「うちの嫁を困らすにゃ。ほれ? ドラゴンとかの写真あげるにゃ~」

「「「「「うおおぉぉ~!!」」」」」


 なので男子には、すっかり忘れていたわしが異世界転移した時のアルバムを見せる。魔王と邪神、勇者も載っているので大興奮だ。

 でも、授業に集中しないと見せてあげないと取り上げたので、やっと静かになった。魂が抜けて倒れたとも言える。



 少し時間が押してしまったが、授業が始まったらリータたちの頭から煙りが上がってる。中一の数学でギブアップみたいだ。特に子供たちがヤバイので、今日も図書館に隔離。


 コリスとオニヒメをお目付役にしたけど大丈夫かな? ゲームとタブレットも貸してあげるから、静かにするんだよ? 兄弟もゲームするのですか。そうですか。


 ちょっと難しいので、教頭先生の説明をメインに授業を見て、休憩時間になったらわしが大人気。女子はモフモフして来るし、男子は異世界アルバムを見せろと泣いて懇願するし。


「わし、魔法の詠唱とかしないにゃよ? 誰かやる人いたかにゃ??」


 あと、なんかカッコイイ魔法の詠唱をやれとか懇願されたので、その夢は叩き潰しておいた。


 4時間目まで頑張って出席したら、給食の時間。コリスたちも呼んで空き教室で食べさせてもらったけど、皆に大不評。少ないとかマズイとか、校長と教頭の前で言わないでください。


「これって、一食いくらにゃの?」

「だいたい250円前後です」

「「「「「やっす……」」」」」


 かわいそうなので助け船を出してあげたら、一同納得。子供たちやさっちゃんならばこれでお腹いっぱいになるんだから、値段をかんがみて、このクオリティは凄いという意見も出ていた。

 いちおう給食も技術として持ち帰る予定なので、ノウハウは聞いてから中学校をあとにした。


 ちなみに異世界アルバムは校長に預けたけど、独占しないと信じよう。オタクがブチギレるから、マジでやめてね?



 今日も芸術系の施設を回ったら、さっちゃんの待ってましたのスタジアムにやって来た。


「ゴーーール!」


 そう。サッカースタジアムだ。


「すっご……なにあのパス回し……シュートもめっちゃ曲がったわよ??」


 プロ選手の華麗なプレーにさっちゃんは釘付け。皆もサッカーは知っているので、野球よりは楽しく見ている。


「まぁ、子供からずっとサッカーばかりやって来た集団だからにゃ。子供のお遊びとは違うにゃ~」

「うぅぅ……うちも大人でやれたらアレぐらいできるのに~!」

「まだ大人は仕事で忙しいからにゃ~。あ、でも、ここの選手は、みんにゃお金を貰ってサッカーをやってるんにゃよ? パトロンがいれば、あるいはできるかもにゃ~」

「そっか! 貴族と領主を脅してでもお金を出させれば……」

「権力を乱用するにゃ~」


 さっちゃんが怖いことを言うので、ここのサッカー選手がどうやってお金を貰っているかの説明。かといって、広告なんてやっているのは猫の国の雑誌社ぐらいなので、サッカーのプロ化は先が長い。


「そういえば、大人は草試合とかしてにゃかった?」

「あ~……乱闘が多いから、グラウンドの貸し出しは禁止にしたの」

「にゃんで~?」

「ハンターがね。肉体強化魔法をこっそり使うの。それで怒った人が集団で襲い掛かって全然試合にならないの~」

「ありゃりゃ。そこからだにゃ~」


 やはりスポーツはわしたちの世界では難しい模様。ゴルフはお金持ちがやるからルールが厳格化されているし競技人口が少ないので成り立っているが、サッカーは競技人口が多くなるからまだまだ課題がありそうだ。


 この日はサッカーを見ながら、さっちゃんのおねだりや愚痴に付き合わされるわしであった。

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