ダンジョンでの隠し要素は基本やばい
「あー、痛ってぇ。あの人手加減ってもん知らないのか?」
師匠に弟子入りしてから数週間、ほぼ毎日のようにボコボコにされて痣になっている部分を擦りながら薄暗い洞窟の中を歩いていた。
本日、師匠は用事でいないため、自主練を言い渡されたので、ダンジョンに潜っている。
─暗がりの迷宮─。この前行ったダンジョンと同じく、初心者がよく使うダンジョンだ。しかし、前の所とは違い
「キシャァ!!!」
刃はあっさりと魔物の腕を切り飛ばし、怯んでいる間に魔物の首を切り落とす。
「ふぅ…」
ダンジョンに潜ってから約2時間、既に数十体の魔物を切り倒した俺は、軽く息を整える。
「だいぶ魔物も狩ったし、一旦ダンジョンから出るか」
魔物が消滅していくのを見届け、踵を返して元の道を歩いていく。
それにしても、師匠との修行に比べるとこのダンジョンは少し楽だったな。
まぁ、師匠と初心者が使うダンジョンを比べることがおかしいか、あの人なら笑顔で高ランク帯のダンジョンを踏破しそうだしな。
ウザったらしいドヤ顔でピースをする師匠を脳内から追い出し、今日の動きを振り返る。
動きは悪くなかったと思うけど、師匠から教えてもらっている型はまだ身に付いてはないかな。でも、これに関しては時間のもんだ──。
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
遠くから聞こえた声に勢いよく顔を上げて後ろを振り返る。
「今の…悲鳴か!」
瞬時に下肢に魔力を通し、地面を蹴る。
真っ直ぐ進み、角を曲がる。
「……あ?」
しかし、そこは行き止まりで壁になっていた。
どういう事だ?悲鳴は確かにここから聞こえた気がしたけど、聞き間違いか?
「いや、ここであってるか」
足元を見ると、そこにはローブが落ちていた。
先程の悲鳴と消えた人から推測するにこれは──。
「
顎に手を当てながら呟く。
血痕も残らずに人一人が消えるのは基本的にありえない為、
でも、転移の
ここは
「一旦、戻った方がいい……か」
このまま
急いでダンジョンから出て高ランクの
そうと決まれば直ぐに戻らな─ガコン─ん?
嫌な音が聞こえ、冷や汗を流しながらゆっくりと下を向く。
……なんで左足が少し沈んでるんですか?
「ってまっずい!
急いで横に飛び、着地して壁に手を当て─カチャ─。
「あっ……」
なるほど、地面のボタンを押した後に壁のボタンを押すと起動するタイプの奴か。
つまり、これは
「隠し部屋とかのやつぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
仕掛けが起動し、地面が割れた。
俺は、叫びながらそのまま穴に落下していった。
*******
「──ぁぁぁぁぁぁああ!!!いっだ!?」
ま、まさか滑り台だとは、ケツが痛え。
つか、なんでだよ。なんもヒントなくてなんで起動できちまったんだよ俺のバカ!!!!!!!
というか、あんな簡単ならなんで今まで気づかれなかったんだよ!?
「しっかし、どこだここ。暗がりの迷宮の中にしてはやけに明るいな」
暗がりの迷宮は全部で7層になっており、その全ての層が薄暗く周囲が見にくくなっている。
しかし、今俺がいる場所は両壁に均等に松明がついており、辺りを明るく照らしている。
「これは、本格的に隠し部屋かもな」
隠し部屋とは、一定の手順で解放される部屋の事だ。
基本的に隠し部屋には珍しい財宝や
のだが、そんな簡単に手に入れられるほどダンジョンは甘くない。
隠し部屋には財宝を守る魔物がいる。総じて、そのダンジョンにいる魔物の数段階上の力を持っている、強力な魔物だ。
「……元の場所には戻れないか」
滑り落ちてきた穴を確認する。
急な傾斜にはなっているが、頑張れば登れないことはない。しかし、落ちる時に空いた穴は恐らく閉まっているので、戻れないだろう。
「仕方ない、先に進むか。あのローブの持ち主も多分ここにいると思うしな」
パンパンと服の汚れをはたいて落としながら立ち上がる。
「よし、行くか」
周囲に魔物らしき気配はなく、ただ道が真っ直ぐ続いている。
その道を警戒を緩めずに進む。
「……扉、財宝の部屋か?」
10分程だろうか、その
左手を扉の前に置き、力を込める。
「軽っ」
思わず声が出てしまう程、大きな扉にしてはあっさり開いた。
「やぁぁぁぁぁ!!」
戦闘音と共に響く人の声。
急いで中に入ると、短剣の
「
少女の短剣が弾き飛ばされ、巨大な狼が腕を振り上げていた。
身体強化を施し、狼と少女の間に入る。
──ガギン!!!──
「おっっも!?」
まずい、圧倒的に
後ろの少女が退避したのを確認して、俺も後退する。
「あっぶねぇ、このままじゃぺしゃんこになる所だった。えーっと、随分とボロボロだけど無事?」
少女の方を向き、話しかける。
「無事、です。全部かすり傷ですから。助けてくれてありがとうございます」
「それは良かった。んで、あいつが隠し部屋の
「部屋がここしか無かったので、多分そうです」
「それじゃあ、ここから出るにはあいつを斬らなきゃいけないってことか」
獲物を狩る目で見下ろしてくる巨大狼を見据える。
自分の方が優勢と思っているのか、そいつはその場から動いていない。
「でも、気おつけて下さい。あの魔物は
「へー、
「まじです」
俺は、バッと少女の方を向き、頬を引き攣らせる。
確かに、あの魔物は他とは違う雰囲気を醸し出していたけど…。
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