第3章 誕生日
第11話
要から「ごめん、急患でたから今日は会えそうにない」とメールがきたのは、もうすぐ仕事が終わるなっていう17時半頃のことだった。いつもだったら落ち込まないけど、さすがに今日は落ち込んでしまう。だって今日は私の誕生日だ。
「仕方ない、よね。」
溜め息さえ忘れてそう呟く。頭では分かっている。だって仕事なんだもん。要は命を救うお仕事だから、大変な人をほったらかして私のところに来てなんて言えない。でも今日くらいは顔を見たかったし、会えないとしても「お誕生日おめでとう」って言葉が欲しかった。
「柚ちゃん、元気ないね。なんかあったの?」
仕事を終えて給湯室にコップを洗いに行くと、三枝先輩と一緒になった。
「私、今日が誕生日なんですけど……」
「あ!そうだったね!おめでとう!」
「だから、今日は要と会う約束をしてたんですけど、ダメになっちゃって」
こんなことで落ち込むなんて、私のわがままだってわかっている。だけど今年の誕生日は、プロポーズをされちゃうのかなって期待が入り混じっていた分、落ち込んでしまうのだ。
「え~。それは落ち込むねぇ。でも、埋め合わせの約束はしてるんでしょ?」
「いえ。なんか、急患で忙しいみたいで、今日は会えないってことだけしか……」
「えー。じゃあ、私でよかったらお祝いさせてよ」
「えっ」
それは、考えもしていなかったお誘いだった。だけど、そんなつもりではなかったため、両手を振りながら「いえ、そんなつもりで言ったんじゃないんで気を使わないでくださいよ!悪いです!」と遠慮した。
「なに言ってんの。誕生日に一人は寂しいでしょ」
家に帰れば、きっと家族がお祝いはしてくれるとは思うんだけど。
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