第12話

「あ、ともみ!ちょっと!」


ちょうど給湯室の前を通りかかった大島先輩を、三枝先輩は大きな声で引き止める。大島先輩は「なになに~?」と言いながら、コロコロと愛くるしい子犬のように給湯室へと入ってきた。


「今日このあと、柚ちゃんのお誕生日パーティーしない?」

「そうだ!柚ちゃん、お誕生日だったね。おめでとう。私はもちろん構わないけれど、三浦さんとの約束はいいの?」

「それがダメになっちゃったらしいのよ」

「え!それはいけない!ぜひ私たちでお祝いしよう!」


大島先輩は、三枝先輩に同調した。それは光の速さに感じるほどだった。


「で、でも!宮本課長はいいんですか?」

「いいの、いいの!そうだ!じゃあ、うちでしよう。会社から近いから。スーパーに寄ればなにか振る舞えるし」

「やった!久しぶりのともみの御飯!楽しみ!」


私の答えを聞く前に、あれよ、あれよという間に大島先輩のおうちにお邪魔させて頂くことになった。というか、新婚の宮本家にお邪魔するのは初めてなのですが!


「すみません、ありがとうございます。それじゃあ、先輩たちのお言葉に甘えます」

「可愛い柚ちゃんのためだもん」

「急遽だから、簡単な料理しかできないけど。美味しいの作るね」

「ありがとうございます~」


とびきりのぶりっ子声で御礼を言うと、三枝先輩からバシッと愛の鞭が入った。お祝いしようって思ってくださるお二人の気持ちが嬉しいのだ。……要もこう思ってくれていたらいいのにな。


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