第2章 日常

第7話

「佐々木さん、今日の夜、どう?」


自分で言うのもなんだけど、私は男の人にモテる。これはもう、幼稚園の頃からそうだから、そういうものだと思っている。そんなわけで、次の日が休みの金曜日の夜なんかは、別の部署の人からもお誘いを受けることが多い。


「ごめんなさい。今日はちょっと」


かくいう今日も、お誘いを断わることになった。今日断ったのは、人事課の佐藤係長。三十歳独身で向井理似のイケメンだけど、私はタイプじゃない。


「見たよ、柚ちゃん」


そしてそれは必ず三枝先輩に目撃されて、お昼休みに大島先輩にバラされるっていうのがお決まりのパターンだ。一体三枝先輩は、どこをどうしたらそんなに神出鬼没になれるのだろう。


「ええっ。柚ちゃん、また!?」


卵焼きを食べながら驚く大島先輩。大島先輩の手作りお弁当は、いつ見ても美味しそう。今日は天気がいいねってことで、会社の近くの公園で、三人でお弁当を食べている。私と三枝先輩はコンビニのお弁当だけど。


「ええ、まあ。でも、断りましたよ」

「毎回違う人だからすごいよね。でも、ともみも結婚前は凄かったじゃない。結婚前っていうか、宮本課長と付き合う前?」

「そんなことないよお」


私達三人は営業部に所属していて、大島先輩は営業部の課長である宮本課長とご結婚された。宮本課長は、仕事が出来て、長身でイケメンのまさに言うことなしの男性で、かつて私も思いを寄せていた。でもそれは、大島先輩に完敗するのだけれど。


「柚ちゃんが宮本課長を狙っていた時が懐かしいよね」

「ほんとねえ」

「もうその話はやめてくださいってば!」

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