第2話 いつもの日常

キーンコーンカーンコーンと授業終了の合図の鐘がなる。

私と真宇はクラスが違うため、休み時間に、お互いの教室を行き来したり、廊下で話すことしか出来なかった。

その為、すれ違う事が多々あり、すれ違わないように、話す場所を決めることにした。

とくに、放課後は、話す場所を決めた所に行くようになっていた。


授業終了の合図のチャイムと共に、私は今日も真宇と待ち合わせの、旧校舎の使われていない教室に向かう。


ガラガラと音を立てて扉を開けると、見慣れているホコリを被った机と椅子、ホワイトボードと黒板、そして大量の本があった。


私達は、旧校舎の1階の図書室に待ち合わせ場所を決めていた。

ここなら、静かで話すやすいし、本もあるから勉強もできるという事で、待ち合わせ場所を図書室にしたのだ。


放課後は、旧校舎の図書室に行き、真宇を待つのが習慣になっていた。

ホコリを被った机と椅子を掃除し、ついでに床も履いていく。旧校舎という事もありホコリがすぐに溜まってしまう。


ガラガラと音を立てて扉を開ける音がした。

真宇が来たのだ。


「真宇遅いよ」と言うと、真宇は

「いやぁ、ごめんね、ホームルームが長引いてね。」と返して来た。


真宇と一緒に掃除をする。

掃除が終わり、ひと息ついていたら、真宇が話し始めた。


「元カノとの約束守れなかった。俺が、もっとちゃんとしていたら、未来は違ったのかな…」と泣き始める。


私は親にバレて別れさせられるというような経験が無い。だから言葉に詰まってしまう。

けれども、精一杯の言葉を絞り出す。


「引きずっていいと思うよ。無理に忘れされるなんて事は出来るわけ無いんだから。忘れるって思えば、思うほど、忘れられないからね。」と、その話が出る度に、同じような事を口にする。


「分かってるよ、けど………諦められないのが辛い。」と言う真宇に対して私は、そうだね。と返す。



きっと執着を手放さない限り、忘れることなど出来ないだろう。






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