第3話
やだやだやだやだ手伝ってくれよ、とすがってくる良八を振り切るのも面倒くさく、まあ乗りかかった船だ。
そう大和は割り切ることにしてげんなりとした。
「それで、なんかアテはあるのかよ」
「持ち主は見つけたんだ」
「あ?じゃあなんでそこで追いかけなかったんだよ」
「追いかけようとして襲撃されたんだよ。そんで、小休憩していたところで兄さんが通りがかったんだよ」
あのときか、と大和は思った。
「じゃあなんだ。へばりながらもお前は飯食う算段してたってわけか」
「まあ、そうとも言えるな」
大和がその状況がわかっていたらこう言っただろう。
「そんなことしてる場合じゃねえだろ」
「仕方ねえだろ。三日三晩食べずに旅して移動してたら兄さんもそうならあ」
「修行でそれくらいやったことあるけどお前ほど
「なにおう」
そんなことを言いながら二人がたどり着いた先は大和のバイト先のコンビニだった。
「とりあえず俺はこれから仕事だから」
「ちょっと待てよ。見捨てるのかよ!」
「見捨てねえよ。そのほうが楽だけど」
大和は少し声のボリュームを抑えると言った。
「ここだけの話だが……。ここで働いてるやつは忍が多いんだ」
「へえ?そりゃどういうことだ」
「だから、表向きは食べ物とか飲み物売りながら裏では忍の仕事の
そう言うと良八は顔を輝かせた。
「本当か!」
「まあそんなにホイホイうまくいくかはわからねえけど何もしねえよりマシだろ」
うまくいった。
意に反して。
「ああ。金の鏡が入った木の箱?を買い取ったっていうご老人が来てたわね、そういや」
大和より少し年上の女性店員がそう言った。
大和はあんぐり口を開けて入荷したペットボトルの箱を取り落としそうになった。
「
「いいけどお。その箱運んでからにしてよね」
そう言って、にっこりと女性は笑った。
「ついでに私の品出しも代わってもらえるかしらあ」
女はこんなところで抜け目ないな、と大和は思った。
「近所に住むお得意さんでね。この店にはよく来ているわよ」
「その……中身が金の鏡っていうのは間違いないのか?」
「ええ。ちらっとだけど見せてくれたもの」
「持ち歩いているのか」
「防犯対策?とか言っていたわね。なんでも独り身だから外出のとき貴重品は持ち歩いているらしいわ」
女が首を傾げる。
「でもなんで大和ちゃんがそんなこと知りたいの?お仕事のこと?」
「ちょっと知り合いの事情で……」
そこはちょっとお茶を濁しておいた。
「木の箱に入った立派そうな鏡でね。私もちょっと欲しいなって思ったくらい」
「盗ってないよな?」
「イヤだわ。そんなことしないわよお」
コロコロと笑う女だが、これから自分たちがその鏡を取りに行こうとしているんだと思ったら内心冷や汗だった。
「そのじいさんの詳しい家の位置知ってるか?」
「だいたいは。出て右に行ったところに銭湯があるでしょう?そこの道を真っ直ぐに行ってね……」
女が言った地理を大和は頭に叩きこんだ。
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