第2話 森の侵略者
◇◇◇
ところがある日、事件が起こった。森に大勢の冒険者たちが、武器を手にやってきたのだ。
森でのんびりルークスと日向ぼっこをしていたみことは、突然現れた冒険者たちの姿に驚いた。
「あなたたちは誰ですか?」
みことの問い掛けに冒険者たちは答えない。冒険者たちの目は、ルークスに釘付けだった。
「嘘だろう、ドラゴンだ」
「ああ。本物だ。しかも、見たこともない金色のドラゴンだぞ!こいつはいい。とんでもない金になるぜ」
顔を紅潮させながら、ギラギラした目でルークスを見つめてくる。
ルークスは冒険者たちに怯え、さっとみことの背中に隠れた。
「なんだぁ、ドラゴンのくせに弱そうだなぁ。ククク、ツイてるぞ。依頼品じゃねえが、コイツも取っ捕まえて国王陛下に献上しようぜ。おい、お嬢ちゃん、そいつをこっちに寄越しな。ガキがなんでこんなとこにいる。さっさと家に帰んな。そいつは危険な魔物なんだ。俺たちが退治してやるから」
冒険者たちがルークスに手を伸ばそうとしたそのとき、足元からスルスルと蔦が伸びて、たちまち冒険者たちを拘束した。震える小さな声で歌を口ずさむみこと。その歌に合わせるように、蔦がどんどん伸びていく。
「な、なんだっ!」
「くそっ!動かない!なんだこの草はっ!怪しい術を使いやがって!くそっ油断した!おいガキ!とっととこの蔦を外せっ!」
みことはギャアギャア騒ぐ冒険者たちをキッと睨み付ける。
「嫌よ。その蔦を外したら、ルークスを捕まえようとするでしょ」
「くそっ!いいから言うことを聞けっ!ブッ殺すぞっ!」
なおもみことに暴言を吐く冒険者たち。みことの足が恐怖でガタガタと震える。怖い怖い怖い。初めて見る森の外の人たち。外の人がこんなに怖いとは思わなかった。
みことが使えるのは、植物を元気に大きく育てるこの魔法だけ。亡くなったおばあちゃんから教えて貰った唯一の魔法だ。でもこんなの、せいぜい足止めにしかならない。
「ルークス!逃げて!空に逃げるのよ!できるだけ遠くに!」
みことはルークスに向かって必死に叫んだ。
「ふざけるなよガキがっ!そんなことしたらただじゃおかないからなっ!」
男がもがきながらも剣に手を伸ばすと、足に絡み付いた蔦を切り払う。
「怪しいやつめっ!」
「小さいからって油断するなっ!魔物かも知れないぞ!」
「取っ捕まえてひんむいてやるっ!」
乱暴に伸ばされた腕に、みことが思わず目をつぶった次の瞬間、ルークスが『キュイ』っと鋭い声をあげた。するとたちまち黄金の体が眩く光輝き、見上げるほど立派なドラゴンに変化を遂げる。
「ル、ルークス……」
「そんな、嘘だろう……なんでいきなりでかくなりやがったんだ……」
ルークスは冒険者たちをにらみつけると、グルルルルっと恐ろしいうなり声をあげた。
「くっ!くるなっ!」
冒険者たちは持っていた武器をぶんぶん振り回して、必死に威嚇する。
「きゃっ!」
やみくもに振り回した剣がみことの頬を掠め、血が頬を伝う。それをみたルークスは、カッと口を開いたかと思うと、ゴウッと金の息を吐いた。たちまち凄まじい風が巻きあがり、冒険者たちを吹き飛ばす。
「うわぁぁぁ!」
「ぎゃぁぁぁ、た、助けて……」
したたかに地面に叩きつけられ、ほうほうのていで逃げ出す冒険者たち。
「た、たすかったぁ……」
みことはへなへなとその場に座り込んでしまった。すると、シュルシュルと小さくなったルークスが、パタパタと飛んできてみことの肩に止まる。
『キュイ……』
怪我をしたみことをしきりに心配して声を上げるルークス。
「大丈夫。大丈夫だよ」
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