妖精姫と金の竜

しましまにゃんこ

第1話 みことと金の竜

◇◇◇

 ある日みことは小さな卵を拾った。ただの卵ではない。内側からぴかぴか光る不思議な卵だ。


「うーん?初めて見るけどなんの卵かな」


 みことの家は、森にある大きな大きな木の根元。そこにひとつだけポツンと置かれた卵。まるで拾ってくれと言わんばかりに。通常野生の卵は、決して手を触れてはいけない。けれど巣から落ちた卵なら、戻しても育たない可能性が高い。


 みことは少し悩んだあと、家の中に持って帰り育ててみることにした。大きさからいって小鳥の卵かも。そう思っていたけれど……


 金色の殻がパッカリ割れて、中から顔を出したのは……見たこともない金色のドラゴンだった!


「ド、ドラゴン……!?」


 みことは思わず息を呑んだ。みことの手のひらに乗る位の、小さな小さなドラゴン。だけど、後ろ足でしっかりと立ち上がり、背中には立派な翼まで生えている。断じて蜥蜴ではない。


(ドラゴンが何でこんなところに……!?)


 混乱するみことだったが、ドラゴンは『キュイ』と小さく鳴くとトコトコやってきて、みことの手にすりっと頬を擦り付け、甘える仕草を見せた。


「か、可愛い!」


◇◇◇


 みことは金のドラゴンをルークスと名付けた。


 ルークスはとても大人しくその上賢かった。生まれてすぐに言葉を理解し、ルークス、と呼び掛けると、『キュイッ』と元気よく返事をする。


 みことを親と思っているのか、みことの側を片時も離れない。みことがどこかに行こうとすると、すぐにパタパタと飛びながら必死で追いかけてきた。


 お気に入りはみことの肩の上。隙あらばちょこんと止まり、頬をすりすりしてくる。撫でてやると、嬉しそうに『キュイキュイ』と鳴いてご機嫌だ。みことはルークスが可愛くて可愛くて仕方がなかった。


 ドラゴンが、この国ではとても恐ろしい魔物として、恐れられる存在だったとしても。


「大丈夫。ルークスは悪いドラゴンじゃないもの。色だってこんなに綺麗な金色だし。大好物は美味しい木の実だしね」


 ルークスが食べるのは、家の木になる金色の木の実だけ。臆病な森の動物たちも、小さなルークスを怖がることはない。


 みことは大好きなおばあちゃんが亡くなったあと、深い深い森の中、たった一人で暮らしていた。森は好きだ。森に住む動物たちも可愛い。だけど、ずっと一人ぼっちで寂しかった。


「大好きよ、ルークス。ずっと一緒にいてね」


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