第二十話 ブレイブ

「おいブレイブ。何やってんだお前?」


体の血流が早まり、頭から心臓の鼓動が聞こえる。ただ、思考はこれまでになく冴えわたって、冷静だった。

人間はあまりに大きな感情を抱くと、一周回って無感情になるらしい。

たかがNPCの受付。されど確かにダラットはそこに「いた」。

NPCは生き返ることが出来ない。プレイヤーと違って。

俺はNPCの盗賊を殺したが、あれは正当防衛であるのと、手慣れて事を運んでいて、殺すという行為に一切躊躇がなさそうだったからだ。おそらく今までに何人も殺してきたのだろう。罪人は裁かれて然るべき。だが…


「ダラットがお前に何をした?あの人はお前を慕っていたはずだ。」


ブレイブは少し考えるような動作をした後、軽薄に笑いながら言った。


「いやぁ。何も?」

「は?」

「いや、何もっていうと語弊があるか。いろいろ一緒にやったぞ。冒険とか…うっ…」


途中まで言いかけたブレイブは頭を押さえて苦しみだした。刀を向けるべきか迷っていると、すぐに治ったようで、どこか虚ろな眼を俺に向けて着ていった。


「今となってはどうでもいいことよ。さあ、死会おうか。我は何時でもよいぞ?先手は譲ってやろう。」


空気が、変わった。

ダンブルウィードのように、一枚の木の葉が地に落ちる。

その瞬間、俺はブレイブに向かって必殺技を詠唱しながら切り込む。一撃譲ってくれるというのなら、最初から最大火力を叩き込むまでだ。


『ネクロマンサー恐が願い奉る!我に力を…「キィン」


「やるのう。隙をついたと思ったが。」

「先手は譲るって言ってなかったか?卑怯だぞ。」

「卑怯も何もあるものか。殺し合いは勝者こそが正義。敵の言うことを信ずるなど持ってのほか。勉強になったか?」

「ああ、ありがたすぎて涙が出るよっ!」


言いながら剣を引き体制を立て直す。


「いい判断だが…いつ我が一対一であるといった?」


ガシッっと足元から音がする。目を向けると、白いものが足にまとわりついていた。いや、足を掴んでいた。よく見るとそれは人間の骨の腕だった。


「スケルトンか。」

「ほう、一発で当てるか。どこかで見たことがあったのか?」

「ああ、散々な。」


関節に沿うように刃を入れる。すると刃はすんなりと入り、手首と腕を切り離した。

やけにあっさり切れたな。少し拍子抜けだ。


「凡百をいくら集めても無駄だぞ。」

「だが、塵も積もれば山となるというだろう?」


そういいながらブレイブが腕を振ると、地面から白い腕がたくさん出てきた。

それはどんどんと増えてゆき、40体ほどになった。一人じゃきついぞこれ…


「さあ、この数に勝てるかな?」

「すべてを相手取る必要はないだろ。」


スケルトンは動きが遅いようだから、全速力で間を駆け抜ける。


「まずは片足の機動力をいただこうか。」


そういってブレイブは手を握る。すると先ほど切り落としたスケルトンの手がすごい力で足に食い込む。骨だから角ばっていてとても痛い。だが走り続ける。


「オラッ!」

掛け声とともに、ブレイブを袈裟切りにする。まさか片足が攻撃されながらも突っ込んでくるとは思っていなかったのか、驚いたような顔をしながら、ブレイブは倒れた。


「やったか?」


なんか強敵感出してる割にはかなり弱かったな。ダラットのところへ戻るか。

そう思い踵を返した瞬間、風切り音がして、とっさに俺は身を捩る。


「いい攻撃だった。死んだかと思うほどにな。だが、まだ足りない。」

「侮っていたことを詫びよう。恐よ。さあ、本気で行くぞ。」


強くなるなんて聞いてない。


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かっこよさ極振り。どうも、サッカーしてたら手を怪我した作者です。

短いのと更新できてなくてすみません。もうすぐ終わりますんで。しばしお待ちを。

すぐに終わらせてテスト勉強しなきゃと思いつつ、うまく書く方法が見つからない無限ループ。そして深夜テンションにみを任せる。それが本日の私です。

評価やフォロー、感想、誤字脱字のご指摘などがあると大変ありがたいです。

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