第十七話 そいつは…


一区切りついたので、ログアウトする。

いつも通りの音とともに、意識が現実に帰ってくる。


「それにしてもゲームであんなに充実した経験を送れるとはな…」


あしたは陽太も誘っていってみるかな?

ちなみに今日の夕飯はごはんとみそ汁と納豆と焼き鮭。

途中で朝食を作っている感覚に襲われたが…まあ冷蔵庫にあったものたちを出したらこうなった。

今日は父さんは久々に仕事が入ってご機嫌だったな。

事故物件に行って祓ってきたらしい。でもそんな強力な霊じゃなかったようだ。まあそれでも仕事の後はいつもご機嫌なんだがな。

美玖はラブレターをもらったらしいが、好きな人がいるってことで断ったらしい。

でも俺美玖の好きな人知らないな…今度効いてみるか。

それにしても兄妹でこのモテ度の差は何なんだろうか…

俺ラブレターなんかもらったことないよ。世知辛いなあ。


空しくなってきた俺は、ふて寝した。



■■■


今日は早く起きてしまった。まあそうなるだけのことがあったわけだが。

なんと明日から冬休みである。今日は午前中に学校に行って終業式を終わらせたらそのまま休みだ。

別に学校が嫌いなわけではないが、家にいるほうがずっと楽しいのだ。学校は勉強をする場所でもあるが、それ以上に人と触れ合う場でもある。だが、別に友達って言っても親しいのは陽太だけだし、家で遊べばいいと思ってしまう。勉強だって普通にしていれば悪い点数を取ることはないし。

まあつまり一言で言うとだ。冬休み最高!ってこと。



教室に着くと、陽太はすでに学校に来ていた。本を読んでいたようだが、俺に気づくと立ち上がって話しかけてきた。


「すまん!昨日疲れすぎて寝ちまった。おかげでたっぷり休めたから今日はログインできるぜ。」

「そっか。別に気にしてないんだけどね。それにしても聞いてよ、昨日…」


一発目が謝罪だとは思わなかったが、別に気にしてなかったしいいと思う。むしろ昨日は陽太がいなかったからこその経験でもあったし。

そして一通り昨日会ったことを説明すると、思ったのと違う反応をしてきた。


「墓地の前に受付?そんなものあったのか。俺は言ったことないから知らないけど。でもブレイブなんて名前、聞いたことないぞ?」

「そう?たまにしかいないだけかもよ?まあ俺は聖水の場所も見つかったし、幸運だったんじゃない?」


そう、ブレイブがいなければ聖水の場所がわからず、ただの雑巾で墓を吹く羽目になっていただろう。正直幽霊撃退に聖水使わなかったし、一番使ったのは洗剤としての役割だっていう。

ちなみに陽太に話したら爆笑された。



「――――どうか皆さん、事故に気を付けてよ言う冬休みを」

「「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」」

「よっしゃー冬休みだぜえええええ」「25日ゲーセンいかん?」「じゃあまた来年なー。」


口々にみんな叫びだす。まあ俺はホラースポットめぐりとゲームと宿題で冬休みを終えることになりそうだが。

まあリアル充実してたらリア充だからな。ゲームだって別に立派な趣味と言えるだろう。ただあまりにも動かないと体が固まるので、一日10回ぐらい屈伸するのが長期休暇の習慣だ。そうすると少し動いたら勘を取り戻せるからな。

休みの解放感に襲われて、家まで走って帰った。なんかたまに全力で走りたくなる時ってあるよな。あとから恥ずかしくなるから考えるのはやめよう。



■■■


「よし。ゲームやるか」


ある程度冬休みの宿題をやった俺はゲームを起動する。

おなじみの起動音とともに、視界が緑に染まる。そうだ、昨日は戻れそうになかったから、森の中でログアウトしたんだった。早くギルドに戻って依頼書を提出しないと。俺はダッシュで始まりの街レグルスに戻る。

街の広場に戻ると、陽太がいた。今更だが、目立つ容姿してるけど、この世界だと普通過ぎて逆に見つけにくいな。種族はリザードマンの戦士のアバターが陽太だ。


「よう、久しぶりだな。」

「こっちではな。おれは依頼書を提出しに行くんだけど、陽太も一緒に来なよ。ダラットの受付に一緒に行くって言ったよな。」

「あれは…まあいいや。本当に優しいんだよな?ダラットさんは」


陽太は何かを言おうとしてやめた。一番気になるやつじゃん。ただ聞いてほしくなさそうだったので、追及はやめておく。知らぬが仏だ。


「保証する。」

「お前の保証が大丈夫だったことはない気がするが…今回は信じてみよう。」


心外だな。結局はあってることが多いのに。まあ口論していても時間の無駄である。早く向かおう。



「「失礼します」」

「すみません、依頼を完了したので報告に来ました。」


俺たちはダラットのカウンターへ行き、報告する。

相も変わらずすごい威圧感だな。


「おう、終わったか。依頼書とギルドカードを見せてみな。」

「はい。今出します。」


そういえば討伐証明できるようなもの持ってないな。どうしようか。


「よし、依頼達成だな。」

「なんでわかるんですか?」


そう質問するとぎろりと睨まれる。怖っ。何か悪いことしたかな?


「いい質問だ。」

「あ、そうですか…」


隣の陽太なんかもう顔面蒼白だ。


「ギルドカードというのは魂のかけらが宿っている。それに照らし合わせてみると、達成しているかがおのずとわかるって仕組みさ。」

「ほえ~」


思わず間抜けな声が漏れた。本当にこのカードはご都合主義というかなんというか…


「ついでにスタンプも押しといたぞ。また次回も励めよ。」

「ありがとうございます!」


やっぱいい人だなあ。ダラットさん。陽太にそっと目を向けると驚いたような顔をしている。信じてなかったみたいだ。


「あとなにか異変があったら確認しなくちゃならんからあったことをできるだけ話してくれると頼む。あそこは不人気だから情報が少ないんだ。別にこれは任意だが、報酬は上乗せするぞ。」

「わかりました。じゃあ話しますね。」



そして話始めるとダラットは真剣にメモを取っていった。本当にいい人だしまじめだな。俺はそして話していった。


「―――そしたら、なんか金髪の人がいて、声をかけてきたんですよ。たぶん受付とか警部に人だと思うんですけど。その人はって名乗って…」

「ちょっと待ってくれ。」


突然ダラットが俺の話を遮っていった。


「ブレイブ?ってブレイブさんか?すまんな。話を中断して。少し聞きたいことがあるんだが、そのブレイブって人は少しなれなれしい口調で、頭にハチマキを巻いていなかったか?」


ええ…どうだっけ。確か巻いていた気がする。なれなれしい口調はその通りだ。

うなずくと、ダラットは腕組みをして何か考え込んでいる。


「どうしたんですか?」


ある程度時間がたった後に聞いてみる。すると、心なしか顔面が蒼白なダラットは答える。


「ブレイブさんは俺の、いや俺たちの大先輩で…













三年前に、俺をかばって死んだ男だ。」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今日寒すぎませんか?投稿遅れてすみません。

まさかの英検、模試、小テスト、追試のレンチャンっていうスケジュール。そしてもうすぐ定期試験って…そろそろ勉強ヤツらが本格的に私を殺しに来てると思います。

ちなみにこの物語の一章はもうすぐ終了です。あと3~4話ぐらいですかね。

どうにか一月の間に終わらせたいと考えています。デュエルスタンバイ!

評価やフォロー、感想、誤字脱字のご指摘などがあると大変ありがたいです。

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