第十二話 冬のキャッチボール
「寒いのは苦手だ…」
「仕方がないだろ。授業なんだし。」
俺たちは今、外でキャッチボールをしていた。陽太はバスケ部だが、野球もうまい。
「お前は運動お得意だろっと」
そういいながら陽太は変化球を投げてくる。君、初心者になんてボール投げてるの?
「そこまで得意ってわけでもない。ところで初心者に変化球投げるとか鬼畜だろ。」
「50m走6秒台のやつが何言ってんだよ。ってお前初心者って言いながら何変化球投げてきてんだよ。」
「いやなんか見てたらできるかなーって思って。」
「それで出来たらだれも苦労しないわ。このポテンシャルの塊が。」
前にも言われた気がする褒められているのかけなされているのかよくわからない表現だ。褒められていると思おう。そちらのほうが精神的に楽だ。
「それにしてもあっちのほうはすごいな。もはや同じ人間とは思えない。」
「クラスメイトのことをそんな言い方するのは罪悪感があるが、同意だ。」
俺は向こうで半袖半ズボンでボールを投げている5人組を指さしながら言う。普段人のことを悪く言わない陽太も同意のようだ。
いやあ…だって現在気温四度だよ。なんで半袖半ズボンで居られるの?小学生のクラスには一人いる奴がたくさんいるこのクラスは何なんだろうか。
まあ、朝話してみた印象だと悪いやつらではなかった。ただ単に理解できない服装とノリをしているだけだ。それが大きな差なんだが。
「次はソフトボール投げのテストを行うぞー」
先生が言う。そういえば今日はテストか。もうすぐ冬休みだから今のうちに成績をつけようとしているんだろう。
「垣田の次は鞍馬か。おーい鞍馬居るか?」
「まあ、がんばって来いや。ここから見てるぞ。」
「よーしいいぞー投げろ!鞍馬」
俺はボールを持って構える。陽太から聞いたコツは確か動きを意識するのと45度を見るだっけ?まあいいや。投げるか。ヒュンと音を立ててボールが飛ぶ。
「鞍馬、38m!シートに記入しとけ。」
「ありがとうございます。」
そそくさと俺はキャッチボールに戻る。注目されるのは苦手だ。こういう場はすぐに立ち去るに限る。
「うまく投げられたかな?」
「38mは普通にすごいぞ。俺はやってもできないと思う。」
「そうかあ。ふふふ」
少しうれしくなっていた。俺は運動ができるのかもしれない。いや、調子に乗ってはいけない。だが顔が緩む。褒められるという行為に慣れていないからお世辞だとしてもうれしい。だがその次の言葉で、そんな気持ちは消え去る。
「郷田、44m!すごいぞ!」
「うおーすげー郷田!」「さすが郷田だ!」
うん、やっぱり運動得意じゃない気がする。俺は帰宅部がふさわしい。
「いや初心者で38は普通にヤバいと思うが…」
陽太がお世辞で慰めようとしてくれている。ああ、いい友達を持ったなあ。
そんなこんなで体育は終了した。
陽太は35mだった。顔色悪かったし大丈夫かな?
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めっちゃ短くてすみません。言い訳になりますが、宿題と短編チャレンジで忙しかったんです。明日か明後日には投稿するので許してください。
作者は恐介ぐらい運動できますがモテませんね(泣)コミュ力大事。
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