第十一話 恐というプレイヤー
初めてVRゲームをプレイした翌日、俺は重い足取りで学校へと向かっていた。
なぜ足取りが重いのかというと…
「「氷点下なのに半袖半ズボンで体育をする意味が理解できない。」」
「だろ?」
いつの間にか後ろにいた陽太が重ねて言ってきた。
「いつから居たんだ、お前」
「ついさっきだよ。お前が信号渡った少し後だから…200m前ぐらいか?」
「十分長いんだが?俺が美玖の影の薄さとホラーゲームで慣れてなかったら心臓止まってたかもしれないんだぞ?一応何かが起きた時のためにいつもカッター持ち歩いてんだから、気を付けてくれよ。」
「普通に考えたらお前のほうが怖いぞ。友達にカッター向けるとか」
そうか?カッターは紙を切るときにも誘拐された時にも使える上に刃渡り6㎝以下なら銃刀法に引っかからない。そしてあの洗練されたコンパクトなデザイン。機能美故の美しさというものが備わっている気がする。
とまあそれは置いておいて。
「なぜおまえは俺のセリフを当てられたんだ?」
「いやいつも冬に体育がある日一日5回は言ってるから当てられると思ってな。」
「そんなに言っていたか?」
「口癖っていうのは知らぬ間に言っているもんだぜ。」
「…そっか。」
「なんだよ?」
「いやすごいどや顔してるけど言ってること普通だなと思ってただけ。」
「喧嘩売ってんのか?」
本当は少し納得してしまって悔しかっただけなんだがな。
このままだと長引きそうだし、話題を変えよう。
「話は変わるけどうちの家族も全員ゲーム参加することになった。」
「まじか?あのゲームかなり高いし、転売ヤーも多いのによく4人分も揃えようとしたな。」
「それはいつもの謎人脈で、もうすぐ届くらしい。」
そう、母さんは謎に顔が広い、いろいろな伝手をたどってそろえたんだろう。
{いやでもそうすると恐介にはPKKしたことを伝えないでおくべきか?家族の前でVRとはいえ現実のプレイヤー殺しまくったって気負わせるのもな…}
「なんか言った?」
「いやなんでも。」
何かごちゃごちゃ言っていた気もするが、まあ気にしないでおこう。
「そういえばチュートリアル二回あった理由分かったか?」
「ああ、あれめっちゃ低確率のイベントっぽいぜ。報酬は無し。」
「嘘だろ…変なところでしょっぱいなあのゲーム。」
まあ、弱かったし仕方ないかと思いながら時計を見ると、かなりぎりぎりだった。
「あと五分でチャイム鳴るぞ!急いでいこう!」
「ああ、そうだな!」
ギリギリ遅刻はしなかったとか。
■■■
ギリギリ間に合い、朝のホームルームを終えると、教室はいつものように騒がしくなった。嫌いな空気感だ。俺は俗にいう陰キャというやつだと思う。
いわゆる陽のノリを持つ者たちについていけない、陽太は陽キャだが、真の陽キャというのは不思議と話していても意外と合う。むしろ安心感がある。
それが出来るからあいつはチートなんだよなあ。と思いながら1,2時間目の体育のために着替え始める。
だが今日は何時もよりも幾分か騒がしかった。珍しいと思い、それとなく聞き耳を立てているといろいろ聞こえてきた。
「昨日デビューしたアイドル、すごい可愛かったよなー」
「土曜日ゲーム爆死したわww」
「うわっ、体操着ないやん。誰か貸してくんね?」
「お前昨日青い鳥に上がってたPKKの動画見たか?」
「昨日青い鳥でヤバいやつ見つけてさー。たしかトレンド入りしてたぜ。」
「あー知ってる。
「おい鞍馬、お前も知ってるか?こいつ。」
突然話しかけてそういって陽キャはYourTuveを開いて、とある動画を見せてきた。
そこには笑いながら撮影者の仲間を虐殺する男(?)の姿が映っていた。
血に染まった姿も恐ろしさと美しさを両立させている。
それを見た俺の感想は…
「いいね。これ。」
憧憬の念に近いものだった。
それは俺の理想のホラーのキャラを体現した姿だったからだ。もっと戦闘を見ていたい。
ああ、様々なインスピレーションが湧いてくる!俺は趣味でホラー小説を書いていたりするので、ビビッと来たときは何でそう思ったかメモしておくのだ。
「なんて検索すれば出てくるの?この動画?」
「ああ、VRの死神か
「そう?確かに話したことは余りなかったな。」
「あとでRIMEのID送っといてくれよな!」
そういって陽キャは嵐のように去っていった。
意外と話せばわかるのかもしれないと思った今日この頃であった。
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新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。
十一話目です。正月はガチャで見事に爆死しました。12%の確率で50連引いて一体も当たらないって、もはや一周回ってすごい確率な気がします。1000PVとたくさんの応援、ありがとうございます。めっちゃうれしいです。
評価やフォロー、感想、誤字脱字のご指摘などがあると大変ありがたいです。
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