第十話 鞍馬家の食卓

ギルドから出た俺たちは、今日のことについて話していた。


「―――で、なぜか盗賊が二回も出て大変だったんだ。遅れたのはそれが理由。」

「うん?おかしいな。チュートリアルに実践なんてなかった気がするぞ。」

「いやでも事実2回出たんだし…」

「アプデの新機能か?っていうか二回とも必殺技を使わずに倒すとかおかしいだろ。まあいい、戻ったらネットで調べてみるわ。」


などと話し込んでいると、俺のおなかが「グウウゥゥ」と音を立てた。


「じゃ、そろそろ現実に帰りますか。」


陽太が何も言わずにフォローしてくれる。持つべきものは友だなあ。

少しおなかも減ってきたし、周りも暗くなってきたしな。

陽太に聞いたところ、この世界の時間はある程度リンクしているんだとか。


「ああ、そうだな。俺の夕食はマカロニグラタンだ。冬には最高だよな。」

「うん、そうだね。ちなみに俺はシチューを作る予定だよ。同じ系統だね。」

「うおー、お前の作るシチューうまいからなぁ。明日食べに行っていいか?」

「いいよ。」


自分の作るものを評価してもらえるのは素直にうれしい。

でも陽太のお母さんの料理は絶品だ。陽太の実家は定食屋だからごはんがおいしい。


「じゃあ、また明日学校で。」

「じゃあな」


頭の中で念じ、ログアウトボタンを押す。

するとまた「ヴゥゥゥゥン」と音がして、今度は目の前が真っ暗になった。




■■■


「知っている天井だ。」


目が覚めたら自室の天井が見えた。もう10年以上見ている木目だ。

いまだに夢のような感じだ。グラフィックもとても綺麗だったし、戦闘もリアルだった。


「とりあえずシチュー作るか。」


家にある食材で一番手軽に作れそうだったのがシチューだったので先ほどはそう答えた。キッチンに行き、食材を出す。

そして俺は野菜と肉を切って鍋に入れ、煮込む。

すると部屋で作業していたうちの家族たちが出てくる。


「うむ、いい匂いだ。毎度ありがとな。恐介」


そういって和服姿で出てきたのは僕の父、鞍馬恐斬くらまきょうざんである。

職業は、まさかの陰陽師。俺も自分の父親でなければ信じていなかっただろう。

この人の影響で俺は怪異などに詳しくなった。

寡黙だけどすごい優しい。行動は「老紳士」を体現したかのような感じ。

様々な分野に幅広い見識を持っている。我ながら自慢の父親だ。


「今日もご飯作ってくれてありがとね~」


と間延びした声で言うのは俺の母、鞍馬優子くらまゆうこだ。

容姿は日本人形のよう。わが母ながら美人だ。

普段は掴みどころがないが、いざとなるとすごい行動力を見せる。


「兄さん、今日はシチューですか?楽しみです。」


そういっていつの間にか後ろにいたのが俺の妹、鞍馬美玖くらまみく

かなり頭がいいし、運動もできる。だがなぜか気配が薄い。幸いまだ反抗期は来ていない。容姿は母さんにそっくりだ。ちなみにシチューは美玖の好物である。


そんなこんなしているうちにシチューを作り終わった。

各自皿についでもらい、食事を始める。


「「「「いただきます。」」」」


みんなで冷ましながらシチューを食べる。冬に温かいものは最高だ。心から温まるような気がする。そしていつものようにみんなで今日あったことを話し合う。


「今日は持久走大会がありました。惜しくも四位でしたが。」

「それでもすごいじゃないか。さすが美玖だな。俺が美玖の年のころ30位だったぞ。」

「ありがとうございます。」


美玖は嬉しそうに言った。それにしてもなぜ持久走大会というのは冬にあるのだろうか。のどがすごく痛くなるのに。秋が一番いいと思うが。

俺は気候は秋が好きだ。過ごしやすいしよく晴れるからな。


「儂は説教をしてきたぞ。本当の怪異に出くわすなどごくまれだからな。仕方がないと言ってしまえばそれまでだが。」


まだ40行ってないのに一人称儂なんだよな。何回言っても止めないからもう諦めたが。でも陰陽師の仕事がなくなっているのは世知辛いな。悩みは多いはずなのに、困ったときの神頼みというのが少なくなっているのが原因だそうだ。

俺も今日あったことを話すか。


「今日はVRゲームやってみたよ。」

「またホラーゲームですか?私はやりませんよ。絶対。」

「違う違う、普通のゲームだよ。今度美玖も一緒にやる?」

「ならば是非。兄さんと普通のゲームなんて久しぶりですね。」


普段ホラゲーばっかりやってるから仕方ないけど、ここまで言われるか…

とりあえず目標は美玖の先導が出来るぐらい上手くなることにしておこう。


「ふむ、ゲームか。久々に儂もやってみたいのう。どうじゃ、優子も一緒に。」

「私もやってみるわ~恐介がホラーゲーム以外やるなんてめったにないし。」


なぜか家族全員参加という流れになってしまった。なぜだろうか。

これからのことを考えると頭が痛くなりそうなので、そのまま風呂に入って寝た。

ああ、充実したけど疲れた一日だったなあ。盗賊2回出てきたのは謎だったけど。

そんなことを考えながら、俺は眠りについた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

遅くなってすみません。家族決めるのに手間取りました。

これで一日目はほぼ終了です。これからは二日目の学校に映ります。

果たしてラブコメはあるのか…

私の気分次第でございます。というのは半分本当で、皆様ラブコメいりますか?

ぜひ感想等で教えてください。

次の投稿は明日か明後日になると思います。明日か明後日の19時が理想ですが。

評価やフォロー、感想、誤字脱字のご指摘などがあると大変ありがたいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る