『最終回』


 確かに、穴に飛び込んだはずだった。


 しかし、ふい、と、出てきたのは、あの遥か昔の村人のミイラが立っていた、地下の広場であった。


 そこには、連邦軍の兵士が詰めていて、異世界から帰ってきた人を検知器でさかんにチェックして、腕に識別カードを装着しては、地上に一人ずつ移送していた。


 兵士だけではなく、工場から出てきた村人も、かなり沢山いた。


 あまり、はっきり事態を認識できているような雰囲気ではない。


 おそらく、山西さんあたりに、押し出されてきたたのだろう。


 全員が出てきたのか?


 おそらく、そうではあるまい。


 あの時、工場から外に出てきた人の中で、やたら目についたような人の姿が一部見当たらない。


 まあ、どうにもならないのだが。


 ぼくと彼女は、ちょっと留め置かれた。


 もちろん、チェックはされた。


 放射線の影響などを調べたのだろう。


 スパイグッズも、当然押収された。やれやれ。いささか、気が抜けたようでもある。


 これで、しろうと探偵も廃業だな。


 

 

   🍶🍶🍶🍶🍶🍶🍶



 あれから、一月。


 ぼくは、連邦政府の施設に入れられていた。待遇は悪くない。


 いや、むしろ、なかなかのものだ。外出は、庭だけだが、食事は良すぎる。太る。


 ただし、相変わらず、情報は来ない。


 影山さんたちは、村のレジスタンス活動をやっていたらしい。


 おかしな話ではあるが、校長先生の指揮を受けていたみたいである。


 バランスを取っていたのかもしれない。


 山西さんは、当然のように行方不明になっている。


 しかし、詳しくはまだ、分からない。分からないことが多いのである。が、連邦政府が、情報公開するかどうかは、国民の意思のあり方にも左右される。ぼくは、本を書くつもりでいる。


 さらに、『乙女座商会』、というのが何か?


 こちらは、さっぱり分からないままだ。


 彼女は、同じ施設にいるのは分かっているが、接触はできずにいる。


 村長は、無事に古巣に帰ったらしい。元気なのかどうかは、わからないが、あの民宿に居たのなら、ダイジョブなんだろう。


 我が町長は、ミサイルを発射しなかった。ぎりぎりで、止めたらしい。


 さすが、わが、ボス。と言ってあげるべきだ。


 だから、町も村も、そのまま残っている。


 あの工場があった場所がなんなのか?


 どうなったのか?


 正式な情報は来ないが、スパイ仲間からようやく聴いた話では、本当に消滅したらしい。


 さらに、校長先生も、そのご家族も、行方は、わからない。


 あの方こそ、昔からの『乙女座商会』の偉い人だったのかもしれない。


 想像だが、そんな気がした。


 きっと、ご無事なんだろうが、ひとこと、挨拶くらい残して欲しかった。残念である。



         おわり

 

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『ざ、すぱい』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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