『ざ、すぱい』 下の8


 まるで、巨大な保養所みたいだった。


 見えない入口から入ると、そこは、広々としたオープン・スペースで、あちらこちらに、ソファーとテーブルがある。  


 とてつもなく、広いのだ。


 びっくりしたのは、なんと、多数の村人が、すでに、いたことなのである。


 あの、歓迎会に来ていた人たちもいる。


 役場で見た人も、そのあたりでみた、農家のおばさんも。


 影山さんもいた。


 ぼくは、ぽかん、としてしまった。


 『いま、村人の全員が、ここに移動してきていますでな。なんせ、ミサイル来るだろうし。あんたの町から。しかし、ここは、時間も歴史も、あそことは、つながらない。しかし、つながっている。』


 山西んは、禅問答のようなことを言った。


 『ぼくは、空を飛んで、地下に潜って、拘束されて、あんな地下からやって来たのに、この人たちはどこからきたのですか?』


 『そら、あんた、ああしたエレベーターは、あちこちにあるだべ。すべて、同じ場所に到着する。理屈は誰も知らない。そこが、良いのだ。』


 『壊れたら?』


 『ま、壊れたことがないからなあ〰️〰️〰️☺️』


 我が町の攻撃なんか、すべて、お見通しなわけか?


 あり得ないだろう。


 『ここは、広いのだ。村民全員が生活しても、はるかな、お釣りがある。はやく言えば、首都の全員が入ることが可能だ。それでも、余裕ができる。州内の全住民も、たぶん、入れるだろう。ここの空間に制約はないみたいだから。』


 『な、………食糧とかは?』


 『勝手にできる。あそこのサーバー空間から、いくらでも調達できる。』


 山西さんは、何もない空間を指差した。


 『な、………誰が作ってるの。』


 『さあ。それは、誰も知らない。完璧な、ユートピアだべな。』


 『あり得ないです。あり得ない。そんな、永久機関みたいなこと。』


 『まあな。しかし、江戸時代もこうだったわけなんだな。』


 『はあ?』


 『ご先祖さまたちも、これと、同じ場所に来た。ラーメン食って、カレーも食った。ビフテキも。ピラフも。みな、ただだ。ただし、ここに来たら、仕事はしなければならないだ。』



      🍛


 


 


 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る