『ざ、すぱい』 下の4


 そうして、ついに、ぼくは見た!


 それは、5体の、ミイラであった。


 みな、それぞれに、質素ではあるが、古風な着物をきちんと着せられていた。


 地下深くのこの洞窟の底に、ながらく鎮座してきていたのである。


 すると、案内役の人が、ある老人を紹介した。


 『こちらが、山西さんであります。このあたりについては、並ぶものなき、歩く生き字引と言われまする。』


 ああ、この人が、山西さんか。


 難しいことでも、有名とか言う人だな。


 わざわざ、会いに行かなくても、出てきてくださったわけだ。


 しかし、この洞窟は、薄暗いから、はっきりした風貌は分からない。おまけに、かなり古びた、縁のやたら広い、イタリア風の帽子を被っている。


 着物が質素なので、かなり、目立つ。


 それが、怪しさをさらに、倍加させてはいる。


 ミイラは、口をきかないが、その代わりをこの人がやってくれるわけなのだろうか。


 『あんたも、物好きだな。普通なら、話しなんかしないがな、まあ、校長に頼まれちゃ、仕方があるまい。』


 つまり、やはり、先生は偉いのだ。


 この、山西さんをして、口を開かせる力があるわけだ。


 『この方々が、わが、村の神聖なる守り人である。』


 『守り人、ですか。』


 ポケットのなかで、放射線感知器が、小さく震えていた。




     ((😖))

 


 

 

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