『ざ、すぱい』 下の1


 入れずの森の起源は古い。


 それは、みんな知っている。


 誰よりも古いと。


 自然とは、そうしたものだ。




 

 ぼくは、森に下ろされた。


 空飛ぶバイクの運転をしていたのは、村役場の受付の女性だった。


 『すいません。やりたくなかったんですが、やれと言われたから。あとは、自力で帰ってきてくださいね。力は、頼めば得られます。』


 ぼくは、真っ暗な森に立たされた。


 右も左も良く分からない。


 微かな月明かりが現れてはいた。


 ぼくは、いつも、小さなバックに、小さな明かりは持っている。


 スパイグッズだ。


 残念ながら、スマホは、圏外だ。


 衛星電話は、まだ使うのは、危険だ。


 すべて、意図的かもしれないしな。


 こんな夜中に、あちこち動くのはさらに危険だ。


 穴があっても分からないからね。

 

 しかし、超高性能小型放射線感知器が、ちょっとだけ反応している。


 ウランみたいだが、噂は本当かもしれない。


 朝まで待つしかないが、そんな余裕は無さそうだった。


 当然ながら、周囲のすべての方向から、怪しい一団が現れて、迫ってきていた。


 典型的なオカルトである。


 つなぎのローブを纏い、深いフードを被っている。


 ただし、色は分からない。


 黒なのか、赤なのか。


 ブルーなのかも。



 『ご苦労様です。わざわざ、来ていただいて。』


 ひとりが、一歩前に出て言った。


 『われわれは、この森の管理団体です。ご承知のように、ここは、村によって立ち入り禁止になっております。しかし、あなたは、招待されました。だから、違反ではありません。あなたには、ぜひ、我らの大切なものを見ていただいて、実情をご理解いただきたいと、組合長も望んでおります。こちらにどうぞ。』


 その人は、先にたって歩き始めたのである。


 ぼくの回りを、彼らが取り囲んでいる。


 かがり火ではなくて、たぶん、頭に、LEDランプの付いた棒を掲げている。

 

 まあ、ちょっと、不気味だ。


 管理団体ならば、ちと、やりすぎであろう。


 作業着に、ヘルメットであるべきだ。




        🌖

                 


 

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