『ざ、すぱい』 中の18


 『ふん。ははは、きみ、おもしろいねえ。わかった。あす、図書館で、秘密の非公開資料、見せてあげよう。なんせ、昔のかわゆい生徒なんだから。』


 克子かつちか先生は、さも、愉快そうに笑ってのけたのである。



        🌋


 そのばん、本部から、恐ろしいメールが入った。


 『旦那が、ズボンを脱いだ。明日の夜明けの晩が切れるときに、かたつむりが森の里に放たれる。かごに入って、確かめよ。真ん中に落ちよう。』


 『のあんという、おろかな。町長さんは、ご乱心か。いやいや、あの、むさし野おおたぬきおやじのことだ。もともと、そのつもりだったな。ぼくは、生け贄なわけか。』


 旦那、とは、もちろん、町長のことである。


 町長さんは、『むさし野』州の出身であった。


 町長がズボンを脱いだ、とは、けつだした、つまり、決断したのだというのだ。かたつむり、とは、我が町の主力短距離ミサイル『スナイル』のことだ。射程範囲は、頑張って、100キロ程度までだ。明日の夜明けの晩、とは、明日の夜のあとの夜明けの晩、だから、あさっての晩のことで、切れるときだから、深夜12時である。目標は、森の里、つまり、入らずの森のど真ん中、と言っている。正確な座標は分からない。かごに入れ、とは、逮捕されよ、敵地に入って、調べよと、むちゃくちゃ言っているのだ。まあ、かの名高い007が、悪の組織の基地に乗り込むようなことである。真ん中に落ちよう、は、助かるなんて思うな、と、言い放っているわけ。

 

 ひどい話だ。


 『久しぶりに、戦争になるかな。ぼくの役割は、事実上無くなった。』


 ぼくは、つぶやいた。


 ぼくは、自分の中では、町村間戦争になることを、防ごうと、考えていたからである。


 




 

 

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