『ざ、すぱい』 中の17
『きみは、すでにかなり知っているんだろうが、あそこは、立ち入り禁止だ。村が禁じている。』
『はい。せんせい。しかし、その権限をお持ちなのは、先生ではないでしょうか。』
『ほう? どこから、聞いた。』
ぼくは、手持ちバッグから、よつおりにした文書を引っ張り出した。
『先生も、ご存知かもしれませんが、先ごろ、町内で出回った怪文書です、実物です。ぼくは、もう一枚持ってますから、よろしければ、差し上げます。』
『なに、怪文書とな。どれどれ。ふうん。』
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『東村、恐怖の実態』
町民の皆さんは、となりの東村に関して、どの程度、ご存知であろうか。
古い方は、ある程度お分かりだろうが、他地域から入ってきた方や、若い方はご承知ではないかもしれない。
東村は、まさに、恐怖の村であります。
それには、長い歴史がある。
我が町は、江戸時代の初期にあっては、東村に属していた時期もあったことが分かっておりますが、中期には、分離しておりました。
維新以降は、ひたすら、我が町が先行して発展したのでありますが、それには、東村にある『入れずの森』が、少なからず影響しています。
この、『入れずの森』には、封印された資源が眠っているとされます。
それが、何なのかは、あまりはっきりしません。
金ではないか、とも、銀ではないか、とも言われます。
江戸時代中期に、とある一団が、開発に入り、その資源を見つけたとも言われます。
しかし、その一団は、だれひとりとして、生きては出てこなかったとされます。
ある、秘密の組織により、抹殺されたとも言われる。
今でも、深い森の奥には、その埋葬された塚が残り、怨念が渦巻いているため、誰も寄せ付けない。もし、入れば、祟りがあるとも言われます。
今も、その、謎の秘密組織が、供養をしながらも、秘密の資源を守っているとも。
なぜ、資源開発しないのか?
それは、高品質のウランであるとも言われます。
ここからが、問題です。
かつて、連邦政府は、全国内の原発用の天然ウランを探しまわり、いくつかの候補地を見つけました。
自治体とともに、採掘や、濃縮工場も試験運用したが、コストが高くつき、海外から買った方がはるかに安くつくようになったため、その事業は続きませんでした。しかし、未だに、負の遺産を抱えている地域もあるらしくも聞きます。
しかし、東村には、そうした話がありませんでした。
だから、ウランは、ないはずです。
しかし、ここにきて、東村の恐ろしい陰謀が疑われているのです。核兵器の製造疑惑です。
そうして、その、未だに正体の分からない秘密組織なるものの存在です。
秘密組織と言っても、村の人口は、限られています。
かなりの村人が、なんらかの関係があると思われます。
その元締めが、それなりの地位にあることは疑う余地がなく、たとえば、学校の長であるとか、村の施設の長であるとか、と、考えられますし、これは、かなり、確度の高い話です。そのひとは、我が町の高校に在職した人でもあると。村人は、その人物には逆らえないと。そこに現れたのが、中央政府に深いつながりがある、新村長であります。
この、続きは、また、次回。
…………………
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『ほー、ほほほほほ。これはまた、まさしく、怪文書ですな。いや、怪文書にもならない。荒唐無稽。オカルトにも、ならない。いったい、誰が書いたのですか? まさか、きみではないよな。』
『はっきりはしません。しかし、町長派の人だろうとは言われます。が、もしかしたら、反対派の活動かもしれない、とも。ぼくではないですよ。こんなこと、あほらしくて、やりません。町長さんも、批判の声明を出しました。反対派の代表も、同様の批判声明を出しましたし。もしかしたら、東村から、出たのではないか。とも、言われますが、他地域からの、町と村を分断させようとする謀略ではないかとも。ぼくは、意外にその線もないとは言えないとは思います。でも、ぼくは、これは、どっちにしろ、町と、村の友好関係を引き裂こうと言う意図があるとみます。それは、間違いですが、それでも、なんらかの疑問を持つ町民もでるでしょう。町長も、そのまま、ほってはおけないと、境界部に配置する町の兵士を、増やしています。ぼくは、もちろん、批判的です。まあ、通行は、いまだ自由のままですから、具体的な問題にはなっていません。しかし、そもそも、『入れずの森』を、秘密にしすぎているのではないかと。もう、ある程度、公開すべきですよ。と、いうわけなんです。せんせい。』
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