『ざ、すぱい』 中の15


 ぼくは、お手洗いにゆき、やどの裏庭に面した、いわゆる縁側に出た。


 半月が美しい。


 あまり、手入れの良くない、やや、寂れた庭が、ものの哀れを感じさせる。


 むかしは、かなりの財産家だったに違いない。


 それも、すでに、盛りは過ぎたが、しかし、まだしたたかに、生き残っている。


 そんな、感じだ。


 そこには、我が町のすぱいさんがいた。


 『おや。』


 『ども、お初です。』


 『村長は、ご機嫌だね。』


 『悪い人ではないような。超兵器の製造を目論んでもいないような。ただ、謎はあるみたいです。もう少し、探ります。』


 『うん。いや、ぼくも、そう感じたね。悪人には見えない。校長先生に、この後会ってみる。きみは、気に入られてるようだ。』


 『そっちが、より、問題みたい。あの人は、なかなか懐が深いよ。気をつけてね。あ、村長は、もう、帰ります。またね。』


 携帯電話に、何かの信号が来て、彼女は、さっさと居なくなった。


 確かに、あの村長に対するイメージは、お互いに悪くなかったのだ。


 もちろん、政治家は、特に沢山の顔があるものだが、第一印象は、意外に嘘はつかない。


 しかし、それでも、あの村長には、何かが秘められているとみた。


 わが、町長が疑うような意味とは、たぶん、違う意味でだが。


 校長先生が、雰囲気、一番の問題にみえる。



        🌓   🍡





 

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