『ざ、すぱい』 中の13


 『まあ、お気になされずに、気楽に出てください。』


 やどの主は、あっさりと言った。


 『なにか、機会がないと、宴会なんてできないからね。1週間以上の、泊まりのお客様があると、開くんです。ある種の、数少ない楽しみですよ。お客様は、食事込みの宿だい払ってるんだし、参加者は、自分持ち。村長も、当然自費。 いち村民としての参加だから、選挙演説なんかは禁止。はははははははは。それに、あなたにとっては、情報収集の良い機会でしょう。』


 それは、確かにそうだ。


 もちろん、歴史などに、詳しい人が来るとは限らないが、また聞き情報だって、役に立つことがある。


 もしかして、オカルト的な話しにも、なんらかの意外な根拠が、潜んでいたりもする。


 ただ、森のはなしが出来るかどうかは、微妙だが、昔のようなことはないかもしれない。


 だいたい、そうした歓迎会を開いてくださること自体が、かつては、聞いたことがなく、


新時代の象徴かもしれない。


 『村長は、ちょっと挨拶したら、たぶん、すぐ帰りますがね。』


 増して、 村長に挨拶しておくのは、村のなかで活動するのには、もちろん、悪くない。


 ちょっと関心があるのは、あの彼女が、来るかどうかである。



        🍛


 歓迎会の時間まで、ぼくは、自室で衛星テレビを見ていた。


 便利な時代にはなったものだ。


 情報という点だけから言えば、都会と大差ないだろう。


 インターネットも、ちゃんと接続できた。


 ニュース番組では、いささか気になる話が出ていた。


 今日の地震のはなしである。


 大学の研究者さんによると、お隣の県にある活断層の動きが、活発化してきているかもしれないというのである。


 昔の資料からすると、このあたりの地震は、群発地震になることがある。


 しかも、たまに、大きめの直下型地震につながる傾向があるんだそうだ。


 ただし、人生のなかで、直に出会うケースは少ないんだとか。


 大体、250年から300年くらいの、周期らしい。


 前回は、ちょうど、入れずの森事件があった時期に重なるらしいことに、ぼくは、やっと気がついた。



         


 


 


 

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