『ざ、すぱい』 中の10
つまり、地震である。
いわゆる、『噴火口』からは、大分入り口寄りまで戻っていた。
最近のことだから、まずは、スマホが叫んだ。
『地震が来ます。大きな揺れに注意。』
『ありゃ。ゆっくり出ましょうか。』
影山さんが、ぼくの背中を押した。
とはいえ、足元が悪い。
そんなに、早くは危なくて動けない。
そもそも、もう、歳であるからして。
しかし、それは、影山氏も同じであるが、彼は歩きなれている。
が、地震は、早い。わりに、近隣が震源だったから、揺れはすぐに来た。しかも、わりに大きいぞ。
体感的には、震度4以上だと思ったが、もちろん、はっきりしない。
まして、洞窟の中で、地震に出会うのは、初めてだ。
『良く揺れますね。この洞窟は、多分大丈夫です。でも、これは、待ちましょう。収まるまで。あの、噴火口は、あぶないけどね。』
『あ、はい。』
影山さんがそういうなら、それが一番だろう。
しかし、言わんこっちゃない。
『噴火口』がわから、どんがらがっちゃー。
と轟音がして、猛烈な煙が来た。
『ありまあ。』
影山氏が、呆れたように言った。
『長い間、壊れないで、持っていたのにな。しかし、あぶなかった。』
揺れは、結構長かったが、とにかく、座り込んでいたあたりは、無事だった。
『出ましょう。慎重に。まだ、揺れるかも。』
ぼくたちは、階段までたどり着いた。
すると、なんと、例の扉が開いていたのである。
影山さんが、うなった。
『む。振動で開きますかいな。鍵もしていた。いや、ほっといて、上がりましょう。くわばらくわばら。』
あたりを、確かめる間もなく、影山さんが、ぼくを押し上げようとする。
しかたがない。
地上に上がる階段が、あたかも、天国の階段くらいに、長く思えた。
それでも、とにかく、無事に地上に出たのである。
不思議なことに、入り口の蓋は、開いたままになっている。
『たしか、締めたよな。』
と、ぼくは、思った。
上がったとたんに、また、揺れが来た。
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