『ざ、すぱい』 中の8


 『あ、ここ。これ。みてください。』


 影山さんが、圧し殺したように言った。


 『ほら。ね。』


 その指差す方をみれば、なにやら、あやしい、虫さんがいた。


 『【東村めなしヒトクイごき】、です。ここにしかいないです。というか、入れずの森の地下にはたぶん、たくさんいると言われます。視覚器官は、退化しています。かわりに、ちょっと不気味な牙があります。』


 『なんだか、名前、怖いですね。』


 『はい。いっぴき、にひき、では、問題ありません。こいつが、大量に集まると、人でも、食い殺す事があると言われます。かつて、開墾に入った人たちが、そうなった気の毒な仲間を見た、と、伝わります。伝説に過ぎませんが。じつは、そのときの被害者の骨格が、入れずの森神社の奥の宮に保存されているとのことです。非公開なので、見た人は少ないです。噂では、新村長は、見た。と、か。』


 『なんか、うそっぽくも、ほんとうっぽくも、両方ですね。』


 『まあ、そですなあ。この虫、、、あ、いなくなりましたが、ほとんど、研究されてないんですよ。』


 『あらま。』


 『学者さまが、飛び付きそうなのにね。村の条例で、持ち出し禁止ですから。明治時代に名前が確定しましたが、当時は、むし、にちかかったらしい。ははははははは。😅 え、また、村立中学の理科の先生が、戦後すぐに、ごたごたに紛れて調べたことがあります。博物館に資料があります。』


 『ふうん。それは、見たいな。』


 『公開されてますから、できます。』


     

          🦗


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る