『ざ、すぱい』 中の7
これは、いわゆる、整備された観光洞窟ではない。
足元は悪いし、頭はガンガン打ちそうになるし、狭いし。
『ご存じのように、これは、かつて、溶岩が流れた跡と言われてきましたが、最近は、実は、ガスがたまって、上側の溶岩を持ち上げたんじゃないかと言われるようになりました。』
『いつ頃のものですか?』
『ざっと、20万年位前とされます。こっちがわには、100メートルばかりは入れます。その先は、水没していたり、底に向かった穴があったりしますが、危ないので行けません。』
『この、反対側は、人工的に蓋してありますが?』
『はあ。この先は、入れずの森、につながっていると言われます。昔から、禁足地になってまして、こうして閉じたままです。知られている限り、入った人の話しはありません。』
『はあ。でも、この扉は、割合、新しいような。』
『そうです。戦後になって、作り直されと聞きます。神社組合長は、あ、あたしの従兄弟なんですがな、なんらかの由来をしっているようですが、口を割りません。しゃべっちまえ、と、あたしなんか宴会とかで、言いますが、なかなか、神仏に関することは、難しいようです。祟りとか、ははは。え、こっち。』
『はいはい。』
しかし、ぼくは気が付いたが、その分厚そうな扉は、いつも閉まったままではなかったようだ。
上側のはしっこに、小さいが、擦ったような円形の跡が、複数ある。
扉を回転させたに違いない。何度もだ。
とは言え、取ってのようなものは見当たらなかった。
ならば、中から開けたのかもしれない。
微かに、錆がついている。
設置時に動かしたものではないだろう。
ガイドの影山さまは、気づいたのかどうかはわからないが、知らん顔で先に進んだ。
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