『ざ、すぱい』 中の6
調べたガイドさんに電話すると、今すぐならお付き合いしますとの返事なので、ぼくは自動車で現場に出掛けた。
交通量は、ほとんど、ぜろ。
人影もほとんど、ない。
しかし、必ずや、誰かに見られているのは、まず間違いない。
すぱいには、非常に活動しにくい場所なのだ。
その見学ができる洞窟は、『入れずの森』の外にある。
ある種の荒野みたいな場所で、でこぼこの大地に、疎らな木々。
少し離れた所には、深い森の影が見えている。
住宅地にも、畑にもなりそうにないが はるかな過去には、ここに小型の火山があった。
反対側を見ると、一部に住宅が何軒か固まっている場所がある。
指定された落ち合い場所は、意外にすぐにわかった。
村の教育委員会がかつて建てた柱が、目印である。
『火口跡洞窟』
と、墨で書いたような、消えかけの文字が浮かんでいる。
そこには、コンクリートの囲いがあって、上部は鉄板で蓋がされていて、鍵が掛けられている。
ヘルメットを被った、にこにこした、小さめなおじさんが立って待っていてくれていた。
つまり、かなり近くに住んでいるに違いない。
『ども、この度は、ご訪問、ありがとさんです。ガイドの影山です。』
人の良さそうなおじさんが、精一杯歓迎してくれた。
『ヘルメット、よろしく。内部は、照明を入れますが、薄暗いのでご注意を。足元は、ガタガタしますので、また、あたまがひっかかる場所があるので、これまた、ご注意を。さらに、ロープに沿って進んで行きます。分かれ道が在りますが、入り込むと帰れなくなります。ははは。では。こちらへ。』
影山さんは、鍵を外して、重たそうな蓋を開けた。
中には、急な階段がある。
『おしりを上にして、降ります。梯子の要領です。』
そう言いながら、影山さんは、さっさと降りる。
ぼくは、梯子が苦手である。
幸い、下の地面はすぐそこだった。
内部から、影山さんが紐をひっぱると、蓋が閉まった。
暗いな。
影山さんが、懐中電灯で照らして、蓋のついた箱の中のスイッチを入れると、洞窟内にさっと灯が入った。
🕯️
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