『ざ、すぱい』 中の4


 村の神社組合の長で、校長先生で、という人物は何者なのか。


 それは、許されることなのか?


 ネットという便利なものがあるので、調べてみようと思った。


 ただ、大都市ならいざ知らず、国内でもまったく知られていない小さな村の、そこまでの情報があるだろうか。


 まず、村のホームページがある。


 それは、分かっていたが、校長先生の名前までは見た覚えがない。


 確かめてみたが、やはり、見当たらない。


 まてまて、もしかしたら、学校や、博物館の、ホームページがあるかもしれない。


 と、思って検索したら、なんと、博物館のホームページがあるではないか。


 やはり、くじらの骨が効いているようだ。

   

 そうして、しっかり、校長先生が自ら書いた、東村の歴史、という記事があった。


 もちろん、署名入りである。


 玉子浦 克子。


 なんと、たまごのうらかつこ。


 いや、そうではない。


 このお名前、忘れるものか。


 これは、多分、かつちか、と読むのである。


 まごうことなき、我が高校時代の歴史の教師である。


 こうした名前は、そう有るわけではないだろう。


 当時は、まだ、若かった。どこから、小中学校に回ったのか分からないが、たぶん、そうに違いない。写真を見れば、まさに、その通りである。


 なかなか、異色の先生だったのである。


 自ら、金づちや、方位計や、巻き尺や、ルーペを携えて、あちこち歩き回っていた。


 玉子浦先生は、岩石や地質に詳しかった。


 遥かな昔、西町から東村あたりには、カルデラがあったと、先生は言っていたが、それは、コールドロンと呼ばれるのだそうだ。


 もはや、明確な地形がないため、証明しずらいのだと言っていた。


 歴史の先生というよりは、地学の先生に

ちかい感じだが、教える教科は歴史だった。


 ぼくは、歴史研究クラブに所属していて、西町の町誌などを片っ端から読んで、城跡や出城跡、遺跡などを歩いて回った。


 先生は、その顧問でもあったのである。


 


 

 


 


 


 


 

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