『ざ、すぱい』 中の3


 ぼくが、担当さんと窓際の小さな応接セットで話をしていると、向こう側の村長室から、件の村長さんが現れた、背が高く、がっしりしていながら、すらっとした、スポーツ選手みたいな、非常に魅力的な人だ。ぼくが最も苦手とするタイプである。さらに、もっと体の大きな西洋人とおぼしき方々が3人取り巻いている。


 その後ろから、鞄を下げて歩いているのは、間違いなく、わが町の情報員さんである。


 まるで、秘書のような扱いに見える。


 『あれは、村長さんれすか?』


 『はい。そうです。格好いいでしょう? 最近、村のおばあちゃんからも、人気です。


 『あの女性は、秘書さん?』


 『あのかたは、アルバイトの方ですが、外国語が得意なんです。たぶん、今日はアリメカ共和国の方と、森林開発について話し合いがあると聴いていますから、実地見聞でしょ。』


 『なる。なかなか、多彩ですな。』


 『たいへん、多才な方です。はい。』


 ホテルがない南村に、宿泊はできないよな。県の担当が付いてきてるはずだな。アリメカ共和国は、核弾頭を大量に持っている、正規の核保有大国だよな。ま、核は関係ないかも。


 色々思いながら、一応、気に止めておくことにした。


 なにより、村長さんの近影を拝めたのは有難い。


 ぼくは、村役場から出て、例の古文書を見に村立博物館に向かったのである。


 

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