第5話
「あの力は俺にとっては今はまぁ重宝しているが、由貴はどうだ」
「実に無駄な能力、東京で1人だと実に無駄すぎて」
「そんなこと言ったら天狗様から怒られるぞ……」
「だってみえて、惹きつけるだけでそれでおどろいておしまいだ。お前は倒せるからまだいい」
「だからあのとき一緒にいようって言ったのに。お前だけ東京いっちまった」
二人の喧嘩はまた始まった。
「コウがアホだから大学落ちて実家の居酒屋やるしかなかっただろ」
「アホじゃない、たまたまだよ。だったらお前も俺が大学落ちたら一緒にいたいから東京行かず残りますーって言えば済んだ話なんだけど」
「一緒にアホになりたくない……」
天狗様に命と能力をもらった2人はその後、幽霊がみえたり心霊現象を体感したりとにかく嫌な能力をもらってしまったものだと思いながらも二人過ごしてきた。
しかし進学、という人生の岐路、運命の悪戯で離れ離れになった。
そうすると能力はそれぞれ中途半端な成果しか出なかった。由貴はただ幽霊をみえるだけ、コウは金儲けのために使ってはいるもののなかなかこれだけは生活できるものではない。
30過ぎた2人、こうして偶然再会をした。
「これからはうまくこの能力を使って生活しよう」
「おおう……うまくいくかどうかわからないけど使わないと勿体無いな。では再会に乾杯」
「ってお前いつの間にビールたのんでる?!」
「だって雨降ってるからちょっと飲もうと……くはぁ~久しぶりのビール!!」
と由貴はぐびぐびっと久しぶりに飲むビールに感動する。
「このやろ、調子に乗りやがって」
またまた喧嘩が始まろうとしているが2人、目が合うと笑ってしまった。
「さて、まずはお前の肩に乗ってる幽霊除霊から始めるか」
「……て、どう除霊するの? なんとかしてくれよ。さっきから重くて気になって仕方なかった」
「てか今までどうしてたんだよ。それに平気で杏仁豆腐にビールいったなぁ。たく、こんなんだからお前は……俺がいないとダメだな」
「お前もな」
由貴の肩には真っ赤なヒールを履いた脚だけの女性の幽霊が乗っている。
「それよしか目の前の自殺したっぽい見習いアルバイトの幽霊でもいいんじゃない?」
「湯切りずっとしてる。うるさくて仕方ない。なぁ、コウ。どっちが撮り高いいと思う?」
「さぁ、お前のリアクション次第」
「また僕の間抜けな姿撮られるんだ……」
2人は笑った。
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