第21話 12月18日 木曜日 C3

 これはダンジョン内で森を見つけた日。ダンジョンから戻り町を歩いていた時の事だ。


「——聞いたか?あいつ。骸骨に真っ二つにされてやり直しだと」


 槍を持った男性を中心にした3人のプレイや―の話し声が俺達に聞こえてきた。パーティというより。偶然話しているという感じだった。


「マジか。こっちの仲間は罠にはまってお陀仏よ」

「気が付きにくい罠。意地悪な罠多いよな」

「まあそれはそれで面白いがな」

「でも良い武器ゲットしたりしてのやり直しは――萎えるぞ。地味に5層あたりからしんどいし」

「無理に深いところ突っ込まなければい良いんじゃないか?」

「それもそうだが。アイテム探すなら隅々まであろ?」

「あー、それもそうか、わかりやすいところにいいアイテムがあるわけないもんな」


 たまたまそんな会話を聞いた俺達。すると俺の横に居た湖奈が心配そうに話しかけてきた。


「……骸骨とかいるんですか?それは――怖いですね」

「ちょくちょく、やり直しの話聞く確率が上がって来たな」


 ちなみにゲームオーバー。やり直しになったという話は。今聞いただけではなく。ちょくちょく聞こえてくる会話で聞くようになってきた。それだけ深くに潜っている人も居るということだと思うが――いや、もしかしたら、ソロだと浅い階層でも――か。ゴブリンに囲まれたらだからな。


「骸骨くらいならオレは死なないけどな。余裕で粉々よ」


 俺と湖奈が話していると、新品の大剣を見ながら文がつぶやいてきた。


「——なら文先輩試しに一度1人でどうぞ」


 するとダンジョンへと指差す湖奈。ははは。ホントこの2人は――である。


「何でだよ。もし攻撃食らったらどうするんだよ」

「余裕なんですよね?」


 ニヤッとする湖奈。


「斗真ー」

「こっち話を振るな」

「いやいや、オレも死にたくないし。せっかくさっき剣も強化してさらに大きな大剣になったのによ。これ結構アイテム使ったんだぞ?」


 そう言いながら新品の大剣を見せてくるブン。大きな剣で重さだけで切れそうだ。そもそもよく持てるな――って、だから何で文はそんなにレベルが上がるのが早いんだよ。って、まあソロだからか。

 俺達と一緒に動いては居るが。少し経験値の差だろう――やっぱり少しずつ差が開いているらしい。レベルが上がれば強い武器を持てる――というわけでもないと思うが。でもレベルが上がるということはそれだけモンスターを倒しているのでアイテムもあり。買えるからな。それにわからないくらいとでも言うのか。馬鹿みたいに大きな武器を使う人もいたから――武器は扱えるように調整がゲーム内であるような……と思っている俺だった。


 ちなみに俺と湖奈も強化はしている。杖の強化をすることで魔法の攻撃力が上がっており。コナはヒールのレベルも上げている。回復までが早くなったな。そして俺は新たにファイヤーボールも得ている。電気だけより。ということで覚えることが出来た火の攻撃を得ていた。


「まあ少し武器強化したくらいじゃこの先つらいだろうし。さらにレベル上げ。モンスター倒して、アイテムとかを――だな。今は強化に使ってかなり減ったし」


 アイテムボックスを見つつ俺が言うと。


「ですね。でも斗真先輩の体力管理はまかせてください、この新しいヒールは回復量1.5倍みたいですから」


 自分のステータスを見せつつ湖奈が言ってきた。どうやら。攻撃屋装備のところには強化や新しくすると。効果が書かれているものもあるらしい。そういえば俺装備は変えていない。次は新しい装備。ローブもいろいろあるみたいだったので、そっちを変えてみると何か効果があるのかも知れない。


「ってか、湖奈。自分自身も回復しろよ?攻撃受けないことも無いんだし。我慢とかするなよ?」

「それは――斗真先輩が見ていてくれれば……回復薬常備お願いします」

「えっ?」


――おい、湖奈よ。何をもじもじしてるんだよ。って、なんで自分で回復できるのに俺が?


「いや、俺回復技ないからな?」

「そこは、アイテムを使ってくれれば――ですよ」


 どうもさっきから様子のおかしい湖奈。何で恥ずかしがってるのだろうか?まあ――予想は出来ているのだが――いや、湖奈の事はわかっているつもりなのでね。ぶっ飛ぶこともある奴なんだよ。


「まあ――ヤバいときはしてやるが」

「やったー。じゃ、口移しでお願いします!」

「何となく予想はしていたが。回復薬そのまま口に突っ込んどくよ」

「えー、酷いです斗真先輩経由ならそれこそ勝手に回復量2倍――とか?」

「ないから」

「ありますよー」


何を俺達は話しているのだろうか。と思っていると。文が呆れつつ話しけて来た。


「おい、イチャイチャ2人やめろ。ってか、斗真。ガチで楓夕ふゆが怒っているんじゃないか?自分の居ないところで後輩とイチャイチャする彼氏ってな。あー、知らない知らない。オレは知らないからな?」


 一時期は全く触れないように気を使っている感じだったが。最近はちょくちょく文が楓夕の名前を出してくる。慣れさそうとしているのか。いや、俺はもう大丈夫なんだがな。


「だから付き合ってないから。あと――楓夕ならこんなやり取り笑ってるよ」

「あー、相変わらず馬鹿ップル。からの――2番ー」

「ほう、船津先輩。死にたいと」


 杖をさりげなく手に取る湖奈。攻撃いつでも可能だな。ってこんなところで攻撃をするなである。


「湖奈。攻撃準備をするな」

「斗真先輩。止めないでくださいよ」

「無駄なことはやめろって」

「むー。だって――原因作っ」


 すると湖奈が少し興奮したのか。あまり触れない過去の事に触れようとしたので。


「湖奈!それは言うな!」


 文を見つつ――だった湖奈をちょっと強めに制止した俺だった。

 過去は――過去。無駄に掘り返すものではない。

 

 掘り返したところで何も変わらないのだ。

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