第16話 12月16日 火曜日 C2
「——だから何でそんなにお前たちはハモれるんだよ!」
湖奈と話していると突然文の声が聞こえてきた。と思い声の方。後ろを見ると。文が呆れつつ立っていた。
「船津先輩。来るの早いですよー」
ちなみに俺と同じく後ろを振り向いた湖奈は即文句だった。
「何で急いで来たら怒られるんだよ?」
「まだ私の近況報告を斗真先輩に出来てないんですけどー」
「知るか。そんなの湖奈は成績優秀スポーツはポンコツです。でいいだろ?」
「ちょっと待ってください!スポーツも最近はそこそこですからね?」
「そこそこだろ?オレには勝てない」
「体育は実技テストで満点取れないだけで、基本A評価ですよ!それに総合評価なら余裕で私の勝ちです」
会って早々言い争いを始める湖奈と文。喧嘩するほど仲が良いというのかもしれないが。この2人は当てはまらない気がする。俺はそんなことを思いつつも。1つ気になることがありつぶやいた。
「——湖奈すごいな」
「えっ?」
俺がつぶやくと湖奈が驚いた表情をして俺を見てきた。
「いや、ホント全ての科目でトップに――じゃないかと思ってな。中学の時が嘘みたいだなー。と」
「あっ。いや――まだ成績のオール満点はもちろん無いですよ?体育が邪魔で……でも総合得点ならずっと1位です」
「——すげー。マジすごいわ。頑張ってるな湖奈」
「わふっ――」
ポンポンといつもの癖で湖奈の頭を軽く叩くと湖奈から声が漏れた。いや、マジであの湖奈が高校では常にトップを――ってマジですごいことだからな。みんな褒めてやってくれなんだから。めっちゃ湖奈頑張ってるかな。
すると、今度は文が呆れるようにつぶやいた。
「——この化け物を作ったのは斗真だろうが。馬鹿が化け物作ったか」
「待て待て。これは湖奈の頑張りだろ?」
「いや、斗真の教育方法が悪い」
「何でだよ!」
「まあ、馬鹿が家庭教師なんてしたら教え子も馬鹿になるか」
やれやれと何か言い出す馬鹿。もちろん俺の隣には殺意――の視線のお方が居る。
「——斗真先輩。この馬鹿先輩を即爆破したいです。爆弾とかないですかね?アイテムショップに売ってますかね?そうですよ。爆弾ならペナルティーないんじゃないですか?」
「爆弾は――あるかもな。ちょっと探してみるか。まあペナルティーはあるだろうが」
「待て待て、お前ら。自分の強化に集めた素材は使え!って、ガチで考えてるだろお前ら」
「「考えてる」」
「馬鹿か!っか、湖奈さっきまた馬鹿言っただろ?オレ先輩だからな?」
「言ってませんよ?
「全く違うこと言ってるからな!?斗真。教育がなってないぞ?この馬鹿」
「むー」
馬鹿と言われ文を睨む湖奈。って――俺達マジで何をしているのか……。
「知らん。っか、湖奈は頑張りすぎなくらい頑張ってるよ」
「——斗真先輩に褒められたら私オール満点狙えるかもです」
「マジで湖奈。変わったな」
「斗真先輩のおかげですね。そうです。斗真先輩。体育も教えてくださいよ」
「いや、体育って――」
「湖奈。保健体育ならオレに任せろ」
無駄に会話に入ってく文。が――もちろん即。
「黙れ」
凍り付くような声が湖奈から聞こえてきた。
「「こわっ―」」
俺と文の声がハモったところで、このままここで話していると攻略が全く進まないので来た意味がないということで俺達は移動を開始した。
なお、もう言わなくてもわかっていると思うが。その後しばらく湖奈は文を完全無視したのだった。
「ってか。文。今日大学居たか?」
ダンジョンへと移動中、俺は昨日、今日と大学内で見かけなかった奴に事実確認をしていた。
「あー、今週は自主休講だ。忙しくてな。大学まで手が回らない」
「——留年確定か。ってか、大学まで手が回らないとか、意味わからないこと言ってるぞ?」
「それは問題ない。オレ天才だし。大学の勉強もちょちょいのちょい!で何とかなる」
「「……馬鹿の間違えでしょ」」
文の言葉に俺がつぶやこうとしたら。湖奈の声まで重なって来た。
「だから何で2人はそんなに息ぴったりなんだ?オレをいじめるために口裏合わせしてないか?してるだろ?」
「とりあえず」
湖奈は文とは話しする気がありません。と言った感じだったので、俺は話を変えることにした。
「おい、オレの話を聞け」
「却下」
「何でだよ!」
先ほどの話に関しては、強制終了となってしまうが。とにかく本人が言っていたので、本当に今週の文は大学を自主休講らしい。ってか――あいつ、ゲームにハマっていて、昨日とか俺と湖奈がいない時は、
「とりあえず――話していてもレベルは上がらないし経験値もたまらないしな。今日も頑張るか」
「話してきたのは斗真なのに無理矢理話を終わらすなよ」
文からのクレームがあったそれはスルーだ。
「斗真先輩。今日もやっちゃいましょう」
湖奈も俺の方に話を合わせてくれている。さすが湖奈。良くわかっている。
「湖奈も斗真ばかりに付くなー。たまにはオレともさ」
「嫌です」
「即答ー」
「私は斗真先輩にしか付きませんよ?」
「——2番手——」
バシン!
「ぐはっ!」
何か余計なことを文は言ったのかついに湖奈の攻撃に出た。パンチ。はたくなので――ペナルティーには……多分殺さない限り大丈夫だろうからな。じゃれていると判断されるであろう。
「……はぁ。何でダンジョン前から仲間同士で体力削ってるんだか」
俺が呆れていると。
「斗真先輩。これは付いてきているだけです。捨てましょう」
湖奈が文を指差しつつそんな提案をしてきた。どうやら本当に文は湖奈の逆鱗に触れたのだろうか?笑顔なのに目がマジだった。捨てよう。と、目が訴えてきていた。
「……やばー、文。湖奈が笑顔だけど怖いぞ。どうするんだよこれ」
男が文の方につぶやくと。攻撃を受けた分は――。
「オレ——体力半分もっていかれた――怖すぎるこの後輩。斗真しっかり首輪しとけ」
背中をさすりつつそんなことを言ってきた。って、それにまた湖奈が反応して――。
「斗真先輩に首輪付けてもらえるなら私は喜びますよ?」
「——会話がおかしいぞ。ここ」
俺達何を話しているんだろうな。それに仲間内?というか友人?同士で体力削ってるし。謎すぎる。まあ周りのプレイヤーはあまり気にしてないと思うが。
そんな感じで、今日は何故かダンジョンに潜る前から文の体力が減っていたみたいだが、それは文なので大丈夫だろう。
ということで、俺たちはいろいろ初めからありつつも今日もダンジョンへ。って――あれ?文の奴いつの間にか剣を持ってるが――?この前買っていたっけ?まあいいか。さすがに素手は痛かったんだろうな。スライム相手でも。
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