第14話 12月14日 日曜日 C2

 ちょっと待て、ちょっと待て、今湖奈から、あまり聞いてはいけない言葉を聞いた気がする。そしてこれは事実だと――なので俺は湖奈を守りつつ。


「……おい、文。まさか」

「ちょ待て待て、何もしてないからな?マジでマジで。オレには未羅先輩が居るんだからな」


 するとさすがに慌てる文。この様子からして――湖奈が勝手に言ってるということはすぐにわかったが。もしがあるので――とりあえずそのまま。


「斗真先輩。しくしく――」


 いやいや。バレバレの嘘泣きが後ろから聞こえるのですが――。


「湖奈もいきなり無茶苦茶な事言うなよ。未羅に知られたら嘘でもボコボコにされるわ」

「——されたらいいのに」


 怖い怖い。今日もこの2人は仲悪しらしい。


「湖奈?本当に大丈夫か?」


俺は一応確認しておく。


「——はい。まあ近いことはされたので――」

「……文」


 再度文を見る俺。


「してないから。してないぞ?」


 これはわからない。ちょっとしたことならこいつ偶然を装いしそうだからな。


「……」

「何で信じないんだよ。幼馴染を信じられないのか?」

「「馬鹿は何かやらかす」」

「だからハモるな!あとお前らも相当な馬鹿だからな?」

「斗真先輩は馬鹿なんじゃないです。ちょっとヤバいだけです」


 ——あれ?湖奈?


「——湖奈。それフォロー?」

「てへっ?」


 あれ?俺湖奈にヤバい奴と思われるようなことしたかな?勉強を教えるのに必死にいろいろした気がするが――あれでヤバい奴にはならないと思うし。それこそ楓夕で試し済みだったし――うーん。でも湖奈は怒っている感じもなく。むしろニコニコ――あっ、なるほど、俺いじられただけか。


「はぁ……ってか、ダンジョン進まないか?」

「賛成です」

「まあ話していたも、2人がレベルあがらないからな。とっとと行くか付いて来いよ」


 すると何故かかっこつけて歩きだす文。もちろん湖奈が機嫌を悪くするに決まっており。


「斗真先輩。魔法の剣で切っちゃいましょうよ」

「それペナルティーだよな?」

「あー、そうですね」


 このゲーム内での情報を追加しておくと。ってか、俺ちゃんと説明読んだ。先ほど湖奈を待っている時。違和感を覚えつつも時間があったのでゲームの説明は頭に入れた。

 説明によると、このSCAWのゲーム内で他のプレイヤーを狩ることは――できる。できてしまうが。そんなことをすると、ダンジョン前のお店が全て利用できなくなり。すべての参加プレイヤーから、殺人者という表記が見えるようになるらしい。今のところその表記は見たことないがな。

 あと、法に触れることというか。殺せるということは――に、なるのかはだが。先ほどの俺と湖奈のように他のプレイヤーの身体に触ることは出来る。だからなんだ。無理矢理なんやらかしたら――というのもあるらしい。ちなみに説明に書かれていたが。女性側に強制ログアウトというものがあるらしい。身の危険を感じたら脱出可能というやつだ。男性にはないらしいが――男性にも身の危険はある気がするんだがな。今後のアップデートに期待。って、まあ現実世界でダメなことはここでも裁かれるぞ。ってやつだな。


「斗真先輩。船津先輩は放置して行きましょう」


 ほら、こうやって湖奈(女性)が俺(男性)の手を掴むこともできるんだからな。にしても、まるで現実だよ。このゲーム。ちなみにだが暖かさも感じるし。怖いくらいにリアルなんだよ。

 そんなこんなで、それから俺達はダンジョンの2層3層を攻略した。今のところは特に強化なし。初期装備で俺達は苦戦することなくモンスター相手は出来ていた。


 ちなみに2層のモンスターもスライムばかりだった。まあちょっと1層より強くなった。大きくなったという感じか。でも弱い。そして攻撃はしてこなかったので、湖奈はまた戯れようとしていた。浅い階層はしばらくチュートリアルみたいなことだろうと俺は思っている。

 そして3層はスライム相手というより。スライムも居るのだがダンジョン内に罠が多かった。スライムに気を取られると――。


 ガコッ。


「えっ?きゃああ」


 シュパン!


 俺はさっと隣を歩いていた湖奈を引き寄せる。その後弓矢が横の壁から発射された。

 どうやら今湖奈が踏んだ床がスイッチになっていたらしい。即何か起るのではないので、違和感を感じたら下がれである。


「湖奈。気をつけろ」

「いきなり弓矢が飛んでくるとかなんですか!殺す気満々じゃないですかこのゲーム。ちょっと斗真先輩に抱かれたのは嬉しいですからナイスと言ってあげますが」

「余計な事言ってないか?ってか、起動のスイッチみたいなのがいたるところにこの階層はありそうだな」


 湖奈とともに少し戻り先ほど湖奈が踏んだ床を確認する。すると俺達の後ろで――。


「おっ。こんなところに押せそうな壁が――」


 ガコッ。


 文が壁にあったくぼみを押した――いやいや馬鹿だろ。俺達の様子見てるだろうが馬鹿が誰が面白くしろと言った。


「馬鹿か!むやみに触――」


 シュパン!シュパン!


「ひゃあああ」


 再度俺と湖奈の目の前を弓矢が通過して壁に刺さった。マジで殺しに来てるよ。この罠。っか、なんで罠をわざわざ押した文の場所じゃなくて前で罠が作動するんだよ。


「おお、悪い悪い」


 起動させた本人は――明らかに楽しんでるし。


「斗真先輩。やっぱりこの人狩りましょう」

「待て待て。って――足元も警戒だからむやみに湖奈も動くな」

「洞窟内でも灯りはあるのはいいのですが、狭い場所に限られているところで罠の多さ不親切ですね」

「まあ松明とか持たなくていいだけマシだけどな。これで松明持ってとかの攻略だと何回か死んでそうだわ」


 周りを確認するとさすがにもう罠はないらしい。


「っか、弓矢より。どっかに服溶かすモンスターとかいないわけ?湖奈狙いそうな」

「——最低。1回死んでください」

「はぁ……」


 そして、余計なことを言い。視線だけで人をヤれそうな湖奈を作る馬鹿が居ましたとさ――ちなみにそんな規制がかかるようなモンスターは今のところ居ません。今居ないだけかもしれないが……。

 その後しばらく湖奈が文の話を全て無視していたのは言うまでもないか。


「マジックソード」

「ウインド」


 その後は、俺が近くに現れたスライムを退治。少し離れたところ。天井部などに居るスライムに対しては。湖奈が攻撃。その他のスライムは文が攻撃という感じで俺達はまず強化アイテムを探しつつレベル上げをした。

 ちなみに、落とし穴まで3層にはあった。落とし穴に関してはアイテムにつられた文が1人で落ちかけていたな。落とし穴は深くはないが。押した先に棘がたくさん――あれは――落ちたら一気に体力がだろう。もしかしたら即死かもだった。

 これ実はなかなか難しいゲーム?というか。初見殺しとでもいうのだろうか?レベル高すぎね?だった。まだ低階層なのに――いや、低階層だから今後もこんなことあるぞ。って、言うアピールだろうか?でもモンスターが強くなって罠まであるとか戦いにくいだろうな。だから低階層だからあると思いたいな。


 それから罠に騒ぎつつも今日のところは2層と3層を俺達3人は周り。4層へのルートを確認したのと、そこそこ強化アイテムをゲットしたため。町へと早めに戻った。それからは武器の強化などを俺達はして、結局1日目と同じくらいの時間にログアウトしたのだった。

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