第12話 12月12日 金曜日 C11
ダンジョン内。もっとスリリングなことが起こるのかと思ったが――入ってしばらく。かなり平和な時間が過ぎていた。
「斗真、見てみて、この子小さくてかわいい」
まさかの倒すべきスライムを触り遊んでいる湖奈。ちなみにスライムは攻撃をしてくるというより――俺達から逃げようとしていた。たくさん湧いてくるが。俺達と会うと、襲ってくるではなく。逃げ出すといった感じで、それを倒すだけという感じだった。
「モンスターと戯れる冒険者よ」
「そのうち変異種でも出てきて食われたらいいのにな」
湖奈を見つつ俺と文が話していると。
「ひどっ。船津先輩が食べられたらいいんですよ」
「どこまで行っても揉める2人。とりあえず経験値稼ぐんだろ?」
「そうでした。ごめ――」
「あちょうっと!」
「なっ!?」
すると、湖奈が見つけたスライムを謝りつつ倒そうとすると、隣から文が横取りをした。俺達魔術師と聖職者は攻撃を出す際に唱えるというのか。攻撃名を言わないといけない。でも文に関しては今裸。特に装備なしなので、パンチするだけ。または蹴るだけでスライム相手なら何とかなるので俺達より早く攻撃ができるので、湖奈の横から文がスライムを1体倒した。
「ちょっと、なんで横取りするんですかー」
もちろん横取りされた湖奈が抗議の声を上げている。
ちなみに1匹倒したくらいでは。経験値はまだこの階層ではそこまで多くない。でも俺達はレベルが低いため数匹倒せばレベルは着実に上がっていた。あと、俺と湖奈はパーティを組んでいるため、単独で倒すよりかは経験値が少ないが。でもどちらかが倒せばどちらにも経験値が入るらしい。
例えば文が単独で倒した時が100の経験値だとすると。俺と湖奈の場合は半分ではなく。ボーナスとかいうのがあるのか。75ずつそれぞれに入るといった感じだ。
ちなみに今は文が倒したのでブンの経験値となる。どうやらとどめを刺した人に経験値は入るみたいだ。途中で協力したとしても最後に攻撃をとどめの一撃を入れた人に入るらしい。
そうそうはじめは癒すのがメインと言っていた湖奈だが。この階層のスライムなら湖奈のウインドでも十分だった。湖奈のウインドは風を起こすのだが。その風にあたるだけでダメージがあるらしく。風にあたったスライムはどんどん消えていた。
「ふふふっ。生き残るためだ。見つけてすぐに倒さない馬鹿が悪い」
「あー、馬鹿言われました。斗真先輩ー」
「俺に回すなよ」
っか、ずっと揉めるこの2人何とかしてくれなのだが――でも、なんか懐かしい。そういえば昔もみんなで通信プレイをした時――文のハチャメチャな行動。攻略にみんな振り回されていたな。あれはあれで面白かったが。今でも文は全く変わっていないらしい。って、スライム発見。
「マジックソード」
サクッと俺は現れたスライムを退治した。これで経験値が入る。そしてモンスターを倒した際。先ほど文の時は出なかったが。一定の確率で、モンスターを倒しても強化素材。鉱石もドロップするらしい。今は俺が退治したスライムが消えた後に鉱石が落ちた。そして倒したのが俺なので、俺と湖奈のアイテムとして回収される。
今のところ体験みたいな感じだから、細かくいろいろなアイテムがあるといった感じではなかった。もしかしたら階層が深くなると、何か他にもあるのかもしれないが今のところは鉱石がメインだった。
「斗真先輩ナイスです」
「鉱石ゲットだな」
「何でオレの時は出ないんだよー」
「横取りしたからですよーだ」
俺はドロップした鉱石をアイテムボックス内で見る。ちゃんと入っている。ホント便利だよ。拾うとかではなく。勝手に入るって。すごい。
ちなみに、どうやらすべてのプレイヤーは初めからアイテムボックスを持っているらしく。頭の中で思うだけで、持っているアイテムを出し入れできるすることが出来る。あと、モンスターからのドロップ以外のアイテム。洞窟内に落ちているアイテムは手に取ってアイテムボックスを開くと入れることが出来る。
「っか、これ今日はどこまでするんだ?さっき1つ目の2層へのルートはあったが――」
周りを見つつ俺は2人に確認をする。
「だな。結構もう潜ってるよな?」
「これ時間がわからなくなるな」
「時間ならステータスに出てますよ?」
「マジか。ステータス」
湖奈に言われて確認してみると、ちゃんと出ていた。隅々まで一度ちゃんと見ないとダメだな。ちなみに現在は21時34分だった。もう2時間以上潜っているらしい。
「っか、湖奈時間大丈夫か?」
「大丈夫です」
「いやいや、帰り道危ないだろ?ってか、湖奈や文はどこからログインしてるんだ?津駅のところ?」
「——斗真先輩と同じところですよ?」
何だろう?少しだけ考える素振りをしてから湖奈が返事をしてきたが――気のせいか。実は思ったより遅くなっていて……考えている?などと俺は思いつつ。もう1人の方を見て聞いた。
「文もか?」
「ああ」
「じゃあ、そろそろ切りあげて、帰るか?湖奈も送るぞ?」
「——ホントですか?じゃあ、お願いしちゃいましょうかねー」
あれ?やっぱり何か違和感が――湖奈は嬉しそうにしているが――なんか微妙な表情をしている気がする――でもすぐに湖奈は笑顔に戻った。俺が気にしすぎなのだろうか?ちょっと引っかかることはあったが。俺はそのまま話を続けた。
「ってか、ダンジョンから戻るのはどうするんだ?もしかして歩いて戻る?」
「それはステータスのダンジョンから出るって操作でいいみたいですよ」
「そんなのあったか?ステータス……あっ、これか。表示されてるわ」
「でしょ?」
「ああ、マジでちゃんと説明みたいなの読まないとな。湖奈めっちゃ読んできてるよな?」
「そりゃ、斗真先輩の役に立たないとですから」
「俺ダメ人間役かよ」
「あっ。そういう斗真先輩もいいですね」
「嫌だよ」
「えー」
そんなことを話しながら、ステータス画面を見つつ湖奈とダンジョンの出る方法の確認する。ちなみに文はスライムを見つけたらしく。蹴飛ばしに行っていた。
「とにかくこれでOKか」
「見たいですね。そうすると、また町のところに戻って――後はSCAWセンターの入り口に入るだけです」
「なるほど」
「じゃあ、オレはレベルあがったし。お店寄ってから帰るか。2人はイチャイチャを現実でもして帰るみたいだからな。オレは消えるよ」
スライムを蹴飛ばした文はそう言いながら自身もステータスと言いつつ操作していた。
「お店って――後日でもよくないか?」
「オレは最強を目指す。イチャイチャ組に負ける気はないからな」
「「……」」
なんかまた言ってるよ。と思う俺と湖奈。言葉は交わしてないが。同じ気持ちなのは互いに視線があっただけで理解した。
「なんだよ。2人して」
「「おかしなことまた言ってるなーと」」
完璧だった。一字一句完璧。伸ばすところも完璧だった。
「ハモるなよ!イチャイチャしまくりやがって」
「さすが斗真先輩。私との相性もばっちりですね」
「はははっ……」
それから俺達はまた明後日の夜にログインすることにして一度ゲーム内から出たのだった。
ちなみに、毎回津駅まで行かないといけないのかという気持ちはあったが。でも楽しかったし。いい気分転換になりそうだから良いか。と思う俺だった。
そうそう、SCAWからログアウトする時は、SCAWセンターに入った瞬間。まるで深い眠りに落ちる感じで、目の前が真っ暗に――と言う感じだった。
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