第6話 12月12日 金曜日 C5

いきなり泣いているという謎な幼馴染(男)と合流した俺。それから少し時間が経ち。


「いやー、うまくいってよ。安心したら泣けてきたわー」


 既に文はいつも通りに戻っていた。


「……いやいや単なるゲームで。っか、文の説明が慌て過ぎで雑かったからここまで来れなかったかもしれないぞ」

「そこは斗真だから何とかすると信じていたぞ」

「無茶苦茶だ」


 幼馴染(男)に合流してから数分。俺と文はまだスタート地点に居た。

 ちなみにこのゲームに関しては、文に今少しだあ詳細を聞いた。

 どうやら今俺達が立っているのはゲームの世界に作られた。現実世界を真似た場所だとか。目を開けたときは建物の外に出た?と思ったが。よくよく見てみるとおかしかった。俺自身も周りの建物に違和感を感じていたが。そのほかにもあった。まず、車などが一切走っていなし。あと、暗い時間のはずなのに、通りの街灯しか付いておらず。その街灯も何故か1つの通りだけ。他の建物に関しては俺が先ほど思った通り真っ暗。そして、先ほど俺が入った建物だけは付いているという状況だ。

 文が言っていたが。SCAWセンターは、SCAWのゲームログアウト時に使うためだと。ログアウトするときは入った時と同じように建物に入ると――それだけでログアウトとなり。現実世界の個室へと戻るのだと。

 俺の知らない間にこんなゲームが出来ているとは驚きだし。こういうゲームが出来たらニュースになってもおかしくない気がするのだが。最近の俺ニュースなんて見てなかったかな?大学も忙しかったこともあるしな。

 そもそも文も最近こういうゲームがあるということを全く俺達に言っていなかったと思うから――たまたま見つけて、なのだろうな。

 ちなみに、どうやら文の話を聞いていると。今日誘ったのは俺のためだったらしい。なんかあやふやな感じで言うところもあったが。とりあえず最近課題課題ばかりだった俺を息抜きのために連れ出した。みたいなことを言っていた。いつも自由人の文にしては俺の事を見ていたことに驚きだった。

 そうそう言い忘れていたが。こいつ。文とは小学校中学校高校。大学と同じなんだよ。幼馴染でずっと一緒――気持悪いレベルだが――偶然とは怖いものだ。

 ——本当はここにもう1人幼馴染が居るはずだったが――って、過去を思ってもどうしようもないか。過去は帰られないからな。


 よし。過去は封印。俺は頭の中を切り替えてから、文の方を見た。


「つまりなんだ?このゲームはダンジョン攻略?ってことか?」

「まあそうだな。各県ごとにブロックが区切られていてな」

「——めっちゃ大ごとなゲームだった」


 このゲーム全国大会でも行われているのか?と思ってしまった。


「まあまあ、で、今のところは各県庁所在地のところにゲームをするための建物があってよ。これから順次増える予定なんだと」

「俺の知らないところで、ゲームが世界を飲みこもうとしていたのか」

「いや、これゲームだけじゃないからな?」

「うん?」

「入る時あっただろ?学校とか」


 文に言われてSCAWセンターに入った時の事を思い出した。


「あー、あったな。あれはなんだ?」

「あれはリモート用だ。リモートワークとかリモート授業とかあるだろ?」

「あー、あれか。つまり――遠くの学校とか。会社に行かずともさっきのSCAWセンターに行けばいいと」

「そうそう」

「昔外出制限とかが出た時に一気に広がったあれか。俺達はあまり関係なかったからどうなっているか忘れていたが」

「都市部ではかなり広がってその後も続いていたらしいぞ?ちなみに俺の聞いた話。このゲームの方がはるか前から構想があり作られていたらしいがな」

「またどこからそんな情報を」

「ハッキングしてきた」

「——犯罪者と絡みたくはないな」

「問題ない。ちゃんとバレないようにしてるしな」

「このバカは。無駄な知識は多い」

「おいおい。無駄じゃないだろ?俺が有能だったがゆえに文も今ここに居るんだから」

「——どういうことだ?」

「こっそり初回プレイヤーに入れ込んだ」

「——」


なるほど、俺は既にはめられていたらしい。こいつと居ると俺いつか捕まりそう。または――ヤバい組織に目でもつけられそうだ。


「まあ、話を戻すと、ちょうどゲームの開発が進んでいたから、あの時、この技術の一部を使って、各所が便乗した形で――だったらしく。今はその時の恩なのかは知らんが、協力者。スポンサー?かは知らんが。まあ今でも企業のリモートとかも使えるように提供しているから。いろいろな方面が資金面は融資してくれているからこんなゲームが出来たんだろうな。それに学校とかも入っているからな」

「俺全然知らなかったわ。そんなことになっているとか」

「斗真は女遊びばかりしているから周りが見えてなかったんだな」

「——それはお前だ」


 この馬鹿。勝手に何か言っているが。女遊び好きというのか。まあ女好きなのは文である。昔からすごかったからな。まあこいつ黙っていれば髪色は良く変わるが。基本イケメンに認定される奴だからな。人は寄って来ていたんだよな。って――楓夕ふゆはお前が――いや、過去の事は触れるべきではないか


「やべぇ、斗真から殺意が漏れとるぞ。やばいやばい。オレ即ゲームオーバーとか嫌だぞ?」

「……」


 多少は漏れていたかもしれない。でも――あれは俺にも原因がなので、何とも言えない。


「斗真。無視とか最上級で怖いじゃないか。今から一緒に冒険なのによ」

「馬鹿と一緒には危険すぎるから考え直そうかとな」

「馬鹿とは失礼な。オレは天才だぞ?」

「どこが?」

「それにな。馬鹿は斗真だ」

「はい?」

「そろそろ目覚めろ――馬鹿が」

「——目覚める?」

「負けを知りつつもずっとそばに居てくれるあいつに感謝。そして相手もちゃんとしてやれよ」


 文が急に意味の分からないことを言い出した。と、思うと何故か文は俺から視線を外し。横の方を見た。まるでそっちを見ろと言っているようだったので、俺が振り向こうとすると――。

 ちょうどその時。もう1人知っている声が聞こえてきた。

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