第5話 12月12日 金曜日 C4
少しの静寂のち――急に周りが賑やかになった。話し声などが急に湧いてきたかのように俺の耳に届いてくる。あと近くに人が居るのか足音や気配といった感じもした。
そして不思議なことに俺は――。
「あれ?ここは――建物の前に立ってる?何で?」
明るくなった周りを見ると、少し前に俺が入った建物の入り口。あれだ津駅からトコトコ歩いてやって来たSCAWセンターの外に俺は立っていたのだった。ちなみに周りにはそこそこの人が居た。
「あれ?俺――部屋の中に居たというか――あれ?ここは――」
ゲームの世界に自分が入るのだと思っていたが。今俺が立っているのは先ほどまで居たSCAWセンターだ。だが――周りを見ると、騎士がいたり。自分と同じ魔術師。聖職者らしき人から普通の人と。現実世界とゲームが混ざった?ような感じだった。
ちなみに上を見上げると暗かった。どうやら時間だけは同じらしい。ぱっと見は夜だ。ってか、俺が立っている場所は駅前の雰囲気がある。でも周りの建物は先ほどと違いかなり暗いというか――建物はあるのだが……使われている気配を感じないと言えばいいのだろうか?違和感というものがあった。それと比べちょうど俺の後ろになるのだがSCAWセンターは俺が建物内に入るのと同じように感じた。不思議な場所だ。
俺がそんなことを思いつつ少しその場であたりを見ていると――。
「…………斗真か?」
「うん?」
俺はどこからか声をかけられた。名前とプレイヤー名が同じなのでどちらで呼ばれているのかはわからないあ――って、普通他人の名前は見えるのか?と、俺はたまたま近くを歩いていた男性を見たが。普通に騎士というのがわかるだけで、名前などはわからなかった。
つまり今。俺を呼んだと思われるのは、俺の姿を知っている人か。って、まあ声はなんとなく聞いたことがある声だったので、そこまで考えずとも誰に声をかけられたかはわかっているんだがな。俺はそんなことを思いつつ声の方を振り返ると――。
「斗真!」
あたりだった。数メートル後ろからよく知っている奴だった。
「ああ、
後ろからやって来た文に軽く手をあげつつ俺が返事をしていると――ふと、頭の隅に違和感を覚えた。ホント小さなことだが――何か。懐かしさを感じるような不思議な感覚が――って、そんなことを思っていると。何故か文。俺の幼馴染(男)が全速力で飛んできたため。俺は身の危険を感じ無駄な思考を全て停止し。文の方を警戒した。
「斗真――斗真!!!!」
「——飛んでくるなー!」
何故なのだろうか?確か大学でもあったはずの文(男)に泣きながら飛びつかれた俺だった。ちなみに軽く交わしたため。文は躓くような感じになりつつも。何とか耐えて少し俺を通過したところで止まった。
ちなみに先に言っておくが、決して俺達に特別な関係ではない。文と俺は幼馴染いうだけだ。いきなりゲーム内?でおかしな光景を周りにさらす必要はないので俺の避けるは正しい行動だったと思われる。
「何で避けるんだよ!斗真!」
「避けるわ!っか、なんで泣いてるんだよ」
俺が呆れつつ文を見ると、文も普段と同じ姿のままで、違うところと言えば――髪色。いや、待て、文が髪色をいじりまくるのはいつもの事なのでいつも通りと言えばいつも通りか。ちなみに今は金髪だった。俺の記憶ではこの前は――あれ?何色だっけ?コロコロ変えるから覚えてないわ。そんなことを思いつつ全身を見ると。文は鎧もローブも来ていない。つまり――裸を選んだらしい。私服でやってきていた。文らしいと言えば文らしいか。
ついでに言っておくか。文。こいつは
基本馬鹿なのだがね。でもとある時に天才を出すからな。学校のテスト。試験の時はホント極端だったからな。好きな科目は毎回100点イージーミスなし。でも嫌いな科目。興味のない科目に関しては0点。ちなみに白紙で書いているわけではないが。ことごとくすべてを外していた。毎回先生らが頭を抱えていたな。ホントあれだよ。馬鹿と天才は紙一重というのか。そんな奴だ。
にしてもなんでこいつは泣いているのか。誰か説明をくれ。さすがに俺達の周りを通過していく他のプレイヤーが不思議そうな顔をして通過していくんだが――あっ、俺がいじめたとかではないからな?周りの人。勘違いするなよ?頼むぞ?いきなりゲーム内で他のプレイヤーいじめているとかで警告――あるのかな?もしかするとあるかもだから頼むぞ。流すにしても正しい情報流してくれよ。って、無理か。周りからみたら男2人。そのうち1人が何故か泣いている。普通に考えて――俺が何かした。って思われるよな……。
「はぁ……」
いきなりため息の出た俺だった。
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