第4話 12月12日 金曜日 C3

 SCAWセンターに来てからしばらく。

 いろいろわからないことや、不思議なことはあるが。とりあえず試してみようということで俺は部屋の中心にあった椅子に座り。今は座った椅子がちょうど楽にくつろげる体勢になったところだ。ゆりかごと言ったが。これはほとんど寝たような体勢と言った方がいいかもしれない。

 すると、多分頭部近くにスピーカーがあるのだろう。音声が聞こえてきた。


 『アクセサリーなどは外し。ゴーグルを装着してください。椅子をもとに戻す場合はキャンセルと言ってください――』


 一瞬キャンセルと言ってみたくなったが。いや、どんな感じに動くんだろうとね。試したくなったからだ。

 でも、今の俺は特に身に着けているアクセサリーなどは無いので、そのままゴーグルをかけてみた。ゴーグルはいろいろなケーブルが繋がっている感じでそこまで長く引っ張れるものではなかった。でも装着するには全く問題ない長さがあるので装着してみると、これはあれだ。ゴーグルと言っているが。ヘルメットに近い感じだった。頭半分が――と言う感じだったのでね。

 などと俺が思っていると目の前に表示が出てきた。


『ゲームを起動する場合は「SCAWログイン」と言ってください。終了する場合は「キャンセル」と言ってください」』


 いやマジでちょっと発展しすぎじゃないか?少し前まではテレビゲームがメインじゃんかったのか?今でもソフト売ってるよな?などと俺は再度思いつつも。


「——SCAWログイン」


俺が言うと不思議な感覚だった。今まではゴーグルに表示された文字と、その文字の先には部屋の壁。天井が見えていたが。急に全てが真っ暗となり何も見えなくなった。と思ったら。ログイン中の文字が中心に表示され。しばらくお待ちくださいという表示が出た。


 そして、また急に再度真っ暗となったと思ったら、目の前に設定画面というのだろうか?基本情報入力画面というものが出てきた。どうやらプレイヤー名。素性など初期設定を決めるらしい。操作はどうするんだ?と思っていたら――あれ?そういえばゴーグルは?という感じになっていた。

 手は自由に動かせる。頭を触ることもできる。が――ゴーグル。ヘルメットが無くなっていた。普通に自分の髪の毛を触れていた。って、あと――俺今立っていた。


周りをキョロキョロ見渡す。俺は真っ暗な空間に立っている。今光っているもの。見えるのは基本情報入力画面と。多分自分自身も光っている。俺の姿は普通に見える。ちなみに服装は椅子に横になった時のままだ。触れるし――もちろんしないが。脱ぐこともできる感じだった。


「もしかして――もうゲームの中?って、めっちゃリアル。まるで自分自身がどこかに転送されたみたいだな」


 驚きつつも俺は目の前に表示されている画面を再度見る。どうやらこれは――指で操作。タブレット端末みたいなものらしい。プレイヤー名のところを触ってみると、入力が出来るようになった。


「まあ今まで通り。前と同じでいいか」


 俺はそんなことをつぶやきながら『トマ』と入力した。これは俺が今までゲームをする時に付けていた名前だった。ちなみに、今更かもしれないが俺の名前は戸田とだ斗真とまである。っか、プレイヤー名『トマ』って、カタカナにしただけなんだがな。でも今までこれしか使ってなかったので、今回も同じにした。


 名前を決め。確定を押すと、一度設定した名前は変更できません。などの注意文などが出てきた。注意文を読んでから。さらっとしか読んでないがな。でもとりあえず目は通した。ちなみに決定した名前を変更するには初期から。データを消してからしかできないらしい。

 その後再度確定をすると画面が動いた。次は素性と出ていた。見てみると、4パターンあった。


 騎士。剣を使い攻略。

 魔術師。魔法を使い攻略。

 聖職者。仲間を回復するサポート役。

 裸。自由度が高い。


「……最後の何だろうか?まさかのすっぽんぽんスタート?って、選択肢は多くないが――あれか。裸とかいうのがあるってことは、ゲーム内でいろいろ調達できるのか?雰囲気的にはじめどうするかだけなのか?って、そもそもこのゲームが何のジャンルのゲームかわかってないが――まあ冒険みたいな感じな気がするが――バトルかな?」


 1人でいろいろ呟きつつ考える俺。

 ちなみに、どうやら選択するとお試しが出来るみたいだったので、まず騎士をタップしてみた。すると――また全てが真っ暗になり。自分の手足も見えなくなったと思ったら――少し身体が重くなった。それと同時にまた画面と自分の手足など身体が見えるようになった。


「おお。鎧だ」


 カチャカチャと身体を動かすと音がする。そして腰には――ロングソードだろうか?本当にいろいろ切れそうな剣が装備されている。あと、盾もあった。


「めっちゃリアルだ――でも、これは動きにくいか?慣れれば何だろうが――」


 俺は少し動いてから次の魔術師に設定を変えてみた。すると今度は――身軽になった。どうやら鎧からローブになったらしい。そして今度は色の設定が出来るらしく表示された。ちょっと試しに色を変えると、ローブの色が選んだ色に変わっていった。


「すげー、マジか」


 色を変更すると、本当に魔法がかかったように上からローブの色が変わっていく。スーッと変わっていくのだ。これは驚きだったな。

 ちなみに、先ほどと比べるとかなり動きやすかった。そうそうあと杖もいろいろあるのか選ぶことが出来た。


 ちなみにその後聖職者にもなってみると。聖職者も魔術師と似たようなローブだった。少しデザインが違うといった感じで、ちょっとぱっと見だけで判断するのは、はじめは難しそうだった。


 そして最後。とっても気になる裸。これどうなるんだ?と思い――まあ物は試しだ。ということで選んでみた。すると――。


「……なるほど」


 はじめの俺に戻ったのだった。

 つまりはあれだ。先ほどまで来ていた服。私服になった。武器などは何も持っていない。どうやら――いきなりゲーム世界に飛ばされましたー。というのが体験できるらしい。


「マジすごいな」


 俺はいろいろ試しつつ結局最終的には魔術師を選んだ。今までもゲームでは騎士とかもプレイしなくはないが。基本中距離、遠距離攻撃とかできるキャラが好きだったからだ。聖職者は何故やめたかというと、サポートとなっていたので、攻撃手段がはじめは少なそうだったので、魔術師を選び。ローブは初期の黒色にして、杖に関してはいろいろ選べたが。途中で変わるかもしれないということで、ぱっと目に付いた星をモチーフにした杖にしてみた。


「えっと――これで――後は確認を――か」


 ちなみに、キャラメイクというのもできるらしい。素性を決めた後に変更しますか?という問いがあった。このままだと今の自分がゲーム内へと入るらしい。多分それが嫌な人も居るだろうから、それを考慮してなのだろう。でもまあ俺は別にこのままでいいというか。キャラメイクでめっちゃいじると、文がわからないとか怒りそうだからな。そのまま他の設定を進めた。各種設定が終わるとゲームスタートとなった。


 また俺の目の前は真っ暗になった。

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