第3話 12月12日 金曜日 C2

 現在俺が住んでいるのは三重県の北部。桑名くわな市だ。ちょっと駅からは離れたところに住んでいるが。でもなんとか歩いて桑名駅まで行けるところに住んでいるので、なかなか良い場所に住んでいると個人的には思っている。

 ちなみに桑名駅は大きな駅なので交通の便は良い。

 3つも鉄道会社があるので、名古屋なごや方面に出るのも楽。あと、四日市よっかいち方面。先ほどぶんが言っていた方面。三重県の県庁所在地だな。そこに行くのもここからなら乗り換えなしで行けるので便利な場所だ。


 今の俺は凍えそうな風の中、桑名駅を目指し。途中で横を通過していく「桑名駅前行きのバス乗りてー」などと思いつつ。桑名駅へと歩いた。いや、乗ればいいんだろうけど――何と言うのか。バス停で言うと数区間。歩ける距離でバスって――乗ったら負け。楽を覚えると――と思う俺でいつも歩いていた。


 そんなこんなで鼻が冷たい。凍ったと思っていると、桑名駅に到着した。ここで俺は時刻を確認する。ちなみに駅は帰宅ラッシュ時間だったため結構な人だった。そんな中俺は一番早く津方面に向かう電車。近鉄の急行列車があったのを見つけたので、近鉄線ホームへと改札を抜けた向かった。

 連絡橋を渡り、階段を降り近鉄線ホームへと到着するとちょうど名古屋方面からやって来た急行列車がホームへと滑り込んできた。ナイスタイミングだ。

 なお、帰宅時間なので予想はしていたが。車内はぎゅうぎゅうだった。満員電車である。俺は急行列車が止まると降りる人が降りた後。一番近くのドアから車内に乗り込み。ドアの横にある手すりに摑まり隙間にぴったりとはまった。そうそう車内は暖かい。ドア付近だからそこまで――だが。風が当たらないだけでもかなり違った。


 ——そういえば、以前ならドアと自分の間に1人分スペースを作って――だったが。今はその必要はないか。


 俺が乗り込んですぐに急行列車は桑名駅を発車した。

 そして電車に揺られること数十分。途中の駅で止まる度に車内は少しずつ余裕ができ。俺が目的地の津駅に着く頃には――さすがに座席に座れることはなかったが。でも桑名駅を出た時よりかは窮屈さはなかった。ちなみに俺はずっとドア付近で小さくなっていた。乗り降りの邪魔にはなってなかったはず。

 とりあえず俺は津駅に到着するとまず改札を出たのだが――出てから思い出した。


「……SCAWセンターって――どこだ?」


 本当は移動中に車内で調べる予定だったが。すっかり忘れていた俺。さて、どこだどこだ?と、改札を出てから迷子――にはならず。改札を出たらすぐにわかった。ちゃんと駅にあった案内板にSCAWセンターへの矢印があった。ぱっと見新しい看板なので、最近出来たばかりなのだろう。俺は全く知らなかったが。

 とりあえずその後は矢印に従って歩いて行く。すると、意外にも俺と同じくSCAWセンターを目指していた人が居たらしく。俺が歩く前には同じく数人の男女が歩いていて付いていくと。


「デカいな」


 俺は『ここはホテルか?』と思うような外観のところへと到着した。良く駅前などにあるビジネスホテルに近い外観だった。ちなみにちゃんとSCAWセンターと書かれているので目的地はここらしい。こんな建物あったんだな。と思いつつ俺が中へと入ると、ホテルの受付というより――会社?大きな会社の受付。玄関というのか――とりあえず入ってすぐは広い空間あり。その奥に受付があった。

 受付には数人。先ほど俺の前を歩いていて人たちを含め何人かが並んでいた。ぱっと見年齢層は――バラバラだ。さすがに子供はいないが。でも高校生らしき制服を着た男女の集団はいた。あとは……普通にスーツ姿の男性や。女性も居るし。ホントバラバラだ。


 『ここはなんだ?』と俺が思いつつ。周りを見ていると壁にフロア案内があった。チラッとフロアを見てみると『ゲーム。学校。オフィス。交流スペース……』などと言う文字が並んでいた。


「なんだここ?」


 文に言われたから来たが――なんか怪しいところに俺は来たのだろうか?などと思っている間に俺の順番が来たため。俺は受付へと進む。

 ちなみに受付には受付担当の人が居るのではななかった。受付にあったのはいくつかのタブレット端末だった。『並んでいる人の割には進むのが早いな』とは思っていたのだが。そういう事か。チラッと横の様子を見ると、サラリーマン風の男性がタブレット端末を操作し。すぐにエレベーターの方へと進んで行った。


 今の隣の人の流れからして。難しい感じはなさそうだったので、俺はとりあえずタブレット端末の画面を見てみる。

 画面には受付開始というボタンがあったので俺はそのボタンを押す。すると、先ほどフロア案内で見たゲーム、学校――といった選択肢が出た。

 よく見ると。学校とオフィスに関しては利用時間外となっていたので、実質選べるのはゲームと交流スペースだった。

 って――俺は何を選ぶんだ?だったが。ふと文の会話を思い出した。


「SCAWか」


 俺はそうつぶやきなっがら画面を再度見ると、ゲームのところに『SCAW~Seamless Communication Another World~』という言葉があったので――俺はとりあえずそれをタップしてみた。すると参加人数画面が出たので、1名を選択。すると1222という部屋が出てきた。そして画面には『表示された部屋に~』という言葉もあったので、どうやら番号の部屋に向かえという事らしい。

 本当はこの部屋番をメモするとかが必要なのかとも思ったが。この数字。偶然だとは思うが俺が忘れるわけのない数字だったため。瞬時に俺は覚えていた。そもそも覚えやすいがな。

 なので、俺はすぐに確認ボタンを押しタブレット端末の操作を終えると、エレベーターの方へと移動した。そして俺がちょうどドアの開いていたエレベーターに乗り込むと勝手にエレベーターのドアが閉まり動き出した。


「え?」


 エレベーターに乗った瞬間の俺の感想である。俺はまだドアの開いていたエレベーターに乗っただけで、ボタンも何も操作していないのに――静かにエレベーターが動き出していた。


「な、なんだよ。これ――」


 ちょっと怖かったな。いや、閉じ込められた――になるのかはだが。乗ったらドアが閉まり勝手に動き出すんだからな。ちなみにエレベーターは12階へと向かっていた。

 どうやらエレベーターの出入り口の上に光るランプを見ると、このビルは12階建てらしい。俺は最上階にご案内されているらしい。などと思っているとエレベーターは静かに12階へと到着。揺れなど全くなく到着しドアが開いた。すると足元に矢印が表示された。

 どうやら矢印に従え。らしいので俺はエレベーターから降りる。すると、まるで監視でもされているのか。俺が進むと一番初めに光っていた矢印が消え。少し先に別の矢印が光る。


「スゲーな。ここ」

 

 そんな感じで俺が矢印を追いかけるように進んで行くと1222の部屋に到着した。

 ちなみにエレベーターを降りてからの館内の様子は、ホテルの客室への廊下を歩いている感じだった。両側にはいくつもドアがあり――ってか、恐ろしいくらい静かだったんだよな。俺の足音しか聞こえなかったし。

 そうそう部屋の前へと俺が到着すると矢印は消え。ガチャっと、鍵の開く音が聞こえた。『マジでどうなってるんだよ。最先端の何かで俺は監視されているのか?』だったがまあ良いかと思いつつ俺はドアを開ける。すると、結構しっかりした重たいドアだった。まるで防音?ってか、金庫の中にでも俺は入るのか?と思うような扉だった。でもめちゃくちゃ重たいというわけではなく。女性でも開けれるくらいの重さだとは思うが――厳重すぎないか?などと思っていると勝手に室内の電気が付いた。


 室内へと入るとドアが閉まると同時にガチャっと鍵が閉まった。いやいやマジで閉じ込められた?と、一瞬は思ったが。ドアには鍵の開け方というものが書かれていて、室内で操作。ゲーム終了と同時に開錠されると書かれていた。


「……なんだよこれ?」


 ガチャガチャ。


 ガチで閉じ込められた?らしい。ドアは押しても引いても開きません。だった、マジでなんだよこの怪しい場所。と、俺は思いつつ。仕方なく室内へと入る。

 

 室内を見渡すとここはホテルの一室――ではなく。小さな部屋。あれだ。小さなカラオケボックス的な感じで、窓はなく。あるものといえば、部屋の中心にマッサージチェアーみたいなしっかりとした椅子?1人用のソファー?があるだけだった。


 まあここに座れというのか――って、マッサージチェアーのようなものの横の壁には利用方法があった。

 説明を読んでみると、どうやらここはあれだ。最先端ゲーム施設というのか。そういえばVRとかあったな。俺達は普通のテレビゲームで満足していたが。って、それは高校の時の話か。今は――全くしてないな。

 とりあえずわかったこと。この椅子に座ると、椅子が自動で動き、寝たような体勢になり。天井にあるカメラなどで人物をスキャンというのか――まあ俺の身体を読み取り。頭の上に付いているゴーグルをはめることでゲームスタート。自分自身がゲーム内の世界に入るらしい。知らない間にゲームがすごいことになっていたよ。俺が高校生だったのは数年前なのに、どんな速さで発展したんだよ。


 とりあえず俺が今のところわかったことは、文がこのゲームを知り。俺にもやらせたくなったのだろう。でもはじめからこんなゲーム。と言うと面白くないから場所だけ指定してきたのだろう。にしても、あの時以来ゲームなんでしてなかったのに、急にどうしたのか。ということはあったっが。とりあえずそれはおいておき。ここまで来て帰るという選択肢はないので。っか、利用方法のところに利用料の支払いが必要という記載があり気になったが。それはどうも部屋に入る前であったみたいだ。

 でも――俺は1円も払ってない。もしかして、文が誘ったから先に払ってくれているのだろうか?あれ?でも俺個人がわかる情報とか入れたか?などと思いつつも、すでに室内に居るのだからいいかと。とりあえず、荷物は椅子近くにあった荷物置きに置き。椅子に座ると――ゆっくりと椅子が勝手に動く。介護用ではないがゆりかごみたいな角度へと椅子は動いていった。

 俺は一体何をしているのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る