第2話 12月12日 金曜日 C
ピンポンパンポンピン……ピンポンパンポンピン……。
静かな室内に突然明るい音楽が流れだす。さすがに違和感というのか。静かだった部屋にこんな音楽が流れだしたら嫌でも気が付く。
ちなみにこれはアラーム音ではない。これは……あー、電話だ。着信音を変えよう変えようと思ってはいたが。いつも忘れていて結局スマホを買ってからずっと――これなんて言うんだ?初期?とにかく初めから鳴っている音のままだ。
って、とりあえず電話か。頭の中でいろいろ思っていたが。起きないとな。
誰だよ?気持ちよく寝ていたのに……。
――あれ?俺寝ていていいのか?なんかダメなような――?確か俺は――。
頭の中。記憶の奥深くで何かがノックしてきている。俺何をしていたんだったか?そんなことをぼんやりと思いつつゆっくり眼を開けると――思い出した。
「——そうだ。そうだ。俺は自分の家で大学のレポートを書いていたんだ。」
暗闇の中俺の意識がはっきりしだす。
レポートを書いていた証拠に、俺の目の前にはスリープモードになっているパソコンがある。ゆっくりと電源ランプが付いたり消えたりしている。あと、その周りのは本や、ノートが散らかっているのが暗闇の中だが、付いたり消えたりしているパソコンのランプによりぼんやりわかる。
そうそう俺は、12月25日締め切りのレポートを書いていたのだ。だけど、なかなかしっくりくるものが書けなくて悩んでいたら寝てしまったらしい。
――あれ?でも俺ってこういうレポート得意。あれ?何で悩んでいたんだっけ?
自分の事なのに何故か一瞬だけ違和感のようなものを感じたが。それはスッと馴染んだとでもいうのだろうか。ホント一瞬だけ引っかかった物はすぐに消えた。消えた後、俺は違和感すら忘れて――。
「寒っ……あー、風邪引くぞ俺」
手をすり合わせつつ。外を見ていた。
いつの間にか外も暗くなっていた。もちろん室内も暗い。そして今年の冬はあの時みたいに寒い。温暖化じゃなかったのかよ。定期的に寒い冬が来ているじゃないか。雪は珍しいとか言いつつ今年ももう数回降っているし。来週は積雪が――とか天気予報のお兄ちゃんが言っていたぞ?
「あれ?気候がくるっているのも温暖化が原因か?」
ふと俺がつぶやくが。今この場には俺1人。誰も返事をする者はいない。ってか、俺なんで起きた?って、そうだ。電話だ。
俺は余計な事を考えることをやめ。寝起きなので、ぼんやりとしつつ。目をこすりながら、今も鳴っている音の出所を探す。
その際にまた違和感。すごく久しぶりなことを今している気がしたが。その違和感は、スマホを探すために歩き出すとまたスッと馴染み。俺の記憶から消えた。
「スマホ――スマホ――」
目はまだ暗闇に慣れてないが。音の出所はすぐにわかった。棚の上だ。音のところに行けばいいんだからな。それに、着信を知らせるために画面が点灯していたので眩しい。超眩しい。こんなに眩しかったか?などと俺は思いつつ。誰からかの着信か確認することなく。とりあえず眩しいのを早く消すために画面をタップした。いや、マジで眩しかったし。まあ変な電話なら適当に切れば――などと思いつつスマホを耳に――と思ったら。
『——おぉ、斗真!斗真だよな?詳しい説明は後だ。今から言うところに行ってくれ――』
目が覚めるくらい大きな声がスマホから聞こえてきた。スピーカーにしていないのに、静かな部屋の中に声が響く。先ほどまで鳴っていた呼び出し音に負けないくらいのうるささな気がする。なので、もしかしたら俺。通話のボタンとともに、スピーカーのボタンを押したのかもしれないと思ったが。これはこれでいいか。それにうるさい声で誰からの着信かはすぐにわかったのでそのまま少しスマホを耳から話して返事をした。
「うっせー。その声……
「んな事どーでもいいんだよ!ってか、通信の状態が不安定だから用件だけ言うぞ!今から津駅前に出来たSCAWセンターに行け。そしてSCAWにログインしろ!いいな!斗真!行けよ!絶対」
「……うるせぇー。なんだよ急に」
通信の状態が不安定とか言いつつ。はっきりと聞こえてきていた幼馴染(男)の声。全然不安定じゃないじゃんである。
「いいから!来い!」
「はいよ。わかったわかった」
俺が適当に返事をすると電話の相手。幼馴染(男)の
実はいつもの事と言えばいつもの事なのだが、今日もあいつは騒々しかったよ。っか、SCAWってなんだっけ?全くわからないのだが。でも文は津駅前とか言っていたから。とりあえず津駅に行けばわかるだろう。
俺はレポートも進んでいなかったので、息抜きにちょっと行ってくるか。行かないとうるさそうだしな。などと思いながら。先ほどまでの長い長い呼び出し音で騒いでいたスマホを一度置いて――って、スマホの着信ってあんなに長い間鳴ったっけ?俺が寝ぼけていただけか?
またまた何か引っかかるものを感じた俺だったが、とりあえず外出するという予定が出来たので、それから俺は室内の電気を付けてから着替え。ダウンコートを着て、防寒対策をしっかりして外へと出た――が。それだけでは首元が寒かったので、くるっと向きを変えてマフラーと手袋を探しに再度室内へと戻った。
いやいや、やっぱ今年も寒いぞ。外の空気凍ってるよ。夜っていうのもあるとは思うが。もうカチカチじゃないか。ここは雪国じゃないぞ?何でこんな日に俺は文に呼び出されたのか。合流したら晩飯でも奢ってもらうか。
そんなことを思いつつ俺は冷たい風の吹く中。家を出発した。
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