第8話 12月12日 金曜日 C7
ゲーム内へと入って少し。俺達はスタート地点と思われるところへとやってきていた。
「拠点となる場所に到着したみたいですね。えっと、ここにはお店とかがあるので、装備を整えたりアイテムを買ったりできるみたいですね」
周りを見ながら湖奈が言う。確かに湖奈の言う通りお店の看板などがある。そして、そこそこの数のプレイヤーが居る。っか、お店の方にも店主らしき人とかが見えるが。あの人たちはモブ?それとも俺達と同じくゲーム内に入ってきている人だろうか?などと思いつつ俺は返事をした。
「なるほど。マジですごいわ」
ちなみに現在俺達が立っている場所は、多分津駅前から少し離れたところにあった――広場?だろうか?もしかしたら現実世界には建物があったりしたのかもしれないが今俺達の目の前にあるのは1つの小さな町といった感じの場所。少しこのあたりは現実世界っぽさが無くなってゲーム内というのが良くわかるといった感じだった。
そして俺達の視線の先には、ダンジョン入り口らしきものもあった。
「リアルだなー。ってか既に装備整えている奴も居るな。初期では見なかった装備の人もいるし」
「ですね。武器もいろいろあるのか大剣担いでいる人とかも居ますね」
「ああ」
俺達はそれからお店をまず見てみた。模擬店というのだろうか。祭り会場みたいな感じのところで、アイテム。回復薬などを販売していた。俺的には回復薬が栄養ドリンク剤のようにも見えたが。あれが回復薬なのだろう。
あと、武器を強化するアイテムのお店があったり。
武器そのものを扱うところ。防具を扱うところ。さらには飲食店まであった。文が言っていたが。飲食店で食べるということもでき。食べることで、能力を一時的にアップするなどが出来るとか。また長時間プレイすると飲み物や。食べ物が必要になり。この世界で食べると。現実でも栄養補給がされるとか……いやいや今時のゲーム怖いくらいだな。俺の覚えている記憶ではゴーグル。ヘルメットを被っただけな気がするのだが――もしかしていろいろコードが見えていた気がするが。ゲーム内に入った後に身体のどこかに何か繋がれたりしているのだろうか?ヤバい。想像したら怖くなってきたな。俺の身体大丈夫かと。とりあえずなんか……現実世界でおかしなことが起きてると嫌なので、現実の事はちょっと考えないことになした。
「っか、文。湖奈。これって結局何をするゲームなんだ?」
俺が聞くと文が答えた。
「このSCAWはな。仮想空間ゲームで、聞いて驚くなよ?ゲーム内でお宝を得ると、現実世界でも報酬としてお金がもらえるんだよ」
「はっ?そんなことあるのか?」
ゲームでお金がもらえる?どういうことだ?と思っていると、何故か自分がシステムを作ったかのように文が続けて話した。
「それがあるんだよ。今まではゲーム内はゲーム内だったろ?でもこれは自分の身体を使っている」
「本体は寝てないか?」
多分だがSCAWセンターの個室で俺は寝ていると思う。
「まあいいんだよ。いろいろ最先端の技術で、脳内は活発に動いていて。それにこの今ゲーム内に居る俺達歩いたりするだろ?これがすごい運動量になるとかで、未来の健康維持とか。まあいろいろあって、動けば動くほど金になるんだと」
「俺の知らないところでやはり何かが起こっている」
「斗真はイチャイチャばかりしていたから周りが見えてないんだよ。世界を見ろ世界を。もしかするとゲーム内でハーレム作ることも可能になるかもしれないんだぞ?ってか、このゲームで既に出来つつあるらしいがな」
やっぱり文はそこにたどり着くのか。と、俺が呆れていると。
「船津先輩。シャラップ」
「なんだよ。湖奈」
「斗真先輩を苦しめないでください」
「湖奈――?」
「斗真先輩。イチャイチャはいい事です。はい。じゃあ私とイチャイチャしながら攻略しましょう。レッツゴーです」
「えぇ?どうした?」
急に俺の腕を掴み歩き出す湖奈。
「おいおい、湖奈。あま……」
「シャラップですよ。船津先輩」
文が俺達に付いてきつつ。何か言おうとしても湖奈が即遮った。
「——マジで力関係が急におかしくなったな」
「元からですよ。斗真先輩」
「——ならいいが」
「はぁ……、なんで斗真はいつもイチャイチャなのか。オレにもイチャイチャ来いよ」
「お前は
「あー、まあ先輩の方が――なんだよな。あれから。だから今はまだ。それに大学の方も先輩は忙しいらしいし」
文の表情が複雑な表情に変わった。
「あっ、悪い」
未羅先輩とは俺達の1つ上の先輩。文がずっとアタックしている人でもあるのだが――どうやら俺と話すときは未羅先輩も今まで通りなのだが――あれ?最近話したかな?記憶が――まあとにかく。あれは本当の姿ではないのかもしれない。やっぱり気にしているのだろう。
「いやいや、元はすべてオレだ。まあ見てろ斗真。未羅先輩は問題ない。そのうちオレがイチャイチャを見せつける番になるからな」
「——もう、船津先輩。変な雰囲気になるから、変な事言わないでください。斗真先輩。行きましょうよ。私とイチャイチャ楽しみましょう」
そう言うと湖奈が腕から俺の手に自分の手を移動させて引っ張ってきた。
「——ああ、ってイチャイチャは必要か?」
「必要ですよ」
「そうか?にしても前は引きこもっていた湖奈が引っ張って来る側になるとはな」
「私は斗真先輩と――楓夕先輩にとっても感謝してるんです――だから……斗真先輩。大丈夫です。私はそばにずっといます」
そういうと、俺の方を振り返り笑顔で頷く湖奈。でも――何だろう。悲しさも見え隠れしているような――。
「——ああ。行くか湖奈」
「はい!」
「おーい。オレが参加させてやったの俺を抜――」
「あっ。斗真先輩。まずはダンジョン様子見してきましょうか?ボスエリアに入らない限り出入り自由みたいですからね」
文の会話はまた湖奈に切られた。でも今日は湖奈が上らしいので、俺は湖奈に合わせた。
「だな。どんなものかわからないから――ってか、お店を見た限りまずアイテムを整えるためには、この世界のお金がとりあえず必要みたいだからな。ダンジョンでモンスター倒したりしたら――が、必要なんだろうな」
「斗真もオレを無視するなー」
再度文が口を挟んでくるが。湖奈は動じることなく話し続けた。気持ちのいいくらいスルーしていた。
「ですね。課金すればいきなり購入できるみたいですが。まずこっちで稼いだらむしろ向こうでお小遣いになりますからね。課金はせずにいきましょう」
「マジですごいな。まあとりあえず行ってみるか。どんなのかわからないし」
ちなみに俺も湖奈に合わせていたが。ふと思うことがあった。
「おーい。だからオレを2人ともが無視するなよ!」
「——っか、文」
なので再度文が声をかけてきた時に聞いてみた。
「——うん?なんだ?斗真。無視したりいきなり声かけて来たり」
「いや、お前装備は?」
俺と湖奈は杖を持っている。が何も持っていない文。どこかに隠しているということもないと思うので俺が聞いてみると――ニヤッと文が笑った。
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