超越せし者よ
放課後の備品室改めて、地球防衛部前線基地……。
そこには、地球防衛部の勇ましい面々が揃い踏みしていた。
「……というわけで! 今日から正式に我が地球防衛部が登録されましたぁ!」
ひなたは鼻息を荒くしながら宣言する。
「隊長としても感無量! これから隊員一丸となって、バンバン地球のために働こう!」
「…………」
だが、返事はない。
宗介は元より、梓まで。そして宗介に至っては真っ白に燃え尽き、力なく椅子に座っていた。
「……って、山田くん、どうしたの?」
「いえ……別になんでも……」
(ま、まさかわずか半日でここまで話が広がっているとは……)
あれから……ひなたが宗介の教室を訪問してから、教室に戻った彼を待っていたのは、周囲の好奇に満ちた視線の数々であった。
まさに針の筵。聞こえてくるヒソヒソ声に、彼は思い知る。
栞が言っていた、言葉の意味を……。
「とにかく! 今日から元気よく頑張ろー!」
ひなたが一人盛り上がる中、梓はコソッと宗介に話しかける。
「……あの、大丈夫ですか?」
「え、ええまぁ……なんとか……辛うじて……」
「ごめんなさい……。まさか、こんなことになるなんて……」
凄まじく申し訳なさそうに、梓は陳謝する。
「ということは、やっぱり3年生の間でも?」
「……正直に言いますと、山田くんの話で持ち切りですね。私も山田くんがどんな人なのかと何度か聞かれました」
「あー……すみません、迷惑をかけてしまって……」
「そんな……! 私は全然平気ですよ! ですが、山田くんの方は……」
(まぁ、今後の学生生活がどうなるか決まったようなもんだよね……)
「でも……」
宗介と梓は、ひなたを見る。
「ねえねえ! 今日は何する!? 私としては隊員同士の親睦を深めてもいいのかなぁって思うんだけどね! あと……!」
そこにいたのは、どこまでも明るく、そして楽しそうに話し続けるひなたであった。
「……入部は自分の意思で決めたので、今更辞めるつもりはありません」
「……ありがとうございます」
色々と噂にされることは必至ではあるものの、とりあえず、様子を見ることにした宗介であった。
……だがその噂が、眠れる獅子を叩き起こしたのである。
ドドドドド……!!
ガララララッ!!
凄まじい足音に続き、勢いよく部室のドアが開かれる。そしてそこにいたのは、静かな怒りに身を沈める獅子であった。
「宗ちゃん!!」
「し、栞姉!?」
突然の来訪に戸惑いまくる宗介である。
「地球防衛部に入部したって本当なの!?」
「え、ええと……それは……」
「本当なの!? 説明して!!」
「あ、あははは……」
なんとか言い訳をしようと作り笑いをしたものの、起死回生の言い訳など思い浮かぶはずもなく。
宗介は、早々に諦めることにした。
「……事実でございます」
「う、嘘……本当だったんだ……」
栞は力なくその場にへたり込んでしまう。
「……昨日……昨日あれだけ言ったじゃない……。どうして入部したの……」
「いやホント。全くもって謎なんだよ、マジで」
何度でも言おう。下心である。
一方ひなたと梓は状況が読み取れず、困惑の表情を浮かべていた。
「え、ええと……」
「あの……どちら様でしょうか?」
「…………キッ!」
栞は、声をかけてきた二人を睨みつける。
「す、すみません内々のことで……。ええと、彼女は鈴沢栞で、僕の家の隣に住んでいて――」
「山田宗介の保護者です!!」
クワっと語気を強める栞に、ひなたはニッコリと笑顔を浮かべる。
「あー! もしかしてお母さん!? ずいぶんお若いですね!」
「いやそうはならんでしょ。いったい何歳の時の子供なんですか」
「じゃあ、叔母様……?」
「なんで姉という選択肢が出てこないんですかね……」
そんな二人の前で、栞の勢いは更に増す。
「保護者です! 母とか叔母とか……そういうのを超越した、唯一無二のお姉ちゃんなんです!!」
「…………」
栞の名乗りに、部室内は静まり返る。
「……栞姉は、僕の何になろうとしてるのさ……」
栞の立ち位置がわからなくなる宗介であった。
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