第73話 遠雷 7

 窓を叩く雨音すら二人には聞こえなかった、それは嵐の夜。


 二つの影はお互いの肌を感じながら重なりあっていた。

 唇から漏れる熱い吐息と、素肌から伝わる温もり。

 

 何度も何度も重なる唇。


 からまる指ですらお互いの愛を感じる。


「お前の鎖は俺が死ぬまで離さない」


 エルンストは奴隷の焼き印に口づける。


 白い肌をすべるエルンストの指先がフィーアの体に熱を帯びさせ、フィーアの爪先はエルンストの背に落ちた。


 激しく抱き合い、時折漏らすフィーアの吐息はエルンストを熱く荒々しくさせた。


 夜の終わりを怖れるように、二人は何度も何度も愛し合った。

 

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