第10話
「ちょっと待ってください!!」
受付嬢が叫ぶ。
「そんな外れスキル持ちがウルフよりも強いわけ無いじゃないですか!!」
やっぱりこいつは半殺しになるまで殴らなきゃ駄目だな???
俺が殴ろうと席を立とうとすると、ジルさんが手で制してきた。
「君は二つの勘違いをしている。」
ジルさんがそう言った。
俺はぶるりとふるえた。なぜならその声には底知れない冷酷さが備わっていたからだ。
どうやったらこんな声を出せるようになるのか知りたいくらいだ。
俺だったらいつになってもこんな声は出せないだろう。
「一つ目は、外れスキル持ちが全員弱い訳じゃないんだ。外れスキルの定義と言うのは、一つ目にとてつもなく弱いスキルだったりすることだ。この場合は、弱い場合が多いね。」
「だ、だったら......!!」
受付嬢かなにかを言おうとするが、それを遮ってデルさんは話続ける。
「しかし、もう一つ定義がある。」
「な、なんですか?」
「
「「っ!!」」
俺と受付嬢は戦慄した。
受付嬢と同じ反応をするのは癪だが、しょうがないだろう。
「とは言っても、強そうな名前のスキルは外れスキルとは言われないんだけどね。」
と、デルさんは付け足した。
確かに俺のスキルは聞いたことの無いスキルだ。
だが、「落下ダメージ」という直接戦闘に関係の無さそうなスキルだから外れスキルだと思われたのだ。
まぁ、このスキルだけでは殆ど使い物になら無いが、「飛び降り自殺」を使えば強くなれるといういわば反則技みたいなものなのだ。
なので、これのスキルは外れスキルではないと思っていた。
「外れスキルの中でも案外強かったものなんていっぱいある。例えば、外国の聖女と言われている人物が持っているスキルで「いたいのいたいの飛んでいけ」と言うものがある。最初のほうは外れスキルだと思われていたが、後から痛みを敵に飛ばして味方を回復するスキルだということが判明したという事例がある。君もその一人なんだろ?」
「えっ!!」
受付嬢はあまりにも壮大な話にビックリしていた。俺もビックリしていたが、ちょっとだけ嬉しい感じだ。
俺は出来るだけ動揺しているところを気取られないように冷静に返答した。
「はい。そんな感じです。」
「やっぱり。」
デルさんはニヤニヤした。
自分の考えが当たって嬉しかったようだ。
「くっ!!」
受付嬢は悔しそうだ。
俺が受付嬢を見て小馬鹿にしたように笑うと、受付嬢は物凄い形相で睨んできた。
おーこわいこわい。
「リエル君の存在値はウルフを遥かに上回る504だった。これは銀級にまで届くほどの存在値だ。」
「そ、それはスクロールが不良品だった可能性があったかもしれないじゃないですか!!」
「はぁーーーー。」
デルさんが深いため息をついた。
俺と受付嬢はビクッと震えた。
まじで受付嬢と同じ反応をするのがいやだ。
「勘違い二つ目だ。これはスクロールを使った訳じゃない。」
「え?」
「じゃ、じゃあどうやってやったんですか!?」
それに関しては俺も気になる。
スクロールをを使わないでどうやってやったのだろうか。
「これは僕のスキルを使ったんだよ。」
「え!?」
俺もビックリしたが、反応はしなかった。受付嬢と同じ反応をするのはいやだからな!!
しかし、受付嬢はジルさんのスキルを不良品呼ばわりしたようなものだ。
これは修羅場がはじまるな。
「い、いや!! ギルマスのスキルを不良品と言った訳じゃなくて、その、リエルさんがそんなに強いとは思わなかったんですよ!!」
「僕は君の事が前々から少し嫌いだったんだ。何かあるごとに近付いてきて機嫌を取る。......僕が一番嫌いなタイプだ。」
「い、いえ!!そんなことを思って言っていたわけでは!!」
「どうせ僕の金や権力を求めてたんだろ? あーやだやだ。そう言うところでしか人間の価値を見れないなんて。」
俺も本当にそう思う。俺は心のなかで全力で首を縦に振った。
それにくらべてメイラは本当に言いやつなんだなと思う。
いつか絶対にメイラにふさわしい男になっていつかは......。おっといけないよだれが。
「......リエル君。こんな大事な話をしてるのになににやついてるんだい?」
「えっ、あっ!! すみません!!」
「まぁいい。カルル。君はギルドから追放だ。君の数々の悪行を僕が知らないとでも思ってるのかい?」
「くっ。」
「さっさと出ていけ。」
デルさんがドスの効いた声で言った。
「は、はいぃ!!」
受付嬢は怯えきった顔で逃げていった。
「さて、邪魔者はいなくなった。少し話せるかな?」
俺はコクりと頷いた。
「まずは謝らなければいけない事がある。」
デルさんが申し訳なさそうに言ってくる。
「まずは、スクロールを使ったというのは本当なのだが、そのスクロールは、念筆のスクロールで、 思ったことを文字に起こすというスクロールだ。」
へぇ。そうだったのか。謎が解けた。
スクロールが光っていたため、本当に使ったのだと思っていた。が、スキルだと言っていたので受付嬢をビビらせるためのハッタリなのかと思っていた。
「そして、もう一つは、僕は三日前にも君の存在値を測っていた。」
「えぇっ!?」
俺はビックリしたが、冷静に考えてみたらスキルなのだからいつでも使えるし、何か変わったこともないため、いつつ変われてもおかしくないのだ。
「本当にすまなかった。」
「いえいえ!! 良いんですよ!! 別に貴方のスキルなんだから貴方の好きにして良いんですよ!!」
「そうか。ありがとう。」
そのまま言わないままでも分からなかったのに、わざわざそう言ってくれるということはやはりデルさんはいい人だよ。
「なので、その時の結果も教えよう。」
「はい。」
俺はドキドキしながら話を聞いた。
「その時の存在値はウルフと同じくらいかそれ以下だった。正直ここまで強くなれるとは思わなかったよ。」
「そうなんですか。」
やはり俺はかなり成長していたようだ。
白狼を倒せた時点でもう強者の仲間入りをしたとは思っていたが、こうもはっきりと言われるとかなり嬉しいな。
「どんなに早く成長する冒険者でも一日に20位で精一杯だろう。そう考えると君には将来性がある。」
そうか。俺は単純計算で行くと、一日で他の冒険者が五日で成長するものを獲得できてしまうわけだ。
ちょっと俺でもビビる。
「だから君とうちのギルドで契約を結びたい。」
「はい。そうですか......。」
ん? 今なんて言ったんだ?
「すみません。もう一度言って貰えませんか? 」
「いいですよ。君とうちのギルドで契約を結んでくれませんか? と言いました。」
「えぇ???」
ん? あれ? 何て言ってるかちょっと理解できない。
契約? それって、上位の冒険者がギルドと契約するって言うあの契約か?
俺は後ろを振り返った。
「あれ? それって僕に言ってます?」
「ははっ。面白いことを言うね。この部屋には僕と君以外に誰もいないじゃないか。」
「ですよねー。」
そうか。僕が契約かー。そう。契約だ、契約......。
「契約!?」
俺は驚いて椅子から立ち上がった。
「大丈夫かい?」
「はははははい!! だだだだだいじょうぶです!!」
「ちょ、ちょっと落ち着こうか。一旦椅子に座って。」
デルさんは俺のビックリした感じにちょっと引きつつ、俺を宥めてくれた。
数分後、やっと落ち着いた。
「さて、落ち着いたようだし契約内容に移ろうか。」
「はい!!」
俺は少し緊張しつつ返答した。
「まずは君へのメリットとして、君へ対してのギルドから最高待遇。素材等の買取額増加。そして、迷宮などのギルド等で封鎖されているところの通過許可等をしよう。」
これはすごい。最高待遇ということは、ギルドマスターと同じくらいの待遇がされると言うことだ。
次に素材等の買取額増加は単純に売ったら高くなると言うだけだ。
しかし、もっと強くなって強い敵を倒したりできたらさらにさらに高くなると予想できる。なので、かなり強いだろう。
最後に、封鎖されているところの通過許可とは簡単に言うと銀級上位以上の敵の出る場所はギルドによって封鎖されている。
知らず知らずのうちに迷い混んでしまえば殆どの人は死んでしまうからだ。だから封鎖しているのだ。
もちろん銀級以上の冒険者でないと入れない。
そこに俺みたいな銅級の俺が入れるわけもないし、銀級になったとしても半年ほどがんばらなくてはだめなのだ。
それをスルーできるのはすごいことなのだ。
これほどの優遇を受けてこの契約を受けない訳にはいけないだろう。
「じゃあ僕へのデメリットは?」
「それは簡単なことだ。僕に君の成長を手伝わせてくれ。」
「え?それってデメリットなんですか?」
それもメリットなんじゃないだろうか。
「あぁ。もちろんただじゃないよ? その時に使ったお金とかはしっかりと倍にして返して貰うよ。」
「倍!?」
「まぁ、君が全然強くなれなくてもそのときはその時で頑張って貰うよ。」
そういってデルさんは悪い顔をした。
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