第7話

朝起きて、ご飯を食べ、俺はすぐに草原へと行った。

昨日はモンスターが全然いなかったが、朝に行けばいるかもしれない。

昨日はきっと狩人が多くて、ほとんどのモンスターが狩られてしまったのだろう。

なので、俺は早いうちから探すことにした。



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見つけた。

俺は木の影に隠れながらウルフをみた。

何体も倒した敵なのに、いざ普通に戦うとなると少し怖い。

今までのやり方は半分反則みたいなものなのだ。

まぁ、それも自分の力だから止める気はないが、スキルを封じられる場所や、洞窟内などでは使えない。

なので、スキルを使わない戦いかたを覚えなければならないのだ。


俺は魔法の準備をした。

俺の後ろから強い風を吹かせる魔法だ。

これで俺は早くなるが、ウルフは遅くなるだろう。


俺は魔法をつかった。


ビュゥゥゥ


強い風が吹く。

俺は走り出した。


「ぎゃぅ!?」


ウルフが驚いたような声をあげた。

可愛い。だが、やらなくてはいけない。

俺は風の勢いにのって剣を振る。

剣は勢いよくウルフに当たった。

そう。当たったのだ。


「くっ。」


威力を強くしようとしすぎて、切り裂けていなかったようだ。

だが、風もありウルフは吹き飛んだ。

チャンス!!

俺はウルフに向かって剣を振る。

風に剣を沿わせるように滑らかに切った。


ダッ


ウルフは風にのって後ろにとんだ。

アドバンテージだったはずの風が少し仇となったか。

しかし、俺は次の手を考えていた。

俺は懐から果物ナイフを取り出した。

そして、風魔法を使いナイフを投擲した。


「きゃぅんっ!!」


ヒットだ!!


ピッタリ足の付け根部分に当たった。


「うぉぉぉ!!」


俺は剣を上に振り上げる。

そして、ウルフの首を狙い降り下げた。


「はぁ、はぁ。」


ウルフの首が飛び、ウルフは絶命した。


「よっしゃぁぁぁ!!」


勝った。勝ったんだ!!

俺がこの草原最強の敵に勝ったんだ。

この年でウルフをスキル無しで倒せるのは凄いことだろう。

それも、物凄い才能がなければ出来ないことだろう。

まぁ、俺の場合はスキルによるパワーレベリングのお陰だがな。

とにかく、この力があれば俺は幸せになれる。

復讐なども出来ると思う。

だが、それは後回しだ。

復讐何て言う面倒事をしてしまっては俺の幸せが失われるかもしれない。

俺が最強になって悔しい!! と思わせられれば十分だ。

そのためにも俺は強くならなくてはいけない。

全ては幸せのためだ!!


こうして俺は幸せへの道を進みだした。




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バフッ


俺は布団にダイブする。

あぁー。気持ちいぃ~。

もう一生このままでいたい。

今日は頑張った。

ウルフを7体、ゴブリンを12体倒した。

魔石はほとんどを回復薬にして、10000円ほど金を貰った。買い物などに使う金が無くなってきたところなのだ。

はぁ、今日はもう休もう。少し早いが良いだろう。

そして、今日のご飯はピリ辛鍋だ。適当に野菜などを買ってきて味付けしたものだ。

決して手抜きではない。作るのは簡単だが、十分美味しいからな。

俺がぐだぐだしていると、メイラが横に寝っ転がった。


「お疲れ様ぁー。」

「おう、メイラもお疲れ様。」

「うん。」


何だろう。少し元気がないというか、ぎこちない。

何かあったのだろうか。


「大丈夫か? 何かあったのか?」

「い、いや。何でもないよ?」

「そうか。それなら良いんだが......。なにか、やって欲しいことがあったら行ってくれよ?」

「うぅん。それなら......。」



「えっ、は?」

「うん。後ろからお願い。前からだったらちょっと恥ずかしいから。」

「後ろ!? いや待て!! 辛いことがあってもそんなことはしちゃダメだろ!?」


なに言ってるんだ? そう言うことは、好きな人と、もっとなんかムードのあるところでしなきゃいけないんじゃないのか?

そうしなかったか、それはいけないことで、悲しいことなんじゃないのか?

確かに俺はメイラのことはちょっと気になってはいるが......ってダメ!! メイラが俺のこと好きなわけ無いだろ!!

俺はそう悶々としていたらメイラがこう言った。


「え? なに行ってるの?この前私もやったじゃない。」

「ん?」


この前やった。メイラが。後ろから。抱く。

これは俗に言うバグというやつのことなのか?


「え? それってハグのこと?」

「え?それ以外に何があるの?」


ははっ。そうだよな。

うん。勘違いするな。


「してくれる?」

「あぁ。いいぞ。」


俺は後ろから抱きついた。

うぅ。恥ずかしい。

しかし、幸せだ。


俺たちはそんな甘酸っぱい時間を過ごしたのであった。


ゴクゴクゴク


俺は回復薬を勢いよく飲み干す。

ちょうどウルフを倒したところだった。

今は大体3時くらいだろうか。精霊の巣ではずっと天候や太陽の位置などが変わらないため、時間が分からない。


今のところ、ウルフを三匹、ゴブリンを十一匹狩った。

ゴブリンからは使えそうな剣が二つほど手に入ったため、一応持っておいてある。


レベルは3上がった。

着実に力がついていっている気がする。

多分今ならスキルを使わずに草原のウルフくらいなら倒せるだろう。


少し力が試してみたい。


俺は精霊の巣から出た。

太陽はまだ出ていて俺の時間の予想は大体あっていたようだ。

俺は草原のウルフを探し始めた。

草原のウルフは精霊の巣のウルフよりも弱い。

スキルを使わずに、剣だけで勝てるかもしれない。

勝てなかったときにはスキルを使えばいい。

俺は少しドキドキした気持ちでウルフを探した。



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「ああぁ!!」


ウルフが見つからない。何故かは分からないが、ウルフが一体も見つからないのだ。

しかも、それよりも弱いモンスターもほとんど出てこないのだ。

不思議だな。

こんなときに限ってなんでこんなに不運なんだろうか。

まぁ愚痴ってもしょうがない。かなり時間を無駄にしてしまったがここは割りきるしかないだろう。


俺はサインリーアに帰ることにした。



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「おっと、その前に買い物を済ませなくてはな。」


今日は刺激的な日だった。

今までよりも強い敵とたくさん戦い、不運な目にもあった。

自殺しようとした日よりかは刺激が薄いが、十分刺激的な日だっただろう。

なので、今日のご飯は刺激的な日に相応しい刺激的なものを食べたい。

俺は市場を回った。

すると、目につくような人がいた。

独特な服を着た肌の黒い人だった。

その人は赤い乾燥させた果物のようなものを売っていた。

俺はどうしてもそれが気になった。

俺がそれを気になっていると気づいた店主が話しかけてくれた。


「ナニカオサガシデスカ?」


片言なしゃべり方だ。多分外国から来た人なのだろう。

とりあえずこの赤い乾燥させた果物のようなもののことを聞いてみることにした。


「これは何なんですか?」

「コレハ「唐辛子」トイウモノデス。カライデスヨオ。」

「辛い?」

「ソウデス。コレヲリョウリニイレルト、カラクナリマスヨオ。」


おぉ、それは今の俺にピッタリだ。

辛いものなら十分刺激的だ!!

決めた。きょうの料理は辛い唐揚げにしよう。


俺は財布をみた。五千円ほど入っていた。

足りるだろうか。


「これはいくらですか?」

「コレハ唐辛子デスヨ?イクラチガイマス。」

「あぁ、何円ですかという意味ですよ。」


まだあまりこっちの言葉に慣れていないようだった。


「ソウナンデスカ。マダココニキテミジカイノデ、ワカンナイデス。」

「まぁ、頑張って覚えてね!! 応援するよ。」

「オオ。アナタハヤサシイデスネ。」

「何か分からない言葉とかはありますか?」

「ヨロシクデス。マズコノコトバガ......。」


それから俺は一時間ほど言葉を教えてあげた。

外国から来たのなら苦労しているだろう。

少しは手伝ってあげたいと思ったのだ。


「モウシオクレマシタガワタシハ「クレバ」トイイマス。キョウハアリガトウゴザイマシタ。」

「いえいえ。これから頑張ってくださいね?」

「ハイ。コレハオレイノシナデス。」


クレバさんはそう言って唐辛子を差し出してきた。


「いや、この程度のことで受け取れませんよ!!」

「イエ、アナタハワタシニヤサシクシテクレマシタ。ウレシカッタデス。ソレニ、唐辛子ノアジヲオボエテモラエレバマタカッテモラエルカモデショウ?」

「ははっ。そう言うことなら貰っておきますよ。」


やはりこの国よりも外国の方が優しいのかもしれない。

この国ではその人のことを知るためにはすぐにスキルを教えたりする。

しかし、外国ではそのような文化は無いのだろう。

はぁ、つくづく外国で生まれたかったよ。

俺は本気でそう思った。


「あ!! やばい!! もうこんな時間か!! 急がなきゃ!!」


家ではお腹の空かせたメイラが待っているだろう。

早く帰らなくては!!


俺はその他の材料などを買って、大急ぎで帰るのであった。




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「お待たせしました!!」


俺は調理した辛い唐揚げを出した。

ピリッとした香りが鼻を刺激する。

俺もメイラも無意識のうちによだれが出てきていた。


「じゃあ、「いただきます!!」」


俺とメイラは物凄い勢いで辛い唐揚げを食べた。


「かっらぁ!!」

「辛いけどうまい!!」


一番始めに出てくる感想は「辛い」だった。

それだけでは俺はいいとは思わないのだが、次に来る肉の旨味がその辛さを包み込むようにしていて、まるで口のなかで怪獣大戦でも始まったのかという程だった。

こってりとした肉に、辛みのパンチが効いてきて、今日に相応しい、刺激的な料理だった。


むしゃむしゃむしゃ


とても辛いにも関わらず、唐揚げは物凄い勢いで減っていく。

そして。


「「はぁ、はぁ。」」


完食だ。

全身から汗が吹き出ている。

しかし、嫌な感じはせず、逆に気持ちいいくらいだった。

今日はもう寝よう。

俺はさっと体を拭いて、布団のなかに転がり込んだ。

メイラも同じくだ。

そして、二人は深い眠りへと落ちていくのであった。

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