第5話
俺は今、精霊の巣という場所に来ている。
モンスターのいるあの草原を抜けた先にある。
精霊の巣とは、十階層に別れたダンジョンという場所だ。
そこのモンスターは倒すと魔石を落とす。
その魔石は魔道具や、魔力回復薬という魔力を回復する回復薬の原料として使える。
精霊と聞くと何かメルヘンチックなキラキラとした存在を思い浮かべるかもしれないが、この精霊はそんなかわいい存在じゃない。
一番入り口に近い場所にいるモンスターだけを説明すると、主に二種類いる。
一種類目は、ウルフよりも弱いが、ウルフよりも凶悪でずる賢く群れを作る「ゴブリン」
ゴブリンと聞くと醜悪な見た目を想像するだろうが、見た目だけは少しメルヘンチックなかわいい見た目をしている。
なので、昔の人はその見た目に騙されて多くの人が命を落としたそうだ。
二種類目は、単純にウルフよりも強い魔物化した「ウルフ」
生物は魔物化といって、死体を出さずに魔石に変わる魔物の方が強いのだ。なので、このウルフは普通のウルフの強化版なのだ。
ちなみに、ダンジョンの中では高さの上限がなく、俺が戦いやすいようになっている。
俺がなぜここに来たかというと、ウルフ狩りだけでは三日間で急激に成長することは難しいからだ。
とにかく俺は強くならなくてはいけない。
せっかく得たチャンスを棒に振ることになってしまう。
それに、あの受付嬢。何て言ったっけ?りりあ?わからん。あいつを見返してやりたいからな。
くくっ。あいつの悔しそうな顔を見れるのが楽しみだ。
そんなことを考えながら俺は魔物を探していた。
歩き続けて数分たった頃やっと魔物を見つけた。
ウルフだ。
俺は幸運だった。一番最初に戦う相手が何回も戦ったことのある敵の強化版だなんて。
少し難易度は上がるだろうが、勝手は分かるだろう。
俺は戦闘に取りかかることにした。
ダッ
俺はウルフに向かって走り出した。
「わぅ!?」
ウルフは少し驚いたような顔をして、こちらを見た。
こいつはこういうところがちょっとかわいいんだよな。
まぁ、倒すのは止めないけど。
俺は走り出す勢いのままナイフをウルフの足目掛けて降った。
ブゥン
ナイフが空気を切る音がなった。
外れたようだ。
やはり強化版なだけあって回避能力も高い。
奇襲の有利から一転。俺は不利な状況になった。
足を目掛けて振ったため、今の俺の姿勢は少し前屈みだ。この状態では普通の状態のウルフからしてみたら動くのが遅くて、上から攻撃できるという圧倒的有利な状況なのだ。
普通の人ならここで命を落とすだろう。
しかし俺はちがう。
俺は飛び降り自殺を使った。
上空へと転移する。
この感覚にももうなれたものだ。
さぁ、狙いを定めよう。
腕を動かしたり、体を動かすことによって落下地点の微調整ができる。
俺はウルフのいる場所の軌道上に微調整をした。
もうあとは待つだけみたいなものだ。
ひゅぅぅぅぅ
落ちていく。
ウルフを見てみるときょとんとした顔をしていた。
そりゃ圧倒的な有利な状況だった相手が突然消えたのだからな。誰でもびっくりする。
だが、その顔が可愛かったので、少し倒すのに罪悪感を覚えてしまう。
まぁ、倒すんですけどね?
そして、どんどんとウルフとの距離が近付いていき......。
グシャッ
ウルフは潰れ、魔石を残して消えた。
ーレベルが上がりましたー
よし。レベルアップだ。これのお陰で全回復かな?
計算はあっているはずだし、体に痛みもない。
回復薬が節約できたな。
俺はまた強くなるために狩りを続けるのであった。
俺は探索を続けた。
次に見つけたモンスターはゴブリンだ。
三体の群れだった。
ゴブリンと戦うには少し問題がある。
何故なら俺の攻撃は一体に特化しているからだ。
なので、総合力ならウルフと同じくらいだが、俺の場合、体力が三倍近く多いようなものだ。
すこし作戦を練らなければならないな。
俺は近くの物陰に隠れた。
さて、どうしたものか。
俺はゴブリンを見た。
三体いて、一体は弓使い。もう一体は剣士。最後の一体は盾使いだ。
奇襲で一体は倒せるとして、もう二体と戦わなければならない。
なので、最も楽な組み合わせを選ばなければいけない。
そろそろ下級の回復薬では二つ飲まなければ回復しなくなってきた。そのため、あまり連発が出来ない。
けちらないでもっと良いものを買っておけば良かったと今になって後悔している。
まぁ、あとから後悔してもしょうがないか。
それよりもどいつを倒すかだ。
すこし考えた結果、俺は弓使いを倒すことにした。
何故なら、盾使いを倒した場合、剣士と戦っている間に横から射たれるかもしれないからだ。逆に剣士を倒した場合、押さえられている間に横からバンバン射たれる可能性があり、さらに危険だ。
だから、俺は弓使いを倒すことにした。
俺は忍び足で弓使いの後ろへと歩いていった。
出来るだけ歩いて近付き、人間メテオを使う予定だ。
ソロソロ
俺は少しずつ近付いていく。
少しでも気付かれそうになったら即、人間メテオを使おう。
そして、ゴブリンまであと三メートルくらいになったとき、ゴブリンが振り返ろうとした。
俺は即刻人間メテオを使った。
上空に転移する。
今回はゴブリンが動いていないから簡単だ。
少し微調整をして、弓使いのゴブリンを潰した。
「「ぐぎゃぁ!?」」
盾使いのゴブリンと剣士のゴブリンがやっと気付いた。
俺もダメージをおっていたので、すぐに回復薬を飲みたかったが、痛みを我慢し、剣士のゴブリンを切りつけた。
倒してはいなかったが、少し動きが鈍る位にはダメージを与えられただろう。俺は一旦後ろ引いて、回復薬を飲んだ。全回復とはいかなかったが、大分回復できた。
俺は剣士のゴブリンの後ろに回り込む。
実は俺の速さはゴブリンに敵うほどの強さになっている。
まぁ、負傷していないと回り込むことは難しいけどね。
そして、剣士のゴブリンの背中を切りつける。
剣士のゴブリンは魔石を残し消えてなくなった。
さて、残るは盾使いのゴブリンだけだ。
「ぐぎゃぁ......。」
盾使いのゴブリンは複雑な表情をした。
悔しいのか、仲間が殺されて悲しいのか。
「はぁ。」
本当に胸がいたくなるから止めて欲しい。
俺は盾使いのゴブリンに近付いていき、首を跳ねた。
盾使いのゴブリンも魔石と装備していた武器を残し消えてなくなった。
ーレベルが上がりましたー
おお、ここでのレベルアップは嬉しい。回復薬の消費が押さえられた。
実はもう半分ほど使ってしまっていたのだ。
それと、武器が手に入ったのも良かった。
これまでは果物ナイフで戦っていたため、しっかりとした剣が手に入るのはありがたい。
さて、もう帰るか。
もうへとへとなんだ。
俺はメイラのサインリーアへと向かった。
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「ただいま。」
「ん、おかえり。」
メイラが出迎えてくれた。
「あっ、そうだ!!今日のご飯なに?」
「今日はなー。これだ!!」
そうして、俺は帰り道で買ってきたレタスを見せた。
「なにこれ?」
「最近話題のレタスとか言うものらしい。これを肉と一緒に焼くと絶品らしいぞ。」
「へぇー。こんな草が?」
「そうだ。」
メイラは少し疑うような眼差しでレタスを見た。
「俺だって美味しいかどうか分からないが、まぁ、やってみるしかないだろ。」
「そうだね。」
ちょっとだけ噛ってみたが、みずみずしくて言い食感だった。たぶん大丈夫だろう。
俺はキッチンへ行き、塩と醤油で調理をした。
ドンッ。
小さな丸いテーブルにそれを置く。
米はメイラが入れてくれていた。
「「いただきます!!」
まずは俺たちは肉をレタスに巻いて食べてみた。
シャキィィ
「んんっ!!」
「おおっ!!」
なんだこれは!!
肉がレタスのみずみずしさに溶けていくような感覚だ。
これはうまい。
メイラも同じような感覚のようで、感極まった顔をしている。
俺たちは話もせずに黙々とそれを食べた。
ご飯ともものすごくあい、とてもおいしかった。
「はぁー。おいしかったー。」
「そうか。よかった。」
「これからこんなに美味しいものを食べられるなんて幸せだなー。」
「ははっ。期待しないでくれよ?」
切実に毎日このクオリティーを求められても困る。
俺だって実家では体のことを考えて健康的なものしか食べていなくて、味気なった。
これからが楽しみだ。
俺は色々な意味を込めてそう思った。
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