第4話

俺はまたウルフの居る草原に来ていた。

また何体か狩る予定だ。

今回はもう少し慣れたので、五体ほど狩る予定だ。

俺は意気揚々とウルフを探しに行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ふんふふーん。」


俺は鼻歌交じりにギルドへと向かっていた。

俺はウルフを本当に五体倒すことが出来たのだ。

本当は最高五体といった感じにする予定だったのだが、以外とうまく行った。

多分称号のレベルが上がったのだろう。

称号というのは普通そう簡単に上がるものではない。

しかし、命懸けであればあるほど上がるのが早いらしい。

人間メテオは殆んど自爆みたいなものなので、それに関連する称号やスキルがとても上がりやすいみたいだ。

それのお陰で俺はレベルが2レベル上がった。

身体能力もしっかりと上がっている感覚があり、強くなったことを実感できる。

体感で感じるよりもさらにそれを感じられるものがあって、それは人間メテオだ。

飛び降り自殺では体力が丁度尽きる所から落ちているから、体力が上がるにつれてどんどん高度が上がっていくのだ。

高度に比例してダメージも上がる。

つまり、俺の攻撃力は体力に比例していると言えるのだ。

まぁ、魔法も俺は使いたいと思っている。

もとより俺は魔法使いを目指していたし、それに向かって努力もしてきた。

技術はなかなかにあるはずだ。

あとはそれにステータスがついていけばいいだけだ。

まぁ、それはまだまだ先だろうな。

取り敢えずウルフの素材を売るか。

俺はギルドへ向かって歩きだした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「リエルさん。また盗みですか......って!!なんでそんなに持ってるんですか!?」

「いや、狩ってきたんだが。」

「そこまで盗まれてしまったらギルドの信用問題もあります!!ちょっとこっちに来てください!!」

「は?」


俺はその受付嬢に連れられてギルドの奥へと連れていかれた。

はぁ、本当に盗みなんてしてないのに。


「ちょっとここで待っていてください。」


俺は少ししっかりとした扉の前で立ち止まらされた。

受付嬢はそこの中へと入っていき、何かを話していた。

うぅーん。何を話しているんだろう。

全く聞こえていないが、一つだけ分かることがある。

あの受付嬢は俺が少しでも悪くなるようなことを言っているに違いない。

しかも呼んだ癖にかなりまたされている。

普通パッと行ってパッと戻ってきて用事を済ませるものだろ?なのにあいつはまだまだ出てくる気配がない。

それから五分がたった。

もうそろそろ帰ろうかなと思い始めたその時、扉が開いた。


「リエルさん。入ってください。」

「はい。分かりました。」


受付嬢は勝ち誇ったような声で俺を呼んだ。

物凄くムカついたが、心を穏やかにして返答した。

少し棒読みになったが、そのくらいはいいだろう。


俺と受付嬢はその部屋に入っていった。

入ってすぐに緑色の髪をした細身の男がソファーに座っていた。


「君が盗難を繰り返しているっていうリエル君かい?」

「は?」


俺はいきなりこんなことを言われるとは思わなかったため、少し驚き、口が悪くなっていた。

俺は素早く訂正する。


「僕はそんなことしてないですよ!?」

「そうかい。まぁ、一旦座りなよ。」


俺はその男に座るよう指示されたため、従い、ソファーに座った。


「僕はギルドマスターのデルだ。よろしく。」

「!?」


その男改め、デルさんはそう言って手を差し出した。

って、ギルドマスター?

それって、ギルドの一番偉い人じゃないか。粗相があってはいけない。やはり、あの時素早く訂正しておいてよかった。


「よ、よろしくお願いします。」


俺は恐る恐るデルさんの手を掴み、握手をした。


「それで、ご用件はなんですか?」

「それがね、君について悪い噂があるんだよ。」

「何ですか?」

「君がウルフを他人から家の権力を使って奪っているという噂なんだ。」


何だって?

それってまさかあの受付嬢から始まったものなのじゃないか?

はぁ、だからあいつはどや顔だったのか。

しょうがない。話を聞こう。


「僕は盗みなんてしてません!!」


俺はデルさんにそう言った。


「まぁ!!この期に及んで白々しい......。」

「まぁまぁ。まだ決定した訳じゃ無いんだから。」

「そ、そうですが......。」

「任せてくれよ。いいね?」

「はい。」


受付嬢は渋々といった感じで引き下がった。


「さて、君にはウルフを他人から家の権力を使って奪っているというがある。これについて何か言うことはあるかな?」

「はい!! まず僕は盗みなんてしてません!! ウルフは僕が倒しました。それに、家からは追放されてしまい、手を貸しては貰えません。」

「ふんっ。ハズレスキル持ちがウルフを倒せるわけがない!!」


あぁ。イラット来た。

もう殴っちゃうか?うん。殴っちゃおう!!

俺は真顔でそんなことを考えていた。

そして、それを行動に移そうとしたその時、デルさんが口を開いた。


「ちょっと君。」


その時のデルさんはさっきの穏和な雰囲気ではなかった。


「っ!!」


そのデルさんの声は、口調こそ同じだが、雰囲気が正反対の重たい雰囲気だった。


「もっ、申し訳ございません!!」

「良いんだよ。これは僕とリエル君との会話だから割って入ってこないでね?」

「はい!」


ふぅ。びびった。

この雰囲気には流石にあの受付嬢でも怖かったらしく、すぐに口を閉じた。

しかし、目は俺を睨んだままだ。

決めた。この話が無事に終わったらこいつはちょっとしばこう。

俺はそう決意した。


「いやぁ。済まなかった。話を戻すが、君は本当に盗みなんてしてないんだね?」

「はい。断じてしていません。」

「ふぅん。一応信頼のあるカルルの頼みだったから聞いてみたが、誤解だったかもしれないな。僕には君が嘘をついているようには見えない。僕は人を見る目には自信があるんだ。」

「だ、だったら!!」

「いや、まだだ。君の実家のリン家は魔法の優れた家紋だ。魔法を使うには並々ならぬ頭のよさが必要だ。そのため、嘘を隠している可能性もあるだろう。だから一つ試したいことがある。」


そういってデルさんは何かのスクロールを取り出した。


「これは存在値を測るためのスクロールだ。存在値というのは、まぁ簡単に言えば戦闘力みたいなものだ。ウルフの存在値はおよそ120ほどだ。」


すこし間をあけてデルさんは言った。


「3日あげよう。3日後にこれを使い、ウルフよりも存在値が高ければ君は盗みなどはしていない。低ければ盗みをしていると言うことで逮捕ということにしよう。」

「は、はい。」


あまりよく分からなかったが、3日後までにウルフよりも強くなれということか。

はっきり言って無茶だ。

三日間というのは思ったよりも短い。

果たしてこの短期間でそんなことが出来るのか。

そして、一つ疑問がある。

それは、なぜ俺に猶予をくれたのかだ。

今やればもっと早く決めることが出来て、負担が減るのではないのか?と思った。

その事に聞こうと思った瞬間、受付嬢が話し始めた。


「発言をしてとよろしいでしょうか?」

「いいよ? なんだい?」

「なぜこいつに執行猶予を与えるのでしょうか。今計ってしまった方がよろしいのではないのでしょうか?」

「あぁ。それはね、貴重な人材を減らさないためだよ。もともとウルフよりも強いのなら別だが、弱かった場合、僅か三日間でかなり強くなれる存在と言うことになる。それはものすごい才能だ。そんな人材を失いたくないんだ。」


そうか。それなら納得だ。

俺を助けたことによって結果的にギルドに利益が来る可能性があるのだ。

この人、相当頭が良いな。

俺はデルさんを少し尊敬した。


「分かったかい?」

「はい!!」

「ではまた3日後にまた会おう。」

「分かりました。」


そして、俺はギルドから出た。


「ははっ。最後のあの受付嬢の悔しそうな顔は傑作だったな!!」


俺は少し性格の悪いことを良いながらも、強くなるために必要なことを考えるのであった。

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