第3話
俺は空を見上げた。もう夕方らしい。
あと一狩と行きたいところだが、夜の狩りは視界が悪くなり危険だ。
今日は止めておこう。
よし、じゃあ宿屋を探すか。
俺は実家に住んでいたため、追放されてしまったいま寝泊まりする場所がないのだ。
その為に俺はお金を10000円ほど残しておいた。
このくらいあれば普通の宿なら泊まれるだろう。
俺は宿屋を探しに歩きだした。
テクテク
おっ、宿屋だ。
ここなら泊まれそうだな。
看板にも一泊3000円と書いている。
俺はその宿屋に入った。
「ごめんくださーい。」
「いらっしゃいまって、なんだ。リエルか。」
「え?何で俺の事知って......。」
「実家を追放されたのに金なんて持ってるはずないだろ。しっしっ。」
俺は追い出された。
何て事だ。噂はこんなところまで広がっているなんて......。
サエルは余程俺の事が嫌いだったんだな......。
はぁ、こんな調子じゃどの宿屋にも泊まれそうにないな。
こうなったら......!!
俺はとぼとぼとした足取りでサインリーアへと向かった。
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「えぇ!? 宿屋に泊まれなかった!? とういうこと!?」
宿屋から追い出された話をすると
メイラはビックリしてそう聞いてきた。
「俺が追放されたからお金を持っていないと思われて問答無用で追い出されたよ......。」
「ひどい......。」
ここまでひどい勘違いをされることなんて普通ないと思うが、多分誰かが俺を困らせるために噂を誇張して広げてるんだろうな。
はっきり言って滅茶苦茶悔しい。
それに、そんな噂のせいで被害を受けてしまう俺が情けない。
絶対に幸せになってやる。お前らになんか邪魔されない。
だが、今日は......。
「メイラ......俺をお前の家に泊まらせてくれ!!」
「うぅーん。良いんだけどさぁ、うちってほとんどが店だから、寝るスペースがほとんどないんだよね?」
「わかった。俺は売り場で寝る!!だから泊まらせてくれ!!」
「いやいや......それはちょっと罪悪感があるというか......あぁもう!!しょうがない!!今日は一緒に寝よう!!」
うぅっ。優しい。
さっきまでひどい奴にあったからか尚更優しく感じる。
俺はメイラの厚意に甘えて、メイラと一緒に寝ることにした。
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スルスル
俺は布団のなかに入った。
メイラの部屋はこう思うのはしつれいなのだが、本当に狭かった。
入ってすぐに布団があり、すぐ横にキッチンなどかあった。
「こうやって一緒に寝るのは久しぶりだな。」
「うん。そうだね。何年ぶりだろう。10才くらいの時が最後だったから5年ぶりくらいかな?」
「そうだな。あの頃は俺たちも子供でちょっかいかけたりしてたよな。」
「そうだね。思えばあの頃が一番元気だった気がするよ。」
「そうだな。」
俺はたちそんな会話をしていたが、俺は意を決してメイラに話しかけた。
「泊まらせて貰っているのにこんなことを言うのはなんだが一つだけ言いたいことがあるんだ。」
「ん?なに?」
「大したことじゃないんだが......。」
そう。大したことじゃない。大したことじゃないんだ。
そう、気持ちを押さえ付けていたが、我慢の限界が来た。
「なんで俺たちは同じ布団で寝なきゃいけないんだ!?」
「まぁ、図々しい。布団が一つしかないんだからしょうがないでしょ!!」
「だから俺は布団から出て寝るって言っているのにそれを拒むのはお前だろ!!」
「だって風邪引いちゃうでしょ!?」
正論なのがイライラする。
メイラの言っていることは間違ってはいないため逆らえない。
だからせめてもの反抗で布団のギリギリのところまで逃げて、その上メイラの逆方向を向いて寝ている。
「だけどな!! 年頃の男女がこんなことしたら間違いが起こるかも知れないだろ!?」
「それはないよ。だってリエルなそんなことするはずが無いもん。」
そしてメイラはクスリと嗤った。
俺は信頼されていることに少し嬉しさを感じたが、それでも反論を続ける。
「それでもだ!!」
「もうしつこい!!そのままで寝なさい!!」
メイラはそれっきり黙ってしまった。
本当にメイラは頑固だな。昔からそうだ。
あのときだって......。
そんなふうに昔のことを思い出し感傷に浸っていると、メイラの穏やかな寝息が聞こえてきた。
「スースー。」
「はぁ、あんなに 大声を出していたのにもう寝たのか......。」
俺は呆れたようにそう言って布団からでた。
やはり、年頃の男女がこんなことしてはいけない。
俺はメイラに布団をしっかりとかけた。
そして。
ポンポン
俺はメイラの頭を撫でた。
「ありがとな、メイラ。俺にはもうお前しかいないんだ。このまま親友でいてくれよ?」
俺はそう言って、敷布団のはしっこに寝転がった。
ぶわっ
何かが舞うような音と共に背中に弱い痛みが走る。
何事かと思い振り返ろうとするが、からだが動かない。
何かに押さえられているようだ。
すると、耳元で声が聞こえてきた。
「もう、駄目じゃない。寝ている女の子を撫でるなんて。僕じゃなかったら通報されてたよ?」
「っ!!」
俺は声がでなくなってしまった。
まさか起きていたとは。
「もう。罰として布団から出られないように抱きついて寝るからね。」
「くっ!!」
俺はメイラに抱かれたまま寝ることに決定してしまったらしい。
リエルの眠れない夜が始まった。
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「はぁ。」
俺は深いため息をついた。
昨日はメイラのせいで全然寝れなかった。
「おはよう。メイラ。」
俺はまだ隣で俺を抱いているメイラを揺すった。
「んんぅっ。」
メイラは昔から朝が弱く、酷い時は丸一日寝ているときだってあるくらいだ。
お客さんが店に入ってくる音で起きて、バタバタとレジに向かうなんてことも良くあることのそうだ。
一応泊まらせて貰ってるわけだし、目覚ましがわりにくらいなってやろう。
「起きたか?」
「んんぅー。おきたぁー。」
そう言ってしばらく俺の事を見ていた。
すると、しばらくしてニヤニヤとした顔になった。
「ん?なんだ?」
「けだものー。」
「うっ、誤解だ!!というかお前の方がけだものだろ!!」
「へー、そうなんだー。女の子にけだものとか言っちゃうんだー。」
メイラは少し悲しそうな顔をした。
むぅ。ちょっと言い過ぎたかな?
「ごめん。それはちょっと言い過ぎたかもしれない。」
「いやー、良いんだよ。」
そう言ったがメイラの目が笑っていない。
どうしよう。怒らせてしまったか......。
「ホントにごめんって。なんでもするから許してくれ。」
「いいよっ!!」
そう言ってメイラはぱぁっと笑った。
くっ、そう言う魂胆だったのか......。
いつもだったら気付けたのに寝起きだったせいか、全然気付けなかった。
「やっ、やっぱりいまのなs」
「男に二言はないよね?」
「ううっ......。」
「ふふっ。」
メイラは勝ち誇ったかのように笑った。
くっそ、しょうがない。ここはメイラの言うことを聞くしかないか。
メイラは優しいし酷いことはしないだろう。
「うぅーん。じゃあ、今日からうちに泊まるってのはどう?」
「ん?それは頼みごとなのか?逆に俺が頼むことだと思うんだが......。」
「あぁ、もちろん
「それだけか?」
「あぁー。じゃあ、ご飯も作ってくれると嬉しいな。」
「わかった。」
俺は料理はまぁまぁ得意だ。
店を出せるレベルではないが、家庭で食べる分には十分美味しい。
しかし、やっぱりメイラは優しいな。
どっちにもメリットがある頼みごとをしてくるなんて。
だが、一つだけ頼まなければいけないことがあるな。
「「そのかわり後ろから抱きつかないでくれ(つくからね?)」」
「え?」
「え?」
ん?なんて言ったんだ?後ろから抱きつくからね?
............
「「ええぇぇぇぇ!!」」
「いやいやいや!!流石にもう駄目だぞ!!俺も全然寝られないし、流石に間違えが起こったら駄目だろ!?」
「良いじゃん!!リエルはそんなことしないよ!!」
「する!!」
「えぇっ!!」
なんか地味にセクハラ宣言した気がするが、まぁいい。
そこだけは譲れないところだ。まず、眠れない。
メイラは女性として見たことはないが......ほとんどないが、それでも魅力的であることは間違いがない。
だが、好きでもない相手に勘違いされるのはいくら優しいメイラでも嫌だろう。
なので抱きつかれたりしたら理性が吹っ飛びそうで怖いのだ。
「とにかく、それはだめだ!!」
「だっ、だって......リエルと一緒に寝ていたらいつもよりもしっかりと寝れたんだもん。最近よく眠れてなくて。でも、リエルといたらなんだか落ち着くというか......。」
「......。」
そんな風に思っていたのか。
メイラにとって俺は安心できる存在ということなのか?
「......わかった。百歩譲って一緒の布団に寝ることは許可しよう。だが、間違いが起こっても文句は言うなよ!!」
ちょっと嬉しかったから少しだけ譲歩しようと思った。
「ボソッ リエルが相手だったら間違いが起こっても良いんだけどね。」
「ん?なにか言ったか?」
「っ!! いや、なんでもないよ。本当は抱きつきたかったけど、それは百歩譲って止めてあげるよ!!」
「それはこっちの台詞だ!!」
楽しい。幸せだ。親友というのはやはり良いものだ。
だが、俺の幸せはこんなものじゃない。
もっと幸せになってやる!!
「よし、じゃあご飯でも作るよ。」
「あっ、それなら同居記念にどこかに食べに行かない!?」
「おっ、いいね!!」
俺たちは近くの洋食屋へと足を運ぶことにした。
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ー
「ふぅー。満腹満腹ー。」
「美味しかったな。特にあのパン!!もちっとした食感が堪らなかったなー。」
モチッ
「なっ、何をする!!」
「いやー。リエルのほっぺたもモチモチだなーって。」
「止めろよ!!」
口ではこう言っているが本当はちょっと嬉しいんだよなー。本当に俺は天の邪鬼だ。
「んじゃ、ここで俺は仕事に行くから。じゃあな。」
「うん。じゃあね。」
そうして、俺たちは別々の道を歩きだした。
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