第4話 アルバイトの日の出来事
僕は生活費を稼いだりするために、アルバイトもを何個も掛け持ちしているのだ。多忙すぎる生活ゆえか、土日に休むことができずに体がだるいままというのが良くある。まぁ、たまに休む日もあるからその日に解消するのだが。
そんな掛け持ちしまくっているあるバイト先での出来事。コンビニのアルバイトをしていた僕は、いつも通り接客をしていた。
「らっしゃいませ〜。」
最初のうちは本気でしていた挨拶。それも今となっては力の抜けた声になってしまっている。慣れというものがある限りこれは消えないだろう。
適当にレジを打つ。そして、暇になるとぼーっとする。コンビニのバイトなんてそんなものだろう。客が来なければ暇。客が来たら忙しい。来ないでほしいし来て欲しいという矛盾を抱えてしまう。それがコンビニバイトだ。
そうしてぼーっとしてると、また新たな客が入ってきた。
「らっしゃいませ〜。」
僕は客の方を見向き見せずに言う。そして、その客は奥の方に消え、飲み物のコーナーに向かっていった。来た人の年齢はどれくらいかのだろうか。中学生か、高校生などの学生か。もしくはおじさんやおばさんかもしれない。タバコとか注文しないで欲しいなと心の底から願う。タバコとか注文する人は頼むから番号で注文してくれ。わからないんだよ名前言われても。
そんな文句を心の中で言ってると、そいつがレジにやってきた。
「カフェオレが一点〜、バニラアイスが2点〜………うげ…」
僕はそいつの顔を見るや否やそんな声を漏らした。
「こんばんは!誠君!」
このコンビニに来たのは如月杏子だったのだ。修学旅行の班決めからしばらくだった今日。それまでの間、この如月杏子という女は僕と雫に付き纏ってきた。いわゆるかまちょというやつだろうか。だが、雫と恋仲になるという目的がある僕には、付き纏ってくるこいつは邪魔なのだ。いや、邪魔は言い過ぎかもしれないから鬱陶しいにしておこう。あまり変わってない。しかもこいつは僕の弁当のおかずを勝手に取ってったり、何をするにあたっても話しかけてきたり、騒がしいのだ。顔が可愛いせいで許してしまうのが癪だけど。
「……何しに来たの?」
するとキョトンとした顔をする杏子。
「何って、買い物以外無くないですか?」
「………確かに。」
何を言ってるんだ僕は。普通に買い物しかあり得ないだろう。ちょっと待て、僕のバイト先を知ったから遊びに来た可能性も捨てきれない。
「僕のバイト先を知って遊びに来たんだろ。わかってるぞ。」
するとわけのわからないと言った顔に変化する杏子。
「いや、意味わからないけど…まぁ、誠君のバイト先も知れたことだし、ちょくちょく遊びに来るね!」
「来なくて良いからっ!」
思わず叫んでしまう僕。バイト中に同級生に会うとか気まずすぎるだろ。いや、こいつの場合あんまり気まずくないけど、それでも嫌なもんは嫌なのだ。
「なんでぇ!?」
素っ頓狂な声を発する杏子。こいつは一回やられた相手の立場になって考えてみた方が良い。そうすることで今まで僕らにしてきた愚行がどれほどやばいのかわかるだろう。いや、こいつの場合はわからないかもしれない。
「だってなんか嫌じゃない?バイト中に知り合いと会うの。」
「私と誠君は単なる知り合いじゃありませんっ!!」
「そこかよ。」
突っ込んでしまった。突っかかるところそこなの?本当に良くわからない。
日頃からこいつと過ごしていてわかったが、こいつは天然というやつだ。学業に関しては頭脳明晰なくせして日常生活においては一つ……いや二つ…三つくらい頭のネジがぶっ飛んでる。
「お前、自分の立場になってみろよ。バイトしてる最中に僕が押しかけてくるんだぞ?嫌に決まってるだろ。」
「むしろいつでもウェルカムですよ!私は!」
そうだったこいつこういうやつだった。
「悪い。聞いた僕が馬鹿だった。お前に常識は通用しないんだったな。忘れてたよ。」
「私の評価どうなってるんですか!?」
叫ぶ杏子。いつも通りだ。こいつが抜けた発言をして僕たちがからかう。毎日見てるぞこの光景。
そして、僕は今がバイト中だということを思い出した。
「あとな、今僕はバイト中なんだ。学校の時みたいにお前もいつでも話せるわけじゃないんだ。てことで、帰れ帰れ。」
するとむすっとした表情になる杏子。これは拗ねてるやつだ。
「お客さん居ないんだから良いじゃないですか〜!」
「出禁にするぞ。」
「バイバイ誠君!また学校でね!」
最後にそう言い走り去っていった杏子。本当に騒がしいやつである。
「…………あ、商品忘れてるじゃん。」
本当に騒がしく、アホである。
僕を忘れた君との恋の小夜曲 フィリア @Gain0307
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