第3話 修学旅行の班決め!!
「それではみなさん新幹線とバスの席から決めるので、まずは好きな人とペアを組んでくださ〜い!」
昼休憩が終わり、午後の授業に差し掛かる。そんな午後の授業はロングホームルーム。修学旅行の班決めや席決めだ。
先生の掛け声で、クラスメイトが一斉にペアを組もうと席を立ち歩き出す。一瞬でペアを決めるものや、おどおどしていて中々提案を切り出せないものなど、さまざまな奴らがいた。そんな僕はと言うと
「やっぱこれで安泰だ。」
先生の声がかかるや否や、雫とペアを組んでいた。別に雫が好きすぎるから組んだとか、友達がいないから雫と組んだとかそんなんじゃないからね!?僕はただ友達の雫と一緒に組みたかっただけだからね!?
「誠君、私のこと好きすぎ〜。」
隣にいる雫がからかってくる。が、そんなの知ったこっちゃない。ペアを決めれずに一人残るとかクッソ気まずい。そんなことになるくらいならプライドなんて捨ててやる。
「新幹線とバスの席はこれで完璧だっ!」
「部屋班どうするの?」
瞬間、僕の中の何かが壊れる音がした。これが絶望というやつだろうか。男の友達などいない僕は、部屋班をどうやって決めれば良いのだろうか。普通にぼーっとしていれば余り物として空きのある班に入れられるのだろう。だが、見えているのだ。僕が入ることによって白けてしまう班の人たちの反応が。こんなことになるのなら無理やりにでも話せる人を作っておくべきだった。
「………クソが。」
吐き捨てるように、僕はその言葉を放つ。
「いや…そんな絶望的な顔しなくても…」
いやいや、絶望だろう。ここで絶望しなきゃ他にどんな場面で絶望をするのだろうか。テストで0点を取った時?失恋をした時?いいや違うね。僕はそんな経験ないからそんなことじゃ絶望しない。本当の絶望というのは、自分の存在によって周りが白けることだ。あの瞬間だけは背筋が凍る感覚がする。流石に盛ったかもしれない。
「行動班はなんとかなるかもしれないんだけどなぁ〜。」
行動班は男女同じなので、雫と同じ班になれるのだ。だが、部屋班。おそらくこのクラスは三班に分かれる。果たして僕はどの班になるのだろうか。
そうして僕がビクビクしていると、とうとう部屋の班を決める時間になった。ここから僕は地獄を見るのが、それとも意外とすんなりいくのか。
案の定、余りになりましたとさ。だが、さすがに高校生。白けるなんてことにはならなかった。安心である。
そして、次は行動班を決めることになった。だから僕は雫と組もうとして歩き出した。が、瞬間
「花園君ですよね?」
後ろから声をかけられる。聞いたことのない声だ。果たしてこのクラスにこのような声の持ち主はいただろうか。
「……そうだけど?」
僕は後ろを振り返り、声を発した人物を確認した。そして、その人物が誰かを思い出す。
「学級委員長?」
「そうです!」
僕に声をかけた人物。それは学級委員長こと如月杏子(きさらぎあんず)だった。話したことが今までで一度もないが故、僕は少しテンパる。
「えっと、僕に何の用?」
すると如月さんらニパッとした輝かしい笑顔を浮かべて言った。
「行動班、同じ班になりましょう!」
その提案に、思わずギョッとした表情を浮かべてしまう僕。なぜ僕なんかと…という疑問が頭から離れず、僕は聞いてしまった。
「なんで僕なんかと同じ班になりたいの?」
途端、得意気な顔になる如月さん。
「花園君……いや、誠君!」
いきなり名前呼びをしてきて距離を詰めてくる如月さん。結構ガッツリ来んのな。
「誠君はいつも一人でいるから仲良くしたかったんですよ!もちろん琴乃葉さんも!………あ、琴乃葉さ〜ん!同じ班になりませんか〜!」
僕に説明をしている最中に、勝手に雫の方にまで走り寄っていく如月さん。慌ただしいやつだ。だが、なんやかんやでああいった雰囲気のやつと一緒にいるのは楽しかったりする。だから僕は微笑を浮かべるのだった。
行動班は3人以上6人以下だったので、僕と雫と如月さんの3人に決まった。いやはや、こっちの班はすぐに決まって良かった。
「如月さんは他の人達と班を組まなくても良かったの?」
僕はこう考えたのだ。僕たちと班を組んでしまうと元々組みたかった人と組むことができなくなってしまうと。ゆえにこう聞いたのだが
「私は誠君と雫ちゃんと組めればそれで良いのです!」
本人はこれで良いようだ。もし他の人と組みたかったという気持ちがあったなら罪悪感が生まれるだろう。だからこそ今回は助かった。運も良かった。
「あと、同じ班になるんだから名前で呼んでくださいよ〜!」
名前呼び。人との関わりがない人間には難しすぎる難易度だ。雫の場合は慣れたが、新たに名前呼びをするとなると気恥ずかしい。それに僕なんかに名前呼びされても良いのだろうか。………いや、良いから許可されてるんだ。
僕は勝手にそう結論づけ、勇気を振り絞って名前を呼ぶのだった。
「じゃあえっと…杏子…さん?」
「さんいらないです!」
「あ、杏子…?」
「よく出来ました!」
笑顔で手をぱちぱちと叩きながら僕を褒め始める杏子。なんだか無性にこの笑顔に腹が立ってくる。馬鹿にしてるだろこいつ。
そんなことを思いながらも、修学旅行の班決めは無事終わり、僕は安心するのだった。
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